赤ずきん外伝 漁師の復讐

 猟師は銃を持ち、薄暗い森の中を歩いていた。


 しばらくして、一軒の家の前に着いた時だった。

 家の中から大きないびきが聞こえてくる。


 この家にはおばあさんが一人で住んでいるが、昼間から寝ている人ではないはず、おかしいなと思った漁師は家の中を覗いた。


 するとそこにいたのは、腹を大きく膨らませた狼だった。

「あ、あいつは……とうとう見つけたぞ」

 猟師の顔は憎しみと悲しみに満ちていた。


――――――


 俺には可愛い盛りの娘がいた。

 いたというのはその昔、俺が森で狩りをしている時の事だった。

 母の家がある方から悲鳴が聞こえてきたので、何事だと走っていった。


 着いた時に見たのは、母と娘が奴に丸飲みにされていた所だった。

 俺は怒りに任せて何度も銃を撃ったが、奴はそれを全て避け、森の奥へと逃げていった。


 その後、娘が死んだと聞いた妻はショックから心の病になり、程なく娘達の元へ行ってしまった。


 以来俺はずっと、奴を探し続けていた。

 もうどのくらいの時が過ぎただろう。

 だが、やっと見つけた。

 俺から家族を奪った、あいつを。


――――――


 辺りに銃声が鳴り響いた後、狼は目を覚ます事なく死んだ。

 そして猟師は狼の腹を裂き、おばあさんと赤ずきんを助け出した。


「二人共生きてるな、よかった」

 ほっとした途端、体が段々と透けていきだした。


「ああ、これで? それとも?」

 猟師が笑みを浮かべてそう言った後、その姿が完全に消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る