斬首 【2】
【2】
私は弟を睨みつけるのをやめ、お菓子のことをあきらめて夜の闇を睨みつけます。その闇の向こうに光が現れ、過ぎ去り、誰かと誰かが幸せな行為をし、再び闇、光、闇、それを繰り返したその先で誰かが首を斬られ、再びの光と闇、繰り返し繰り返し、そして睨んだ視線は私の手のひらに戻ります。手のひらを走る無数の線。
そこから読み取られるすべての運命について私は思いを馳せます。私は何歳くらいで結婚して、どんな仕事が向いていて、コントロールできない感情の荒波と論理的思考のバランスはどれくらいで、その情報から得られる人生をすでにすっかり体験したつもりになってしまいます。
いいえ、実際に私は体験しました。手のひらから読み取れる、私ではない無数の私の人生を。
あなたも聞いていましたよね。
竜宮城。酒席。世界樹。満員電車。あらゆる可能性とあらゆる不可能性。
でも、そこで見た数え切れない私が、弟に奪われることなくお菓子を食べることができたのかどうかは、結局わからずじまいで。
手のひらは裏返され、手の甲となり、右斜め前方へ移動してテレビのリモコンを掴みます。付けたテレビの音量が思った以上に大きくて、私は振り返って、眠る弟をもうひと睨み。長押しされるマイナスボタンと小さくなっていくキャスターの声。
中東、という言葉が遠のく中、私はチャンネルを変えます。
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