勇者とスライム
「とうとう見つけたぞ」
勇者は一匹のスライムを睨みつけ、剣を構えながら言った。
「な、なんだよ~? 僕もう悪い事なんかしないよ~。魔王様もあんたにやられちゃったし~」
スライムはつぶらな瞳でそのぷるぷるとした体を震わせていた。
「ああ、そうだな。それもこれもあんたのおかげだ」
「え、何の事? 僕は何も」
「とぼけたって無駄だ。もうわかってんだよ。あの時あんたがわざと負けて、俺に経験値をくれた事をな」
スライムは黙ったままだった。
「一回の戦闘であれだけの経験値。あんたはただのスライムじゃない。かと言って体がメタルなスライムでもない。だとしたら」
「……そうだよ。僕はかつて伝説の勇者と旅したスライムさ」
スライムは口調を変えて話しだした。
「やっぱりか。で、その子孫である俺の為にあんたは」
「君だけの為じゃない。世界中の人の為さ。で、何で僕を探してたのさ?」
「まず礼を言いたくてな。本当にあの時は……」
勇者は深々と頭を下げた。
「いいよそんな。で、それだけの為に?」
「いや、もう一つ。あんたにお願いがあるんだ」
「ん、何さ?」
「俺と勝負してくれ。今の俺なら全力のあんたが相手でも」
「へえ。うん、いいよ。でもかつて魔界の神をも倒した僕に勝てるかなあ?」
「もし今回がダメだったとしても、いつか勝ってみせる」
「わかったよ。じゃあ」
「ああ」
その後勇者は幾度となくスライムに戦いを挑んだ。
そして……
「あ~あ、とうとう負けちゃったよ」
スライムは嬉しそうにそう言った。
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