ミチル←→アキラ 3

もう1歩前へ! 踏み出すんだ。私!


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……あのね。私、あなたが好きなの」

「はへ?」

うん? 今なんと?

「え? えええ!? そうなの?」


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そうなの! ねえ、お願い! 振り向いて──


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「いや、でも、ごめん! 俺、今相楽と付き合ってるから」

「そんの知ってるよ。2人がラブラブなのも知ってる」

知ってるなら、なんで……?


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知ってるよ。全部。君のことなら。でも、私はずっと。そう。小学生の頃から君が好きだった。


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「ねえ。聞かせてよ。相楽さんの何処が良いの?」

「え? そうだなあ。まず、声、性格……(中略)……あとは、そうだな……。控えめなところとか?」


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こいつ。ぶちのめしてやろうか? 何でこの状況でのろけられるんだ?


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「嘘つき! 昔っから、控えめな子より、思ったこと口にする元気の良い子の方が好きって言ってたじゃん……。なのに。なんで? 私はそれに合わせてきたのに……」

「!?」

え? ちょっと待て。いつの話をしているんだ? 昔? むかし、ムカシ……!!


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気付いたのかな……? 思い出した?


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「おまえ、まさか……。るみちゃん。なのか? 小5で転校していった」

るみちゃん。『みちる』って名前が上手く発音出来なかった俺が付けたあざな。

「そうだよ。やっと思い出してくれたね。あき君」

ああああああ。なんで忘れていたんだろう? あの日のことを。あの日。そうだ。丁度今日と同じくらいの時間。今日と同じ夕日の差し据える教室の端で、告白されたんだ。

そして、俺はその時……


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あの日のことがあっても、君はあの子のことを取るの?


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「でも……。でも……。俺は」

あの日の俺は……

「私は、あの日から、変わらず、君が、好き」

君が勇気を出してくれたのに……

「え……。う、うん。」

俺は……

……逃げたんだ。答えも出さずに。

「でも、君は違った。君の好みも変わってしまっていた」

「あ……。ああ。」

「でも、もう良いかも。十分満足出来たし。思い出して貰えたし」

るみちゃんは悪戯っぽく舌を出しながら泣いていた。あの日最期に見た顔とは大違いだった。だって、当時彼女は内気で、声も小さくて。そうだ。彼女は当時の俺が抱いていた理想の女の子。それになって現れたんだ。俺に振り向いて貰うために。

でも、ごめんな。るみちゃん。俺は、俺は、そんな努力してきた君に、残酷な言葉を投げかけなければならない。

あの日の答え。今なら言えよ。じゃあ、聞いててね。


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もういいや。全てを受け入れよう。私の中の1縷の望み、夢であり、目標。

あき君。許されるなら、君の隣で笑っていたかった………………。


↑↓


「ごめんなさい! やっぱり、俺は今、一美が好きです!」

ああ。なんて俺は残酷なんだ。あの日のことなんてすっかり忘れて、クラスの中でイチャつく俺らを目にするとき、どんな思いだったのだろう。俺には図り知ることが出来ない複雑な思いだったのだろう。きっと君はずっと辛かったのだろう。本当に、本当にごめんよ。

「だよね」

あはは~と笑う彼女の頬には、新しい涙が流れてきていた。

「うん。分かってたよ。だから大丈夫」

「でも!」

なんだ? 俺は何かを言わなければならないのか? ここで、もう、綺麗さっぱり終わらせたい。そんな感情とは裏腹に、声を発していた。


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何? 君は、まだ私にその残酷な刃を向けるの?


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「でも! これからも、仲良くして貰えたら嬉しいです!」

俺が最期に、君に突きつけた残酷な刃はこれだった。

そうだ……よな。あの頃はあんなに仲良くできてたんだ。きっと、きっとこれからも……。なんて、余りにも身勝手過ぎるよな……。

「君は……」

「分かってるよ! 俺だって。これがどんなに自分勝手な言葉かなんて! 分かってる。でも! でも! 折角思い出せたのに、これでさよなら。ばいばい。もうお互い知らない同士だね。なんて嫌だから! だから。これからも、イッパイお話ししようよ。るみちゃん」

「君は……。君は、なんて残酷なの……」

あれ? なんだか俺も泣けてきた……。あれ? あれ? なんだこれ?


バタン!


涙を拭いて前を向いたらもう彼女の姿は無くなってた。

涙を拭っているときに見えた彼女の顔は、少し笑っているように見えた気がした。

はは。神出鬼没な所は昔のまま、変わってないじゃん。るみちゃん……。


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はあ。はあ。私は走っていた。火照る頬をさますように。流れ押し寄せてくる涙を振り切るように。

「うぇ……ぐすん。あき君……あき君……君は優しすぎるよ。また……あきらめられなくなっちゃったじゃん……」

私は君を諦めようとして、声を掛けた。あの日の中途半端になってしまった思い出に、終止符を打ちたくて。

でも、でも……これじゃ、諦めきれないよ……。

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