/伝わる、その明日から~プロローグ~

「頼む!後生の頼みなんだ!!俺だってお前が昔に金欠だった時にコロッケとカツサンド奢ってやっただろ!?」

大学の頃に60円のコロッケと120円のカツサンドを奢ってやったんだから助けてくれ。なんて恩着せがましく両手を重ね頭を下げている一人の大柄な男性が晴樹の目の前にいた。大学の時に晴樹と一緒のサークルでありいつも一緒に居た友人の一人。久々にあったと言うのに何故かこうして半ば強制的に厄介事を頼もうとしている、と言うよりも頼んでいる最中であった。

「ちょっと待てって!ここでそんな事言われても!他のお客さんに迷惑だろ!もう少し音量トーンを下げろって!」

「あ、ああ。すまん!ちょっと興奮し過ぎた」

そう言うと彼は咳払いをすると店員を呼ぶベルを押す。

「とりあえず腹ごしらえでもするか・・・お前は何食べたい?」

「・・・また僕に奢らせる気だろ」

「んなこたぁ~しねーよ!あれは仕方なかったの!でも、俺だって奢ったろ?コロッケとカツサンド」

「それだけだけどな」

そう。いかにも金欠で困っている時にご飯を奢ってあげた、と言う言葉は聞こえがいいけれどそれ以上に晴樹は彼にたかられていた。主に昼ご飯を。なので奢ってもらったことは素直に感謝しているけれど、彼が言うほど恩を感じている訳でもない。寧ろ、恩かねを返して欲しいと思っているぐらい。しかし、そんな事を言ってもなにも始まる訳でもない。晴樹は人がいいため彼が頼もうとしている事案を聞くだけ聞こうと思い彼同様に昼ご飯を注文する。店員さんが注文を繰り返し確認して去っていくと同時に彼は一枚の写真を出してくる。

「また、写真か・・・」

「また?」

「あ、いや。こっちの話し」

「それでな!ちょっと頼みがあるんだよ!」

「何でしょうか?」

彼は言葉を続けた。なんでも数日前に合コンをしたらしい。そこでとても気の合う女性と出会いその人にゾッコンだと言う。そこまで聞いても別にただの恋愛話かと思い聞いていると、次第に彼の苦手な方向へと向かって行く。

「それでな?キャンプをしようと言うことになってな?是非、お前にもついてきて欲しくてな!」

「はぁ?なんて僕が?」

唐突な提案に彼は呆れたような声を出してしまう、がお構いなしに話しが進んでいく。

「んで、男女ペアで参加条件だからよろしく!」

「い、いやいや!急過ぎるしなんで男女ペアなんだよ」

「なんでも、彼女の会社が主催するイベントでそう言うのがあってだな」

「・・・」

なんだか上手く利用されている気もするが彼が良いならまあ、そっとしておこうと彼は喉まで出かかった言葉を飲む。

「でも、僕相手居ないし」

「・・・マジかよ。お前ならいい感じの女性がいるとばかり思っていたのにな・・・」

「どう思ったら僕に彼女がいるとか思えるんだよ」

「だって、お前大学でモテてたから。あーこまったなー。あとワンペアだけなんだけどな・・・」

困っている友人を助けたい、が今回ばかりはどうしようもない。晴樹一人だけでどうこうできる話しではない。そう思っていると横から声が聞こえる。

「私でよければついていきますよ?」

「?」

「えっ!?」

声がする方へ視線を向けるとそこにはニコニコと微笑みながらこちらを見ている花の姿があった

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