おばあちゃん

 暑い夏のある日の事。

 もうすぐ日が暮れる頃、公園で遊んでいたマー君は友達とバイバイして、お家へと歩いて行きました。

 その途中で、困り顔でキョロキョロと辺りを見ているおばあちゃんがいました。

「ねえおばあちゃん、どうしたの?」

 マー君が話しかけると、おばあちゃんはこう言いました。

「おばあちゃんね、昔住んでいたお家を探しているのだけど、どこだったか思い出せなくてねえ」

「そうなんだ。おばあちゃんのお家って、どんなお家なの?」

「広いお庭がある二階建ての古いお家なんだけど、わかる?」

 マー君は「そんなお家あったかなあ?」と考え込みました。

 するとおばあちゃんは

「ありがとうね。もう暗くなるから、お家に帰りなさい」

 マー君の頭を撫でながらそう言いました。

 でも、マー君はおばあちゃんをほっといて帰りたくはありませんでした。

 それでどうしようかと思い

「ねえ、僕のパパとママなら知ってるかもしれないから、一緒に来る?」

 おばあちゃんの手を引いて言いました。

「でもね、もう遅いからご迷惑でしょ。さ、いいから」

「大丈夫だよ。ねえ行こ、おばあちゃん」

 マー君がグイグイと手を引くので、おばあちゃんは根負けしてマー君に着いて行きました。

 その途中、マー君とおばあちゃんは歩きながらお話していました。

「この辺りも随分変わったねえ」

「へえ、おばあちゃんがいた時はどんなふうだったの?」

「どの家も古かったわよ。そうそう、近所に薬屋さんと散髪屋さん、八百屋さんもあったわ」

 マー君はへえ~、と頷きながら聞いていました。

 そして、マー君のお家に着いた時

「あら、ここが坊やのお家なの?」

 おばあちゃんはお家を眺めながら驚いていました。

「そうだよ?」

「あらあら、新しく建て直したのね。それじゃわからないはずだわ」

「え?」

 マー君は首を傾げました。

 すると

「おばあちゃんの昔のお家はね、ここだったのよ」

 おばあちゃんは家を指さしながら言いました。

「そうだったの? でも今は僕のお家だよ」

「ええそうよ。ねえ、坊やはこのお家好き?」

「うん、大好きだよ」

 マー君は笑顔になって言いました。

「よかったわ。これで安心して帰れるわ。坊や、連れてきてくれてありがとうね」

 おばあちゃんはマー君の手を握ってお礼を言いました。

「それじゃあね、パパとママにもよろしくね」

「うん、バイバイ」

 マー君はおばあちゃんを見送った後、お家に入りました。

 そしてマー君がパパとママにおばあちゃんの事を話すと、どんなおばあちゃんだったのかと聞かれました。

 マー君がおばあちゃんの特徴を言うと、パパは何故か慌てて部屋に飛んでいきました。

 そしてその手にアルバムを持って戻ってくると、それを開いてマー君に見せました。

 そこにはさっきのおばあちゃんの写真がありました。

「この人はな、マー君が生まれる前に天国へ行った、ひいおばあちゃんだよ」

 それを聞いたマー君が驚いていると

「きっとまた家を見たくなったんだろな。でもこの辺りは随分変わったから、わからなかったんだろうなあ」  

 パパはしみじみと言いました。

「ねえパパ。ひいおばあちゃん、また来てくれるかなあ?」

 マー君がパパに聞きました。

「ああ。道は覚えただろうから、来年の今頃にまた来てくれるさ」

 パパはにっこり微笑みながら言いました。


 マー君は今度ひいおばあちゃんに会った時は、もっとたくさんお話出来たらいいなと思いました。

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