白雪姫……か?

 むかしむかし、ある国にとても美しい王妃様がいました。

 その王妃様は魔法の鏡にいつもいつも尋ねていました。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」と。

 すると鏡は「それは王妃様です」と答えていました。

「そうよね、私が一番美しいのよね~ホホホホホ」

「……」


 ある日また王妃様は鏡に世界で一番美しいのは誰、と尋ねました。

 すると鏡は「それは白雪姫です」と言いました。

「な、なんですってー!? 何でよ! あの子もたしかに美しいけど、私ほどじゃないわよ!?」

 王妃様が怒鳴ると鏡が言いました。

「たしかに。でも白雪姫は時々城の外に出ては病人の介護をしたりお年寄りしかいない家のお手伝いをしたり、孤児院に行って子供達と一緒に遊んだり勉強を教えたり、他にもいろいろ困っている人を助けたりしています」

「それが何なのよ?」

「王妃様、今のあなたは見た目だけで心が醜くなっています。あなたもかつては白雪姫のように弱いものを労る心美しき方だったはず。でもいつの間にかそれがなくなって、しまいにゃ毎日毎日私に自分の美しさだけ聞いて」

 王妃様は黙り込んでしまいました。


「王妃様、あなたは以前人に不気味がられて壊されそうになってた私を引き取ってくれた。その時『もう大丈夫だからね』と優しく微笑んでくれた。あの時の笑顔は本当に美しかった……本当に」

 鏡は泣いているような声で言いました。

「王妃様。私はまたあの時の王妃様が見たいです。そして心の底から王妃様を世界一美しいと言いたいです。どうか、どうか」



 しばらくどちらも何も言いませんでしたが

「……そうね。私何かを忘れてたようね。ありがとう、はっきりと言ってくれて」

 王妃様は涙目で言いました。

「王妃様……」

「さてと、しばらく何もしてなかったから白雪姫に教えてもらいながらまた頑張るとするわ」

「はい、はい……」


 それから王妃様は白雪姫と一緒に国中を回り、困っている人達の面倒を見たりしていきました。



 しばらくしたある日、鏡は言いました。

 「王妃様は本当に美しい」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る