ヒカリ←→アキラ 10(8月)
8月12日
あ~あ。退屈……
←→
『こんばんは。三枝君』
『こんばんは。ひかりさん』
『突然ですが、宿題は終わりましたか?』
『え!? なんで敬語!? まあ、いいや。終わってないよ』
『え? そうなの?(あ、敬語は気分です)』
『うん。でも何で?』
『なんか、友達がね、もう終わったって言ってたから。三枝君はどうなのかな-? って』
『なるほど。ま、まあ、俺は? まだ手を付けてない教科もあるけど?』
『え? それ、やばくない?』
『大丈夫、まだ、大丈夫』
『そ、そうなの』
『うん。でもま、やろうかな。じゃあ、やってくるよ。おやすみ』
『うん。おやすみ』
←→
結局この日は寝ました。やる気? どこに落ちてるんだろうね~?
8月19日
珍しくひかりさんからのラインが来なかった。
8月20日
朝起きると、深夜3:00くらいに、『わあ! 寝ちゃってた……』というメッセージが来ていた。
そして、この日、8月20日はうちの高校が後期補習を始める日だった。その日の朝の事、俺の元へ例の彼女からラインメッセージが届いた。初めて定時以外にラインが来た。
『朝なのにごめんね。補習何時からだっけ?』
ん? ああ。後期補習の事かな?
『9時からだよ』
『ありがとう! じゃあ、今日からお互い頑張ろうね!』
『おう!』
っと。俺は画面に指を滑らせ、返信をすると、家を出た。
後期補習初日は、部活の試合なんかと被っているらしく、何人かちらほら休んでいる生徒が見受けられる。
「なあ、幸平。俺、そろそろ例の彼女を突き止めようと思うんだ」
「ほう。どんな風の吹き回しだ?」
「いや、今朝さ、初めていつもの時間以外に連絡が来てさ、何か彼女との関係を変えるなら、今なのかな?って思って」
「なるほど。まあ、いいんじゃないか? で? どうやるんだ?」
「まあ? ストレートに?」
補習後の、クーラーが止まり、むんとした熱気が立ちこめて来ている文系クラスの端で、俺と幸平は向かい合わせに座っていた。俺はごく普通に言った。
「今から呼び出してみようと思う」
呼び出した場所は図工室。3棟ある校舎の1番南。本館と呼ばれるその棟の4階にある教室だ。基本的に誰も来ないその場所は一種のエアースポットとなっていて、携帯を触りたいときとか、そういうときくらいしか訪れない場所である。
待ち始めてから早1時間。彼女は現れる気配はおろか、ラインの既読さえ付かないのだった。
もう来ないかな……そう思い、教室から出、和室の前を通り、階段を目指す。階段を下りようとしたとき、誰かが急に駆け下りていくのが見えた。おそらく女子生徒。判断基準は、スカートが翻ったように見えたから。
「待って」
気のせいかもしれないが、俺の気配を感じて逃げていった様に感じた。
追いかける。
追いかける追いかける。
追いかける追いかける追いかける。
1階にたどり着いたが、どこかで見失ったのか、女子生徒は何処にも見えなかった。ひょっとして今の子が…………? 俺の疑問は尽きなかった。
『で、逃げられた。と』
一応相談にのって貰った事だし、一部始終を話そうと、幸平にラインをしていた。
『う~ん? どうなんだろう? その女子が彼女と決まった分けではないし』
『いや、でも逃げたんだろ? ほぼ決定じゃん』
『いや、でもさ、俺の勘違いかもしれないし』
『そうなのか』
『うん』
この後、数回ラインでたわいもない事をした後、携帯の画面を消した。
8月26日
この間の本館階段で逃げたのが私って、ばれないようにするためにも、何か話しとかないと…………。
←→
『こんばんは。三枝君』
『こんばんは。ひかりさん』
『三枝君。シンボル作成頑張ってるね!』
『ありがとう。でも、なんか上手くいかないんだよな……』
『黄色ブロックは、えっと、ミニオン作ってるんだっけ』
『うん。あのキャラはねマイナーだけど、小さい個体が、小さいながらも、力を合わせて何かをするってのが、黄色ブロックのシンボルに丁度いいって思って、あれにしたんだ。みんな。ミニオンみたいに力を合わせてがんばろー。って』
『素敵だと思う』
『でもね。上手くいかないんだ』
『というと?』
『みんなの意見も纏まらないしさ』
『そうなんだ……』
『って、こんな話、ひかりさんにすることじゃなかったね。ごめん』
『いや、いいよ!』
『そっか。ありがとう。おやすみ』
『う、うん。おやすみ』
←→
ああ……辛いな……。
夏休み明け、学校は段々学校祭ムードに染まってきていた。
「あ、暑い…………」
俺は体育祭用のシンボルと呼ばれる、巨大人形制作の最中だった。炎天下での作業はどんどんと俺の体力を削っていく。
「お~い! 差し入れだぞ~」
シンボルの顧問をしてくれている先生が、ジュースの入ったビニール袋を携えてこちらにやってくる。こんなくそ暑い日には、冷えたジュースが天からの恵みのように感じられた。
「ちょっと休憩にするか!」
シンボル長が提案すると、シンボル制作のメンバーが、ちらほらと日陰を求めて移動し出す。俺も日陰で、応援パートと呼ばれる、体育祭で、ダンスを発表するグループが流している音楽に耳を傾けながら、一休みする。
ふと、目の前を通って行った、地味目な髪型の女子生徒に目がとまる。
その生徒は俺の方をチラと見ると、少し駆け足気味に昇降口へ消えて行った。
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