第2話 蛟龍と山
現在のfree cityは都市であるのだろうか。
都と呼べば華やかで、人も多く賑やかで在るべき場所だ。
常にそうである事だ。
深い
一つ、大昔、蛟龍は
荒れ狂う大嵐で闇雲がうねり、木枝は凶器に変貌した。次々と埴も砕かれ村は崩壊寸前であった。土手も崩れ始めラノリン族が家を失いかけた時、天から山を動かし、洪水を止めたのだ。
ラノリン族の人々は、
妖艶に美しい
蛟龍が山を動かしたおかげで、雨風も
ラノリン王国の誕生だ。
水中に
都には王が住む。
その城下町へと行くのであれば、そこが本当の都だ。
賑やかである事だけが都ではないが、一つの境界が出来た所で、ある時の闘争が起こる事もある。
人々が作り上げる事に数の決まりは無いのだが、その自由とは何処にあるのだろうか。
茴香の香りは料理の味付けに喜ばれ、とても人気がある。
人気があるのであれば皆が求める。
人気がある物であるのに一つの境界内のみでと、その一握りで進める事は危険である。
世界中に有名になり、そして誰もが欲しがるであろう。
宝が集中すればそこへ狙い撃ちと、ウルフ・ソードが全てをさらって行くのだ。
新道と旧道の4車線。
封鎖されたトンネルには、家も車も人もいない。
そこにある空間は、幻ではないのだ。
一部が好んでいる路線をひたすら走るのは、時に渋滞も引き起こす。
簡単に新道を作るのは、都への近道。
お座敷列車のローカル線でパーティを開けば、それこそまるで自宅だ。
但し、今の俺達には、通りだろうが山の中だろうが、サンフォライズT・Jの為にも、この目標を達成しなければならない。
新しい土地、まだ未開の地であれば、争いは無い。
時を長く、時間を持つ。
無駄に思わず長く考える事だ。
そうすれば、きっと幸せを手に入れられる。
封鎖されたトンネルに俺達は的を当てた。
静かなトンネル内には大型プロジェクターを設置し、夜空に広がる星空から一転、ライト玉を1面に広げた。
レバーを上に引き上げると、グリーンコートが現れる。
水滴と
水音が鳴り響けばソナーが音を立て、
「あれは?バルキー。チューロがトンネル横の鉄ハシゴに登ってるけど、標識でも持ってくるのかね。」
「抜け道があると話していましたが。」
「どこに?」
「峠から山を見たら、旧道と新道に挟まれてるから、あの山は元々はトンネルなど掘らなくてもいいはずだったと。」
確かに、新道とトンネルへ続く旧道は、二車線とも、本線と繋がれた新車道である。山の上には別に、さらに旧道とも思える道があるのだ。
同じものばかりを繰り返し作って行くと、この先には何も残らない。
俺達のマーケットには、似たような物を作る者などはいない。
この様な残されたトンネルが、世の中には溢れているのだろうか。
「鉄ハシゴを一周すれば、私のマラガを収めて、窓でも付ければゴロッと、こらせっと。」
「住めば都じゃない、チューロ。」
「歌おうか?」
「尊重しているのですね、この場を。」
「ソールが連れて来たのですよ。
トンネル掘ってしまって、いらないんじゃ、チューロもらっておくよ。」
「渓谷の滝と、山桜が都心にあるのって、束縛と占領の現れでしょう。
ナチュラル大好き!って。
なのに、自然破壊だって責められると恐くなり、自己嫌悪に陥り、不自然を作ると・・・。
都市開発ばかりを進めるのはどうなんだろうね。マーケットは中味だからね。
一日限りと言ったって山の中までも来場者は沢山来たじゃない。
こんなオンボロトンネルだってさ。
俺達の路線も気に入られたよ。」
そう言うとソールは、マーケットで売られていた、シープミルクを皆に配った。
「いやぁ、ソール、心の底から、全てを動かそうと支配する者も。
幸運にも俺達が見つけたが、お決まりの法則に挟まれたら・・・。」
「持って行かれたら無くなりますからね、この場からは。」
「
「バルキーも、チームラフラムに、見つからないようにね。」
「こっちのものが欲しいんじゃ、ラフラムの城と取り替えてくれればいいだろ。」
「まさしく。まぁ、サンフォライズT・Jは取り替えませんけどね。」
「いい城に住んでいながら、なぜラフラムは力を奪うのだ?」
「情報の立体化。原っぱから芽を出す草花の予想は、髪の毛の本数を数える位大変だろ。ラフラムの奴ら、見つけては、本当の良いものを隠そうとしているのかも。」
「ソールは、トンネル見つけて、マーケット続けるのですか?」
「住むよ。とりあえず。」
「大きいですけどね。トンネル。
ラフラムに見つかるんじゃ・・・。」
「チューロは、マラガフローズンで、少し熱冷まして。
マーケットで好評でしたよ、チューロの温度計。」
「ええ、鏡も合わせた形のモノも、喜ばれました。」
早起きのチューロは、ヨーグルト配達の為、3輪バギーでの移動も多く、気温を測る為にと、自作の温度計を作り部屋に置いていた。
チューロの温度計は50センチ程の大型の温度計で船内の白色と美味しいヨーグルトにも合うからとサーモングリーンに色を付け、金箔で縁取りをして真鍮の金具が付けられたものだった。
サンフォライズT・Jも気に入って、もう一つ創った温度計は、年に一度の、ソフィストオークションで高値を付け、チューロは、配達の後、創作する事に。
「チューロに、もう少し広い工房があればね。」
「と、探したのが、このトンネル。」
「もらっていいんだね。チューロ。」
「バルキーも、天助さんも、私も住むから…。
まぁ、このトンネルに住むまでには、サフラン一g集める位、大変な時間がかかるけれどね。」
チューロもバルキーも、マーケットの終了後、トンネルのある山を眺めた。
静まり返ったトンネルには、夜空を映し出していくつもの輝く星空が広がっていた。
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