第41話 帰還

 「たダいま戻りました!」


 「おかえりなさい、ローエングリンさん」


 「おかえりなさい」


 「なんで来たの?」


 

 ネネリから慈愛の笑顔、マミヤのうやうやしいお辞儀、そして俺の温かい言葉がローエングリンを迎え入れた。

 

 

 「皆様っ!ゴ心配をおかけし申し訳ありません!『お見舞い』や『差し入れ』まデ頂き……わたくし涙ガ溢れて枯れそうデす」


 

 その冗談、笑えないんだけど……干しシイタケなんて勘弁して。


 

 「予定通り退院できて良かったです。ドアノブさんもご一緒に出られたのですか?」


 「ありガとうゴザいます、ネネリ様!奴はまダ動けません。軟弱者デす」


 「オセロの相手が居なくなったな」


 「私は別に気にしておりませんガ……奴ガ暇ダとうるさいのデこの後相手をしてやる予定デす」


 「仲良くなられましたね」


 「い、いえそんなことは決して……」



 マミヤは直球だなぁ。ローエングリンが狼狽している。いいぞもっとやれ。


 

 「そ、それデ……ドミニク様、こちらに見えるのは?」


 「あぁ、この子達は……新しい『仲間』だよ」


 

 部屋にはネネリ達の他に二人いる。彼らは奴隷購入費用のプール金で買った者達。つまり……かなり安い奴隷だったということだ。


 だけど購入した瞬間から俺たちは同じ社員。だから今はもう奴隷ではない。


 ちなみにネネリは天使なので奴隷じゃありません。

 

 

 目の前で直立不動の二人。メガネをかけた少年と、肌が木目調の女の子。

 

 彼らは昨日までは、入社前の検査期間として別の場所で寝起きしていた。だから皆とは初対面で、いささか緊張しているのかもしれない。

 

 

 「男の子はエルフ族のファム。女の子はハーフドリアードのウルウね。仲良くするように」


 「もちろんデありますっ!」



 名前を呼ばれた子供たちはお辞儀をしていたが、ローエングリンが敬礼をしたのであたふたしながら敬礼を返していた。


 君たち、お願いだからそんなの真似しないでくれ。



 「ファムです!エルフの十さいです!」


 「ウルウです。ハーフドリアードで……えーと……わかりません。」


 

 うーん、初々しい。可愛い。


 そんな様子をニコニコ見ているネネリも可愛い。



 「タンゴ族のローエングリンと申します!以後お見知りおきを!」


 

 うーん、初々しくないし声がでかい。

 

 医務室で注意しとけば良かった。



 「紹介もすんだし、ご飯にしようか?」


 「はい、ご主人様。すぐにご用意しますね」


 

 ぱたぱたと部屋を出るネネリ。マミヤも彼女の後を追って出て行ったので、手伝ってくれるのだろう。


 既に準備をしていた彼女達は、てきぱきと動いてあっという間にテーブルは皿で埋まった。


 

 「ご主人様、お待たせしました」


 「うん。ネネリも席について。マミヤさん、ありがとう」


 「いえ、大したことはしていません。準備は殆どネネリさんがされましたから」


 

 そう言って席につくマミヤ。彼女は食べることも座ることもないけど席は用意してある。


 

 「じゃあ食べようか」



 「あ、あのっ」



 それまで席で固まっていた二人の中でファムが突然口を開いた。



 「どうしたの?」


 「ぼくたちは……どれを食べても良いんですか?」


 

 今度は俺が固まる。そして――



 「ぷっ」


 「あ、あの……」


 

 思わず噴出したおかげで、ファムが目を丸くしてしまった。



 「あ!ごめんごめん。ふふっ、前に同じことがあったからついね。ネネリ、教えてあげて」


 「は、はいっ。ファムさん、ウルウさん『全部』ですよ?遠慮しないでくださいね」



 少しだけ恥ずかしそうにネネリは笑った。






 驚くことにファムとウルウは何でも食べた。その食べっぷりはテーブルの皿をあっという間にたいらげ、ネネリが慌てて厨房に行く程だ。


 ぱくぱくと口に運んで喉を詰まらせたりするようすは微笑ましい。


 ローエングリンが魔法で水を出してやると、びっくりして更に奥に詰まったみたいで皆慌てた。


 

 「魔法の無駄使いです」



 調子にのっていたローエングリンがしゅんとなるのは仕方ないけど、マミヤさんちょっと怖いよ……。


 そんなハプニングはあったが賑やかで楽しい食事だった。


 今はリラックスタイムで子供達はお昼寝している。


 ネネリは黒狐の毛繕い、マミヤは読書とそれぞれの方法でくつろぐ。



 「ドミニク様、昼のゴ予定は?」


 「うーん、魔法の練習かな。ローエングリンも付き合ってよ。ネネリを見てほしいし」


 「かしこまりました!」



 最近は仕事以外は魔法の練習ばかりしている気がする。


 先日覚えた「りすとら」は強力すぎてほとんど・・・・使わないだろうから、俺の中では無かったことになっていた。


 「りすとら」は簡単に使えたけれど、それ以降は新しい魔法を覚えていない。


 だからローエングリンに俺の魔法も見てもらい、アドバイスが欲しかったというのもあった。



 ここにおいて行くわけにもいかないので、この子たちも連れていくか。


 昼からはみんなで中庭だな。


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