シンデレラ外伝 シンデレラの父
こんばんは、シンデレラの父です。
私は物語が始まる前、今で言う過労死でこの世を去りました。
その後、二番目の妻や義理の娘達はおろか実の娘であるシンデレラにも忘れられていて、ろくに弔いもしてもらっていません。
それも当然の事です。
私は仕事ばかりで家族を顧みず、更にはシンデレラが虐待されていた事にすら気づかなかった。
そんな男が神の元に行ける筈がありません。
今は罰として姿を変えられ、この世に留まっています。
さて、我が娘シンデレラのお話ですが、皆様は大方ご存知でしょう。
ですが、私も少し絡んでいた事はご存知ないでしょう。
それは、舞踏会の日。
妻や義理の娘達が城へと出かけた後の事でした。
「ああ、泣くのはおよし」
「おばあさん、誰?」
「私は魔法使いさ、さてと」
魔法使いの老婆は魔法で家を綺麗にし、我が娘シンデレラに綺麗なドレスを着せ、ガラスの靴を履かせ、かぼちゃの馬車を出し、鼠たちを馬に変えてくれました。
それを見たシンデレラは笑顔いっぱいで馬車に乗って城へ行き、後はご存知の通りめでたく王子様と結ばれました。
さて、私が何処に絡んでいたかと言いますと。
それは王子様が持ってきたガラスの靴をシンデレラが履いた後。
魔法使いの老婆が現れ、シンデレラに魔法で綺麗なドレスを着せた後、祝福の言葉を送りました。
「おばあさん、いろいろありがとうございました」
シンデレラは目を潤ませ、魔法使いに頭を下げました。
「いいんだよ、私が勝手にやった事なんだからねえ。それじゃあね」
魔法使いがそう言って去ろうとした時でした。
「待ってください、ひとつお聞きしたい事があるのですが」
王子様が魔法使いを呼び止めました。
「はい、なんでしょうかねえ?」
「あなたはもしや、シンデレラの亡くなられた母上では?」
王子様がそう言うと、シンデレラもハッとして魔法使いを見つめました。
「おや、何故そう思うのですかいな?」
魔法使いが首を傾げます。
「お顔は似てませんが、雰囲気がそっくりです。もしや神様が母上を魔法使いとしてここに使わされたとかでは?」
「全然違いますよ、私はその子の母親じゃありません」
魔法使いはそう言って姿を消しました。
王子様、それはないでしょう。
シンデレラは姿形もその雰囲気も全て母親そっくりです。
決してこんなろくでもない男には似ていませんよ。
ですが、そう言ってもらえて嬉しかったですよ。
ありがとうございました。
さてと、そろそろ私はお暇します。
皆様、どうぞこれからもシンデレラを見守ってやってください。
ごきげんよう。
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