おやゆび姫・改
むかしむかしあるところに一人の女の人がいました。
女の人はひとりぼっちで子供が欲しいと願っていましたが、いくら願っても一向に叶いませんでした。
そんなある日、女の人は思い立って魔法使いのおばあさんにお願いに行きました。
するとおばあさんが一粒の大麦を取り出し、これを植木鉢に植えたら願いが叶うと言いました。
女の人はおばあさんにお礼を言い、家に帰って早速麦を植えるとあっという間に芽が出てチューリップのような赤いつぼみになりました。
あまりに綺麗なつぼみだったので、女の人は思わずキスしました。
するとつぼみが開き花が咲きました。
そしてよく見ると花の真ん中に親指半分くらいの小さな女の子が座っていました。
女の人はその子を「おやゆび姫」と名付けて大事に大事に育てました。
おやゆび姫は歌がとても上手で、女の人は毎日その綺麗な歌声を聞いて幸せな気持ちで暮らしていました。
だけどある朝気がつくとおやゆび姫がいなくなってしまいました。
女の人は部屋中を探しましたが見つかりません。
もしやと思い外に出てあちこちを探しましたがやはり見つかりません。
女の人は方方におやゆび姫を見なかったかと聞いて周りましたが誰も知りませんでした。
それからの女の人は毎日おやゆび姫を思い出しては泣いて暮らしていました。
そして夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎてまた春がやってきたある日の事です。
窓の外を見ると一羽のツバメが空を飛んでいました。
それを見ていた女の人はふと思いたち、ツバメに向かって言いました。
もしおやゆび姫の居場所を知っていたら教えて下さい、と。
するとツバメはくるくると輪を書いた後、どこかへと飛び去って行きました。
女の人はもしかしたら、と思いながらずっと空を見つめていました。
そして幾日か過ぎた夜の事。
女の人が誰かに呼ばれた気がして目を覚ますと、枕元におやゆび姫がいました。
女の人はおやゆび姫を手のひらに乗せると、泣きながら今までどこへ行ってたのか聞きました。
おやゆび姫は語りました。
ヒキガエルに攫われた事
メダカ達やモンシロチョウに助けられたけど今度はコガネムシに攫われた事
野ネズミの家で暮らしていた事
モグラと結婚させらせそうになった事
病気のツバメを助けてあげた事
そのツバメの背に乗って南へ行き、花の精の国で王子様と出会い結婚した事を。
そしてツバメに女の人が心配していると教えてもらい、また背に乗せてもらって家に帰ってきたと。
見ると窓辺にはあの時のツバメがとまっていました。
女の人はツバメにお礼を言いました。
その後おやゆび姫は女の人に自分達と一緒に暮らそうと言いました。
でも女の人が自分の大きさでは花の精の国では一緒に暮らせない、と言うと
おやゆび姫が帰ってくる途中で魔法使いのおばあさんに貰ったという一粒の大麦を差し出し、これを食べてと言いました。
女の人は言われたとおりその大麦を食べると、体がみるみるうちに小さくなって、おやゆび姫より少し大きいくらいになりました。
そしておやゆび姫は笑顔で言いました。
「これで一緒に暮らせるね、おかあさん」
女の人はおやゆび姫を抱きしめ、涙を流して喜びました。
その後女の人はおやゆび姫や王子様達と一緒にいつまでも仲良く暮らしました。
終
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