心を写すオバケ

 とある町に、ずっと昔から建っている大きなお寺がありました。


 そこは今も昔も子供達にとってはいい遊び場になっていました。


 今日も子供達は皆仲良く、鬼ごっこをしたりかくれんぼをしたりして楽しく遊んでいました。


 それと子供達にはこのお寺で出会った不思議な友達がいました。


 それは白くてまんまるとした体で、大きな目をして舌を出してニコニコ笑っているオバケでした。


 このオバケは子供達が遊んでいたある日、何処からともなく現れて子供達に

「ねえ、オイラと遊んでよ」と声をかけてきました。


 初めは驚いた子供達でしたが、よく見るとオバケはニコニコ顔。

 全然怖くありません。


 それから子供達はオバケといっぱい遊び、そして友達になりました。

 

 そして今日も子供達とオバケが一緒に遊んでいると、遠くから男の子がじいっと皆を見ていました。


「あれ? あの子は?」

「ああ、あいつはダメだよ」

 オバケの近くにいた子供が言いました。


「え、何でさ?」

「だってあいつ、何言っても返事しないし、何か気味悪いし」

「そんな事言っちゃダメ。オイラが誘ってくるから」

 そう言ってオバケはその男の子に近づいていき


「ねえ、一緒に遊ぼうよ」

 オバケが話しかけましたが、男の子はやはり返事をしませんでした。

「ねえ君、もしかして喋れないの?」

 すると男の子は首を横に振り、小さな声で言いました。


「オバケさん、何で泣いてるの?」

「え? オイラが泣いてるように見えるの?」

 男の子が頷きました。


「そっか。それは君が悲しい思いをしているからそう見えるんだよ。ねえ、何かあったの?」

 すると男の子がこう言いました。

「パパとママがお家でいつも喧嘩してるの」


「そっか。それで悲しくて、誰かと話すのもしんどくなったんだね」


「うん。でもオバケさんには話せた。何でかな?」

 男の子は不思議そうに首を傾げました。


「それはオイラが子供達の味方だからかな。さて、君のお家に連れてってよ」

「え、どうして?」


「パパとママに少しお灸をすえてあげるよ」


 オバケと男の子は家に着きました。

 すると外からでも男の子のパパとママの怒鳴り声が聞こえてきます。

「うわあ、ひどいもんだね。よっし」

 オバケと男の子は家に入り、パパとママがいる部屋に行くと、中ではやはり二人が怒鳴りあっていました。

「ん? 帰ってたのか、って、ウワアアア!」

「キャアーー!」

 パパとママはオバケを見て驚き、腰を抜かしてしまいました。


「どうしたのパパ、ママ!」

 男の子は不思議そうにしていました。

 オバケは大人が驚くほど怖く見えないのに。


 するとオバケが二人に言いました。

「ガハハハ、いつも喧嘩してる仲の悪い夫婦に子供はいらないだろ。だからこの男の子はオイラが食っちゃうぞ~」


「うわああ!?」

 オバケは急に大きな体になり、男の子を掴んで口の中に入れようとしました。


「ちょっと待ってくれ! その子を食べるなら代わりに俺を食べろ!」

「いえ、私を! ってあれ?」

 オバケはいつの間にか元の大きさに戻り、優しい顔になっていました。


「オイラが怖く見えたのはいつも喧嘩してたからだよ。でも今は違うだろ?」

「え、ええ」


「もう喧嘩して子供を悲しませちゃダメだよ。もしまたしたら、今度は本当に食べちゃうぞ」

「は、はい。ごめんなさい」


 その後男の子のパパとママは喧嘩しなくなり、男の子も悲しくなくなりました。

 そして皆と元気いっぱい仲良く遊べるようになりました。



「いつの時代にも、オイラはいるよ」

 オバケは一人、そう呟きました。

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