第5話 サンフォライズT・Jの第一歩


サフランの収穫時期も迫り、忙しくなってきた私は、他の3人を先に伺わせ、少し時間が遅れていた。


船長室のドアを開けると、文箱ボトルを広げ、サンフォライズT・Jに説明し始めている所だった。


「ああ、ソール。お疲れ様。今、文箱という物を見ている所だよ。

これはロマンがあるね。

このイチゴ画も素晴らしい。

加えて、具体的に解説まで添えてあるし、ボトルに密閉させてあったとすると、これはアートだね。

天助は、割ろうとしたそうじゃないか。」


「ええ、スイマセン。いや、しかし、ソールが、考えて、危機一髪のシフトチエンジで、食い止めましてね。」


「はっはっは。ソフィストの方々も、興味を示すであろうね。」


「あぁ、それなんですが…。」


「天助、話があるんだよね。」


「話?文箱の他に何かあるのか。」


「チューロも、皆4人で写真も撮りましたよ。」


「全て記録は残してあります。記事も完成していまして、新聞社に届け、この出来事を配信できたらと。」


「公表されては困るなぁ。」


「…やはり…ですか?」


「君達も、随分と興奮しているようじゃないか。発見した事で、今はまだ、ここにいる5人だけしか知らない事だよね。解読書もこれからだ。もちろん分析も必要だしね。ただし、この状態に価値を付ける者もおる。」


「でも、子供の絵ではないかって。」


「子供の絵だという証拠でもあるのか。」


「弟子は師匠ならずと、書いてあるんですよ。弟子が考えた研究で、まだ認められていないんじゃないかってね。ソール。」


「研究途中の、解説画としてソフィストに持って行っても、spoofだ!

なんて事にでもなったら、申し訳なくて。」


「弟子は師匠にならず。と書いてあるという事は大目に見てくれって事ではないのかね。そう記入してあるのであれば、それでいい。」


「…そうなんですか?」


「うん、それでいいよ。」


「残念だったな、天助。」


チューロは、肩を落とす天助を慰め、涙ぐんでいた。


「何故だ?天助、お前が発見者なのだから。きっちり説明してくれよ。」


サンフォライズT・Jは、イチゴ画を指し、天助の方を向いた。


「どういう事で?」


「ソフィスト方に、きちんと説明してもらいたい。私はまだ話を聞いただけだ。」


「ソフィストオークションに行くのですか?俺も。」


「そうだ。この会合に出席するのには、いくつかの条件がある。いいか、

まず、服装は、礼服であること。

そして、肩から覆う布を一枚。

色は好きな物でよろしい。

そして、トップハットも被ること。

まぁ、私の方で用意はしておく。

日付け、時間も場所も招待状が届くまで待つしかない。文箱の準備はあるのだから、こちらとしては、何時でも良い訳だ。

天助、取材したいだろうが、撮影は禁止されている。わかったね。」


「そんな…俺は…。」


「ソフィストオークションに行くのだから、考えて見てくれよ。」


「いいじゃないか、天助。楽しんでこいよ。お前も1日ソフィストだぞ。」


「チューロの燕尾ジャケット貸そうか。」


「チューロも、いつか連れてってもらいな。しかし、温度計は評価されたのだから、今は創作が忙しいだろう。」


「当日は、トレーダーにまず説明、その後、品物の受け渡し。ソフィスト方も出品するが、まぁかなり理解が難しい品もあるね。太ったHarpyが描かれたギリシャ原産のビールとか。羊毛で編まれた眼鏡、紀元前7千年頃に描かれたくさび形もんじの切手、ほら、ウォッチバレーに建てられた民家の移築もあったね。あとは、ほたて貝の貝殻に見立てた土鍋。これはスカラップ号にもあるだろう。貴人に供えられた美術品だが、ソフィストオークションで人気があった品は、その後生産される事も多いからね。」


「しかし、なんでも発見したら供え物にされるんじゃ、俺のスクープは、仕事にならないよ。まさか、ラフラムの奴らは、他の国からの使者であり、全て自分達の物にしようと奪いとっているのでは?」


「報道しているのだから、天助と一緒だよ。チームラフラムは奪い取っているわけでは無い。守っているのさ。天助もソフィストオークションに参加すれば、解るだろう。」


「守ってるったって…。俺には守れないっていうのか!?俺だって、このスカラップ号も発見し、チューロのヨーグルトだって記事にしている。ヘリコプターの操縦だって、ラフラムの奴らより、上手く飛べるんだぞ!」


「まぁ確かに天助は、幸運にも宝を発見する事は良くあるね。だから、今回は、天助の発見として、サンフォライズT・J

と参加するのだから、大丈夫さ。

ラフラムに奪われているんじゃ無いよ。」

ソールは。興奮している天助をなだめている。


「この世に一つ…と。発見と発明は、その時代の最初の一歩だ、

月へ向かおうと、ロケットまでも作り上げた人間なのだから、考えて行かなければ駄目だ。一つの宝物はどんな物であれ、持ち主の心だ。

他の国に存在しているこの国の歴史的な物があるのは、本来は不思議な事だよ。

紀元前の物であれ、残っているということは、その時代に考えられて作られたからだろう。

奪い取ろうと争い事が起これば、消えて無くなる。

今の時代には、残らないんだよ。

天助、海を渡り、文箱は未来を託す為に流された。発明であっても、奪われれば、残らない。

今の時代から一歩進み、ソフィストや学者達が考える事だ。

そうでなければ、埋め隠された秘宝になり、誰も、歴史でさえも全て謎に包まれてしまうであろう。

いいね。天助、ソフィストオークションに参加してくれるね。」


サンフォライズT・Jとソフィストオークションに出席する事になった天助だが、緊張しているのか、喜んでいるのか、自分でまとめた記事を読み直すと、文箱をボトルに戻し、底を付けた。


「まぁ、この話はこれでよし。

と、そこでなんだが、草原よりも、高い山の方が好きかね。

人は高い山を好む。

空の上で暮らしたいのであれば、パイロットになれればいいが、もしくは観覧車の一番上か。

宇宙船は酸素が無い宇宙の空間に向かう為として頑丈に作られておるが、このスカラップ号も、かなりのものだ。

住まいとしてだな…、ソール、バルキー、天助、チューロ、お前達にはそろそろ…。あー、私は、宇宙船を探す。宇宙船だ。この地球上に住む為の宇宙船だ。

浮く必要性は無い。

頑丈だぞ。窓も開く。陸地ならばさらに頑丈だ。スカラップ号は、お前達のおかげで、ここまでなった。

仕事も山積みだ。

そこで、もう一つ、協力してもらいたい。」


「宇宙船ですか、今度は。」


「いや、宇宙船は、私が探す。

お前達は、お前達で探すんだ。」


サンフォライズT・jからの突然の住まい探し。スカラップ号があるのにどういう事なのか。

今、必要であるべき事とは…。


「宇宙船を探すなんてなぁ、サンフォライズT・Jも、月を目指して、どうするつもりなのかねぇ。」


「地球上に住む為の宇宙船だよ、チューロ。」


「空に向かって行くもの。高くあるものがいいんだね。」


「天助はいつも、空を飛び回っているからな。じゃあ、山を高くして、そこに住めばいい。」


「山をどうやって、高くするんだよ。ソール。」


「頂上に大きな木を育てるのさ、天助のヘリコプターで。」


「バルキーには、ウォーターシードを打ちまくってもらうよ。」


「OK!ソール。」


「新しく探し当てたら、サンフォライズT・Jは、今度はどういった物を俺達に贈ってくるんだろうな、」


「チューロは、三輪バギー、バルキーはBOXスタジオ、私はサフラン畑、天助は、ヘリコプターと。」


「場所を探し当て、マーケットを作り、人を集めるのであれば、美しい場所である事だよ。」


「スカラップ号とは、いったい俺達の何なんだ?」


「スカラップ号は…家だよ。チューロ。」


「家か。」


「新しい場所にも、マーケットを作るとすると、スカラップ号と変わらないじゃない無いか。

但し、スタジオは無いし、ソールのサフランはどうなるんだい?

スカラップ号のマーケットや、ビストロでは欠かせない貴重な物なんだよ。」


「もし、サンフォライズT・Jが、宇宙船を探し当てて来たら、そこも俺達の家なのか?」


「お前達は、お前達でって言ってたよな。」


「象徴的な建造物と住まいは別。

で、もしかしたら、サンフォライズT・Jは、俺達に、自分の家を探させようとしているのでは無いだろうか。」


「チューロも、頑丈な家がいいよ。」


「じゃあ、俺達も、宇宙船を探そう。」


「皆、探し当てたら、サンフォライズT・Jへ報告を忘れずに。」


†∞


⌘ 赤マニア ⌘


僕の大好きな色は赤。


トマト、パプリカ、赤キャベツ、フェラーリ、ポスト、僕の靴下。


とくに一番好きなのは、真っ赤な甘いイチゴだよ。


イチゴは種が見えてるね。


種も一緒に食べれるよ。プチプチプチプチ不思議だな。


僕は明日はイチゴ狩り。


広ーいお山のてっぺんに海も見えるだんだん畑。


長靴はいて、籠持って、おべんと、水筒準備よし!


おねぇちゃんには負けないぞ、僕が頂上一番乗り。


果物大好きハンターは、ゴーストガンのびっくり弾。


びっくり、しゃっくりおどろいて、皆僕の籠の中。


イチゴをねらったありさんも、びっくり、しゃっくり、巣に退散。


冷たいおばけのおどかし攻撃。ちょっとこわくてごめんなさい。


僕のおなかはもういっぱい。ミルクもつけて大満足。


広ーいイチゴのだんだん畑。おいしかったよ、いちごさん。


こんどは、もっと大きくなって、いっぱい食べにくるからね。


イチゴさんもその時は、もっと大きくなっててね。


†∞



私達4人は、宇宙船探しをしつつ、それぞれの日々を送り、スカラップ号へ帰った。

天助のヘリコプターが、飛び立つ時には、チューロや、バルキー、私も乗り込み、山の木々を育てた。


天助のヘリコプターは、山や、街、そして湖へ。


一箇所にも留まらず、降水量の少ない山へと飛び立った、


サンフォライズT・Jは、いつも総てをヨミガエらせる。


神聖なモノは、世界の象徴としての基準になるのだ。





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サンフォライズT・Jの囊中 牧野 ヒデミ @makino-hidemi

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