シンデレラ外伝 可能性を狭めるな

 とある国のとある場所で、二人の男が何か話していた。


「先輩、これっていつまで続くんすかね?」

「決まっているだろ、見つかるまでだ」

「見つかりますかね? 参加者リストの中では誰も該当しませんでしたし」

「だから近隣住民を集め、事情聴取も兼ねた検証を行うんじゃないか」

「全部で三百人ですよ。ここまでやる必要あるんすか?」

「上の命令は絶対だ。つべこべ言わずにやれ」

「……もう嫌っす」

「なんだと?」

「僕はこんな茶番に付き合う為にこの職についた訳じゃないっす!」

「茶番だと? ふざけるな、この仕事には国家の命運がかかっているのだぞ!」

「どこがっすか!?」

「わからんのか!? いいか、これはな」




「すみませんしたっす。そういう事だったなんて」

「わかればいいのだ。さあ行くぞ」

「はいっす!」


――――――


「一昨日の夜は何をしていた?」

「家の片付けをしたり翌日の仕込みをしたりと、いつも通りの事をしていましたわ」

 ある女性がそう答える。


「それを証明出来る者は?」

「そんな人居ませんわ。義姉達は出かけていて、家には私一人でしたし」

「じゃあアリバイは無いって事だな」

「そうなりますわ。あの、もういいでしょうか?」

「いや、最後にこの靴を履いてみてくれ」

「はい? それって何かのおまじないですの?」

「いいから早く履け」


「ピッタリだな。連れていけ」

「はいっす!」

「な、なんですの!?」

「いいから着いて来てくださいっす!」


――――――


「先輩、連れて行きましたっす。でもあの人はどう見ても五十過ぎてますし、違うんじゃないっすか?」

「可能性を狭めるな。さて、次は誰だ?」

「シンデレラという若い娘っすが、何かみすぼらしかったし、これも違うんじゃないっすか?」

「だから可能性を狭めるな」

「あ、はいっす」



 二人が可能性を狭めなかったおかげで王子は無事シンデレラと結婚できた。

 そして王子は二人にたくさんの褒美をあげたそうだ。

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