僕は右腕

なかの

第1話 僕は右腕

僕は右腕。


参謀的な意味の右腕ではなくて、ほんとに右腕だ。


誰の右腕かって?

それは彼女、アイリスだ。

彼女はいわゆる美少女。活発に動き回る運動美少女だ。


「ちょっと、なにぼんやりしてんのよ!!」

アイリスは僕に言った。

彼女は走りながらそう言った。

右腕の僕に話しかけながら、走り続けている。


「ちゃんと働いてもらわないと困るんだからね!」

そう、僕達は仕事中。

とある機関に潜入している。

僕達の仕事は、依頼されたものを取る仕事。


つまり泥棒だ。


泥棒にもいろいろあるだろう。

自分たちの生活費のために人の財布をとっちゃうとか、人のお家に忍び込んでしまうとか。


我々はちょっと違う。


国に対するテロ行為を働くものから、危険なものをとっちゃう泥棒だ。


政府に頼まれた特定のテロ組織から、危険なものを盗む。

そのために特殊な加工を施されている。

つまり我々は政府直属の特殊戦闘員。


「ほら、追手が来たわよ!」

アイリスが僕をコンコンと左腕で叩いて伝える。


しっかりと、その刺激は僕に伝わる。

僕は痛覚をコントロールできる。

今はノーマルモードだ。


痛みも刺激も熱もすべて通常レベルで感知できる。


「うん」

僕は答える。


僕は右腕。

彼女の代わりに戦う。

そう、それが僕の仕事だ。


彼女の意思とは独立して、彼女の右腕を動かす。

それが僕の役割。

そう、右腕だ。


追手が近づいてきている。

そして銃を撃ってくる。


「待て!!」

と言いながらその追手は銃を撃つ。

バン、バン、バン。

しっかり三回撃ってきた。


「来たわよ!!」

アイリスが言う。

「うん」僕は言う。


その弾をはい、はい、はい。


と、弾く。


「おおー、やるじゃない!」とアイリスが微笑む。

「お褒めに預かり光栄です」

と僕は、必要以上に丁寧な口調で御礼の言葉を申し上げた。


そう、こんなことは普通の右腕には出来ない。

いろいろな意味で出来ない。

まず、普通は、銃の弾が発射されてから避けることは不可能。なので銃口を避けるというのが基本戦法になるはずだ。


人対人であれば、だが。


そして、普通の腕は、銃の弾を受けてはいけない。

血が流れて、下手をすれば一生動かなくなる。

場合によっては死に至るからだ。


僕のシステムには、弾道予測が付いているのと、人とは桁違いの速度で動けること。高速クロックで動けることが特徴になっている。それから、特定部位だけ硬化することが可能だ。


以上の能力を持って、追手の弾を腕で弾いたのだ。

QED。証明終了。説明完了だ。


「ちょっと!!なにブツブツ言ってるの??」

とアイリスが僕に言う。


さらなる追手がやってくる。

そしてアイリスが言った。


「ダイスケ!働いてもらうわよ!」


そう、僕は、高園大輔。

アイリスの右腕だ。


そう僕は、第三世代特殊ネットワークタイプ義手『サイバネティックアーム』だ。

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僕は右腕 なかの @nakano

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