その2

前回の概略:A高校の葛西先生が、一年生の社会見学の引率で県立博物館に来館してるぞと。葛西先生は、自分が視たいコーナーには1人で行きたいぞと。で、生徒に強めに言ったら散ってくれるだろうとの頭でいたんだぞと(笑



 「だから大丈夫ですってば!早くタクピーが見たいモノのところに行きましょおよぉ!!」

先程の生徒とは別の、如何にも集団のリーダーのような女子生徒がこう返事したのだ。葛西タク…先生はいよいよ胸に募るイライラを抑えきれなくなってきた。

何なんだコイツらは!テメェらの好きな場所に行けっつってんのに、一向に聞き

やしねぇ!ちったあ自分の意思っつーもんを持てよ!自由時間だっつーのに他人

のケツに金魚のフンみたくくっついて来やがってぇ…フザケロヨコノヤロオ…!!

--と内心怒り狂っていた(しかも柄悪く)ところに、太い眉毛の下にギョロっとした大きなまん丸の目をもった、細身の中年男性がやってきた。学年主任の外島先生だ。『げっゲジゲジだっ!』女子生徒の中で小声で言うのが聞こえた。「ゲジゲジ」は外島先生の渾名だ。

 「君達、私がちょっと葛西先生に用があるから、別の所に見学しに行ってくれんかね」

 外島先生は一言、女子生徒の集団に声をかけた。すると、聞き分けがいいのか別の理由からか(?)、集団は二つ返事で各々班毎にとっとと散らばって行った。流石外島先生。カモネギ…いや渡りに船とはよく言ったものだ。葛西先生はほっと一息ついて、

 「あのぉ、ところで何の用でしょうかぁ外島先生?」

と遠慮がちに尋ねた。

 「ああ、特に用はないですよ。ただ何となく困っていたように見えたんでね、君が」                

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