六転
なんとかその日のうちに、荷物だけは運び込むことができた。
おやじさんの『知り合いの元の連れ合いの従兄弟』とやらが所有しているアパートは築四十余年、流石に取り壊しが決まるだけのことはある、と思わず納得がいくボロさ加減だった。
六畳一間風呂トイレつき、という同じ間取りが三部屋づつの二階建て。
それだけの床面積があっても、3LDKと1LDKを占領していた什器、金庫、事務用品、檻、水槽、商品、餌、家財道具などを運び込むと、けっこう手狭に感じるものだ。
「ふぃい」
柊はかろうじて畳が見えている部分を見つけ、そこにゴロリと寝ころんだ。
寝そべったまま、煙草に火をつける。
「恨むぜ、社長」
これで給料がよくなければ、とっくに辞めているのだが。
あ。一服したら、商品たちに餌やんなけりゃ。
あれ?
灰皿どこにしまったっけか?
柊誠の長い一日は、今しばらく終わりそうにない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます