その3
前回の概略:葛西先生は女子高生の一言に怒り狂ったんだぎゃー。そこにゲジマユもとい外島先生が助け船を出したんだぎゃー。葛西先生は外島先生に質問したんだぎゃー(笑
外島先生はこう答えた。さ・す・が・外島先生っ!葛西先生は外島先生の心遣いに感動していた。僕はあなたに一生ついて行きま…と決意しかけたその瞬間、
「ところで、先日の月例実力テストの結果、F組は群を抜いて低迷してましたねぇ。もっと気を引き締めて生徒を束ねてもらわんとダメじゃないですか、葛西タクピー先生!」
と、外島先生はチクリと一刺し放った。葛西先生は、一言「すみません」と返すのに精一杯だった。絶句だ。外島先生は「ニコッ」と口角を上げ、ではまた集合時間に、とその場をあとにした。やはり侮れんな学年主任、先程の「ついて行く」は撤回させてもらうぞ…と、言ってもいないのに葛西先生はそう自分の心を折った。気付けば周囲には誰もいなくなり、当初の望み通りに行動できるという状態になった。従って葛西先生は、いそいそと3D映像コーナーに向かって小走りに進んでいった。
やがて本館三階にある目的地へと辿り着いた葛西先生は、そこに誰か一人いることに程無く気付くことになる。ここ、3D映像コーナー(広さは百畳程)には100インチもあろうかという大パノラマ画面に映像を写すという映写ブースをメインに、凹面鏡を利用してそこにあるように見えるのに触れることができないという立体映像を展示するブースや、赤と青のフィルムを張った眼鏡を着用して見る3D本の展示ブースなどがある。一見葛西先生が教える生物分野とは全く関係のないようなシロモノなのだが、彼は異常なまでに楽しみにしていたのだ。到着直後は、目の前に広がるワンダーランドに胸を躍らせ、さあこのコーナーを独り占めできるんだ、限られた時間一杯楽しむぞぉ!… と、あたかも初めて夏の海に繰り出す幼稚園児が如くはしゃいでいた葛西先生も、同じ世界の中にいるもう一人に気付いて一瞬凍りついた。そして間を入れずに何らかの感情が生まれ出た。
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