第4話 バルキーとbetter half湖とアテンアの巨魁


方法、プラン、見せ方と、現物完成品、あるものだけ。


否定する理由がある場合は、初めから冒険はしない方が安全。


サンフォライズT・J。

可能性を重要視するならば、見守る事と、それなりの受け入れ体勢はある人である。


バルキーの湖畔でのスカッシュライヴは、湖の中心に建てられたクリヤーなBOXで行われる。音源が入力されたパネルを壁に設置し、二本のラケットで打ちまくる。

森に囲まれた静かな湖に、木漏れ日が入り、ライトUPされると、透き通る灯りは雨氷ウヒョウに見えた。


キーンとした涼し気な空気の流れる中、BOX内でバウンドさせた玉をバルキーが壁に打ち当てる。

数十種の音の重なりと共に、森にいた鳥達が何羽も飛び行き交い、続けてバルキーは、二本のラケットを巧みに使い、スピードを上げ、打ち続けた。

パネルから鳴り響く、音の連鎖反応で、BOXからは、幻想的な映像が映し出される。

スモークに現れた西瓜と南瓜。

山芋が和音で流れると鰻に変わる。

西瓜と南瓜は月になって、タ、タタタタタ!

連射、連射の高速リズムBOXは、バルキーの打つ、速球で、光環を輝かせた。

BOXは、光環で覆われると、全ての4つの壁が照魔鏡ショウマキョウになり、森の木々、空、そして観客を映し出したのだった。


雨氷の映し出される中、水に乗り蛟龍コウリュウも現れたか。


森に囲まれた湖畔は、所々に小さな船着場もあり、木々の奥には木製の手摺テスりも見える。

繁った草枠クサワクは鳥達の巣なのか、飛び立っていない鳥の数だけでもかなり多く、時折その茂みが揺れ動いて、毛むくじゃらな白綿シロワタが通り過ぎた。


森、後方の高く伸びた木々の山頂には、風を読むのか、布らしき物がはためいていた。


バルキーが打ち当てた音は、高音を響かせると、花が伸び、低音が鳴り響くと波紋が揺れた。二重、三重と音が重奏していけば、湖畔は、ぐるぐると、湖の周りを回転し始め、クリヤーな水は、クリームになった。


ラノリン一族が、天災から助けられたのは、その一族が大切に守っていた物を素直に続けていたからではないだろうか。

どこへもいかず、まずラノリン族である事を大事に思っていた事である。

他が阻害してくる場合は、その守っていた物を、利用したいからであろう。

天災で、知られざる宝が失われるのは、悲しい事だ。

神話として伝えられた沈没船を発見し、数百年後に価値だけを上げても、2度と戻る事は無い。

蛟龍が存在するのであれば、この地も守られる。

スカラップ号もそうであろう。

サンフォライズT・Jとソフィスト達は、私も含め、チューロやバルキー、天助の事だって、認めてくれている。

ただし、現存からの重奏和音で、私達は、いつもどこか遠く、深く、息を吹き込めて何度となく見えない呼吸を繰り返させるのだ。


今ここで、ラノリン族が生活していたら、もちろん大喜びだ。

そうである。

ラノリン族は絶滅したのでは無い。

ラノリン族は生きているのだ。


自由である事を前提にした場合、住んでいる場所、仕事に買い物、税金と、あっても無くても人生総てにおいて、自由である。

しかし、こんな事は、無謀で普通の一般人では、まず不可能。

バルキーのfree cityは、better half湖でのLIVEという形で、自由を得た。

夢が叶ったのであれば、その時、己の表現で勝ち得た事で、自由であるのだ。

地球上に存在し、地球上で暮らす人間の生活には、ルールがある。

この瞬間のバルキーは、スカラップ号で過ごしているバルキーとも少し違う。

自由を謳歌オウカし、かつ明日への希望にミナギっている。

もちろん、スカラップ号が、自由で無いと言う訳では無い。

照魔鏡に映る観客にしても、better half湖で楽しんだ時は自由であるが、毎日暮らしていく中で自由であると感じ、強く認識するのは、他人から否定されず、損が無い事、という事を示す。


だが、得であるから自由という事も無いようにも思える。

他人に評価を与える人間とは、その人の事を考え、その人の事が好きであり、その人の事の為になるような評価をしなければ、不自由にさせていることと、同等だ。


もし、総てが選択され、行われる前にその人生を抑え、勝手にその人の人生を決める者がいたのならば…。


この世に生を授かり、守られ生まれてきた子供に、これからのこの先、総ての人生を決めて歩ませると言う事だ。


人生の阻害。評価共に、計画的であれば、犯罪である。その計画を肯定し、誰も反対に推し進めなく、進むようにする事は、その一つに統一させようとしている事になる。それは、先に多く儲けたもののやり方である。


その人々は「アテンア」へ。

その人々の意識コントロールをし、他に判らせ無く進行を進め、その者の、収入、人生、総てを支配し、脳内独自ルールとして、地球以外の場で生きている事になる。

「アテンア」では地球上のルールから逃れられるのだ。

しかし、その「アテンア」を誰が支配し、誰が守るのか…。

共同の惑星を開拓すれば、結局は、開拓者の土地である。

また、金がもっと必要になるのだ。

この地球で暮らしている者にとっては、他の惑星に住もうなどとは考えない。

無理矢理、地球から惑星への資金を調達している事になるのだ。

現在の宇宙人とは、金持ち宇宙人である。

もし天災がおきて、この地球が半滅したら、「アテンア」へは行けないはずだ。

「アテンア」へ森の鳥を飛ばし、南瓜の種をまく。

やすらぎと静寂を求めるのであれば、better half湖も同様だ。


金と力のある者がしてみたい事は、略奪と洗脳だ。

では、いったい、誰が略奪と洗脳を繰り返しているというのだ。


暮らしの上でのルールを守らない

未知の惑星へ飛び行く「アテンア人」である。


どうやって「アテンア」を作り出したのか。

「アテンア」を創世させた手段は、地球生活者の利用だった。


「アテンア」を阻止するには、知恵と力が必要だ。「アテンア人」から身を守り、これ以上ムダな開発をさせない事である。


その「アテンア」に必要とされている物は何であろうか?

まずは資源として、太陽光発電の設置である。

エネルギーを作り出せなければ生きられないからだ。

地球上でエネルギーを集めた蓄電器を、高速ジェットロケット機で「アテンア」へ運び出す。

残された地球環境を脅かし、「アテンア」の為に開発するのだ。

美しい地球の海岸沿いに巨大なパネルを張り巡らせ、港町の屋根を剥がし落とす。「アテンア」のパネル利用は他にもある。身体に装備させたパネルスーツである。日を浴びている間さえも、エネルギーの吸収を行える為、蓄電機を腰に付け全身メタリックシルバーで覆われている。

地球人にエネルギーを作らせ「アテンア人」とすり替える事で、「アテンア人」の衣服は守られるのだ。

大量に生産されたプラスチックを溶かし、再利用出来れば、もちろん無駄なく過ごせるが、靴を作っても履き古された靴は結局ゴミとして燃やされる。

再生産されても、「アテンア人」がその靴を履くことは無いのだ。

何故なら、「アテンア人」はプラスチックを好まない。

蛇やワニ皮を円筒形に尖らせたスパイクシューズ、牛皮をナメした金具付きブーツ等、鉄製のガード付きである。

「アテンア人」は全てのゴミを地球人に与え、利用するのだ。


「アテンア人」の一つとして巨大な生産場があるが、100年分の貯蔵庫として稼働している。それを地球人へ売る為である。

紫雲シウンと、錆びついた煙と、埋め立てられた海の上でサーバントと呼ばれるワーカーを動かす。

そのサーバントは、ゴミで生産された靴とソーラーパネルを身に纏い、「アテンア人」の仕事着といえばプロテクター付きブラックスーツであった。

ヒジから手首までヒザからクルブシまでプロテクターを装備。腰から足元まで黒布を巻き、地球からの攻撃を防ぐ為にと高濃度酸素マスクとアテンア照合機能のある大型ゴーグルを付けているのだ。腕に巻き付いたプロテクターはプログラミング可能であり、1日のデータは全て記憶された。


ある日、空腹だった一人の青年がオレンジをもぎり食べていた。

「生意気な奴だ!実った果実を盗み取るたわけ者め!」

と「アテンア人」は怒り、果実を取り上げた。

許されている果実は、全て貯蔵され、氷にされた液体であった。

「アテンア人」はマッシュし、加工された食事しか与えないのである。

インクレースチップと呼ばれる光る粒と、スティッキーパウダーという粘着性のあるチューブ、コロイド液等を混入。大量の食料を生産する。

そこに入る果実は1%だ。

ベルトコンベアーの上部には、目玉の付いた「フグ」と呼ばれる絞り出し器が下がり、巨大ショベルカーからベートマインドと言われるゴミを投入。

轟音ゴウオンが鳴り響き、カプセル型マッシュマシーンが動き始める。

マッシュマシーン横には光る電光ボタンが並べられ、2つ、3つと同時に幾つか組み合わせて押すと「ブレッド」「スープ」「ジュース」「パスタ」「ソース」等、あらゆる食料が生産されるのだ。

本来はオレンジのみでも許されない。

地球に残された食材あらゆるものをミックスし、水で薄めるのである。

引き延ばすその水も、貝殻で濾された溜め水である。

その後、捕まった青年は変わり果てた姿に変貌ヘンボウした。

身体は大きく膨れ、髪は抜け落ち、骨が曲がり、手足は太いが、皮膚はブヨブヨだ。

ワーカーであるサーバント達は皆そうなった。

身体の中には栄養も行き届かず、結核患者も増大した。ほとんどの者が感染に気付かず働いているという。

栄養も真面マトモに取れず、治療を受けてもすぐに伝染するのだ。


年に数回「アテンア人」は「アテンア」へ訪れる為に小さなプロペラが翼に6箇所付いた、スペリア機と呼ばれるロケット飛行機を飛ばした。

地球からの脱出であった。


それでは「アテンア」人の食事とはどういった物であるのか…。

地球上に存在する本来の食事である。

本来の食事とは、オレンジはオレンジのまま、魚は魚であるが骨は捨てる。

普通の食事の事だ。

オレンジの皮は残すが皮は食べない。

全てを引き延ばし、ダストベースと混ぜ合わせた物が「アテンア人」の生産するプロフィートフードである。


「アテンア人」は己の食さないゴミを生産しているのだ。


悪知恵と、生き延びる事は別である。

あらゆる食料を牛耳ギュウジり地球の金の価値を下げたのだ。

その結果プロフィートフードの大量生産で、大金が流れ込んだ。

儲かった「アテンア人」は新たな惑星を創世する計画を企てており、プロフィートフードの売上金の大部分を開発に注ぎ込む。

サーバントにはプロフィートフードを食べさせる為、雀の涙ほどの賃金である。

その威力に騙された者はリベートを貰い協力者になるのだ。


「人々が変わっていく…。人々が全て変わってしまう…。

このままでは人間が消えてしまう。

僕はロボットになんかなりたくないんだ!!」


ある日、図書館の資料室で手帳に記された計画書を見つけた少年はこの計画に驚くと大急ぎで、街を駆け抜けて行った。

新たな惑星を企てる「アテンア人」の行動を阻止する為に、人々を守ろうと動いたのがある少年達だった。


「アテンア」の巨魁キョカイとは、つり上がった目尻と大きな鼻で薄く広がった唇を持ち、黒褐色の大きな布を巻いている。

照魔境に映し出された書物が図書館の資料室に残されていたのだ。

少年達は集められたゴミがプロフィートフードになっていたのを知ると、変わり果てた姿に変貌した両親を助ける為に「アテンア」の城へ向かったのだった。


「アテンア」の巨魁はリバースチャプターと呼ばれるフォートに住んでいた。

巨大な要塞はドミノを並べる様に区画整備されており、どの建物に巨魁がいるのか探し出すのは困難だ。

地下通路も要塞の下を通り、巨魁は常に移動し、どこのチャプターにいるのかは隠されているという。

不審者には蛍光塗料が吹き付けられ、ゴーグルを付けていなければ、見分ける事は出来ない。さらには、プロテクターで名前、住所など身分を分析すればどこに所属しているのか等全て判ることができるのだ。


そのリバースチャプターはジメジメとした谷地ヤチの奥で、湿地をお堀に見立てたその先の広大な都市、ほぼ大半を占領していた。

少年達の中には、柔らかな金髪で青い瞳を持つ16歳のプリンと栗色のくしゅくしゅ髪で、グリーンアイズの13歳、シブルという兄弟がいた。

幼い頃から仲が良く、本が大好きな2人だ。


「リバースチャプターに行ってみよう!」


兄のプリンは、夕暮れのR A-0905号線の交差点で弟のシブルに呟いた。


「なんだって?!リバースチャプターなんかに行ったら、すぐに捕まって働かされるんだ。戻れないぞ。」


「シブル、リバースチャプターに入るのは簡単だよ。通行止めも無いし、許可証なんて必要無い。買い物をして帰ってくる、街へ行くのと同じさ。」


「買い物って、プロフィートフードかい?だったら、ここでも買えるだろう。」


「いや…。探すんだ。リバースチャプターを支配する巨魁を。それに、リバースチャプターには、高速ロケットもあって、ミルクやステーキだって、開発された新惑星へ飛ばしているんだよ。」


「新惑星って?」


「確か、アテンアと書いてあったよ。」


プリンは、落ちていたエンシレージを拾うと、空き缶を蹴り上げ、放り投げた。


「アテンア星で、自由に暮らす為に、俺達の親も働かされているのかい?」


「ラルゴやヘンルーダの親もそうさ。

羽音ハオン図書館に置かれていた都市開発計画書を見たのさ、2百年前から考案されていたという、手帳のコピーも載っていたぞ。」


「どんな計画なの?」


「今から開発するのは第2の新惑星アテンアだ。ただ2百年前に考えられていた計画とはだいぶ違うんだよ。」


「違うって、どういう事さ。プリン。」


「リバースチャプターは、昔、草原だった。そこにはチャプターなんか無いんだ。手帳に描かれた図案には、緑豊かな楽園であって、人々は街を行き交い、とても生き生きと生活している。

俺達のいる街だって、そうなんだよ。広い公園を作り、その周りを囲むように生活しているんだよ。」


「こんな狭っ苦しい街じゃないんだね。」


「そうさ。」


「じゃぁ、なんだってリバースチャプターなんかに?」


「そうなんだよ。俺は昔の手帳が写されたページを全て見たんだ、そしたら、設計図があったんだよ。

巨大なマシンで、様々な物が投入されている。

その箱は、スーパーフードが製造できると書かれているんだ。」


「プロフィートフードかい?」


「ただ…、危険性もあるんだよ。」


「どういう事なの?」


「爆発するかも。いくつかのビーカーに記号があったんだけれど、巨魁が現れて、すり替えているんだ。」


「巨魁?」


「第一案の計画であったスーパーフードから、危険性を示した第2案。

本来は第一案で進むべき計画を、2案目にすり替えているのさ。

世界征服を企む魔物の巨魁が現れれば、第2案になると…。

プロフィートフードになったって事は、すでに巨魁に操られているという事だ。

その巨魁が投入した液体で、食材は2倍にも3倍にも膨らみ、無限にプロフィートフードは製造できる。

だから、このままマシンで製造するのは、危険があるって事さ。」


「じゃあ、アテンア星の開発は、脱出なのかい?」


「そういう事だね。スーパーフードまでは良かったのさ。魔物である巨魁の製造に変わり、リバースチャプターは大きくなった。しかし、巨魁は爆発を恐れ、未来の新都心アテンアへ移り住む計画を作ったんだよ。」


「巨魁って…。」


「いいか、シブル。

ラルゴやヘンルーダと一緒に皆でリバースチャプターへ行こう。

そして、計画書であった昔の本来の資料をリバースチャプターで働くサーバント達に届けるんだ。」


「でも、プリン、俺達の言う事を信用してくれるかなぁ。」


「うん…。本物の手帳が見つかればいいんだが。

とにかくすぐにでも、アテンア星への脱出を阻止しなければ、未来は変えられない。爆発はまぬがれないよ。」


2百年も昔に夢を描いた楽園は、巨魁に操られ、リバースチャプターとなった。


魔物がなぜ現れたのか、誰も知る由もない。

プロフィートフードの製造から、第一案に戻す為、勇敢なプリン達、4人の子供達は、巨大都市であるリバースチャプターへ向かったのだった。


リバースチャプターに侵入した4人は、膨大な数で建ち並ぶ不気味な銀盤のドミノビルに隔たされ、道に迷っていた。

強い光が差し込み、壁に設置された太陽光発電のパネルが光に反射して、前がよく見えない。

パネルスーツを身にマトった人間が通り過ぎたが、僕らに気づいてもささっと、ビルの中に消えて行った。


ビル入り口ではパスワードを入力し、

手の平をタッチパネルにカザす。

ドアは閉まったままだが、ドアが波打ち歪み始めるとその中へ入り、消えて行ったのだ。


「おい、プリン、俺達もドアの前へ行こう。」


ヘンルーダは、ビルの中に消えて行った人間の姿を見ると、驚きながらもそこへ走って行った。


「ヘンルーダ!危ないよ!」


プリンは、無鉄砲なヘンルーダを心配し叫んだ。ヘンルーダは怖いもの知らずの元気者で、いつも先頭を走って行く。


「大丈夫さ、早く皆も来いよ!」


プリンは、計画書の入ったサイドバッグを抱え込むと、ヘンルーダの所へ走って行った。


「パスワードはどうするんだい?」


「この次に現れた時に、後に付いて侵入するんだよ。早く!シブルもラルゴも!」


ビルの壁に4人は横に並ぶと、ビルを見上げ、光を吸収したパネルを眺めた。


「エネルギーの生産も、アテンアの為さ。

俺達の暮らしなんてどうだっていいのさ…、二の次なんだよ。」


「こんなモノっ!」


ラルゴは、パネルの下側に付いていた、赤い光を叩き打った。

すると、そのビルに設置された片側の壁全体のパネルが点滅し始め、ビルが波打ち始めた。


「ラルゴ、ドアが開くよ。」


プリンは、波打ち始めた壁に手を入れたが、突然、上方から細長いガラス管が下がり、パキッと先が折れ落ちた。

その管からは液体が一滴溢コボれた

が、サーっと気化すると消えた。


「なんだ?これは…。」


ギュゥゥゥゥゥゥゥ

「ピューレット作動中。現場に直行して下さい。」


「警報が流れたぞ!プリン、俺達捕まっちゃうよ。」


「ダメだよ、シブル、ドアが波打つが、中には入れないよ。」


プリンは、抜け道を探そうと、辺りの壁を叩いた。


すると、向かい側ビルの壁が手前に開き、ダイナモカーが走って来た。


「あの車に乗ろう。いくぞ!」


プリン達は、オートダイナモカーに乗り込むと、アクセルを踏みリバースチャプター内へ走って行った。

メタリックスーツを着用しているサーバント達は、プリン達の暴走を眺めているが、誰一人とも止めようとはしなかった。


「この人達、おかしいよ。ひたすらビルの中を行ったり来たり、プリン、どうするのさ。」


「皆、解ってないんだよ。離魂病さ。魂が操られている。

いいか、シブル。この計画書のコピーをバラマクくんだ。

リバースチャプターの人々に知らせるんだよ!」


シブル、ヘンルーダ、ラルゴは、リバースチャプターの人々に計画書を撒き、プロフィートフードの製造を止めるよう訴えた。


オートダイナモカーは、プリンの運転で、第一千万地区に走って来た。恐ろしく巨大なリバースチャプターは走り抜けて行っても景色も変わらず、延々と続く無限の回転ロードだ。

しかし、その後、自動操縦に変わり、リバースチャプターの二百番地区まで戻された。

そして、ダイナモカーは、リフトに乗ると、上昇し303階のハックフロアで止まった。


「プリン、俺達、巨魁に見つかったらあの人達みたいにされちまうよ。魂が操られるなんてごめんだよ!ダイナモカーは俺達をどこへ連れてきたのさ。

このフロアはいったいどうなってるんだ!!」


オートダイナモカーは、プリン達が降りると


【カニューレベジタブル】


とマークされた野菜触媒遺伝子組み替え機の横に移動し、充電を始めた。

グゥウィィィィィィィィィ

「ラルゴっ!みんなっ!あれを見ろよ!」

ガラスの中では、何も無かった管の下から、あっという間に、人参やキャベツ、大根等が出来上がった。

そして、オートダイナモカーは、アームを伸ばすといくつかの野菜に、


【sick veg】


と焼き印を押し、ショベルカーに投入した。そして、その野菜はあっという間に切り刻まれた、


「病気の野菜を捨ててるよ。

なんで病気だとわかるんだ?」


「生産しているのだから、わかるんだろ。でも、他の野菜だって病気みたいじゃないか…。」


「これが畑かい?」


「いや…これが畑なんて…。

この場は昔、草原で楽園ができるはずだったんだよ。

スーパーフードから第2案に変わり、新惑星を創生する為に新たな食材を生んでいるんだ。

そして遺伝子を組み換えて大量の食料をこのハックフロアで生産しているのではないか…。」


「でも、プリン…。本物の野菜を見たの、僕、初めてだよ。」


「シブル、プロフィートフードはいわば、ミックスフードさ、本物の野菜は…、ほら!アームで小型ボード車に並べているぞ。アテンア…。

ちくしょう、やっぱり奴らはアテンアへ本物の食料を流しているんだ。

このまま、マッシュマシーンを稼働し続ければ、爆発する。

動きを止めるんだよ!」


プリン達は、電光ボタンを見つけると、皆で何度も叩いた。

すると、マッシュマシーンは、速度を上げ、超高速で動き出す。


「このぉ、停止ボタンはどれなんだ!」


マシーンはガタガタと揺れ動き、湯気が立ち上がるが、これで止まる事は無かった。


ヘンルーダは、窓から、リバースチャプターを、眺めると、


「プリン、一つだけじゃないよ。リバースチャプター全て、このドミノビル一棟、一棟全てに、マッシュマシーンはあるんだ。

だから、ダイナモカーの発電を止めれば、動かなくなるだろう。いいかい、エンジンを切るよ!」


「コンセントもだ!!引っこ抜け!」


「ぎゃぁぁぁ…。」


「ヘンルーダっ!!」


エンジンを止めようと近づいたヘンルーダは、ダイナモカーのアームに捕まり、身動きが取れない。…まさか。


「このままヘンルーダをショベルカーへ運ばれたら大変だぞ。このぉ…ダイナモカーめっ、やめろぉぉぉ!。」


シブルは、組み換え機のコードを引き抜き、ダイナモカーのアームへ飛びついた。アームをへし折ると、プリンとラルゴは、ダイナモカーのハンドルを動かし

、アクセルを強く踏み込むとガラス窓へ直進させた。

サイレンが鳴り響き、ガラスは粉々に割れた。

ダイナモカーは、地上へ転落し、マッシュマシーンの動きも止まった。


この騒動で、駆けつけたアテンア人に、4人は連行されたが、ヘンルーダをアームで掴んだダイナモカーの誤作動と、第一案が示された本物の手帳の存在を知ると、リバースチャプターの未来の為にと、4人は解放されたのだった。


その後、一千番地区にある517号機が爆発した。


悲しんだアテンア人は、全てのフロアで働くサーバント達を他の街へ移動させると、ダイナマイトを設置し、ドミノビルを全て倒したのであった。


巨魁は消えた、


そして、プリンとシブル、ヘンルーダとラルゴは、新緑の草原の地に立ち、明日を誓った。

リバースチャプターの地は、群童に託されたのだ。


草原の大地は、鳥も飛び交い、種も運んだ。緑豊かな楽園には、大きな湖もできたという。


象徴を建造する事で、攻撃は逃れられる。憧れの象徴が大きくなければ、総ての粒一つを、簡単に操作されてしまう。


私達はこの地球で、楽しく暮らしたいのである。


自由の女神と神社仏閣。


サンフォライズT・Jが用意した、better half湖でのバルキーのLIVEは、大盛り上がりで、私もチューロも楽しんだ。


今回、天助は、ヘリコプターからの取材をする事になり、空からの特等席に意気揚々だ。

海からの謎の漂流物だった文箱ボトルが、その後どうなったのかというと、サンフォライズT・Jが、もう一つ、新たな新境地を求めており、私達4人を呼び出して来た時の事である。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る