第39話 ネネリの日記②
少し落ち着いてきたので書きますね。いえ、書かずにはいられません。
私は大変なことをしでかしました……。
魔王様の目。あの瞳はとても恐ろしいもので、目と目を合わせたあのとき、今までのことがいっぺんに思い浮かんで……全部覗かれた様な、そんな気がしました。
体が震えます。
魔王様の部屋から出ても、ご主人様の部屋へ戻っても、ご主人様とお食事しても、お風呂に入っても……震えは止まりません。
それはベッドに入ってからも同じで、眠れませんでした。
目を閉じると昔の事を思い出します。
魔力量が低いとわかったとき、もっと下がったとき。「呪い」と言われたとき、奴隷になる決心をしたのに売れなかったとき。
何故か辛い事ばかりで……思い浮かぶのは同じ顔。私に失望した顔です。
私はご主人様に見捨てられる様な気がしてとても怖くなりました。
何故か魔力量が上がりましたが、明日には元に戻っているかもしれません。それが急に不安に思えてきました。
眠れない私は……あろうことかご主人様のベッドへ向かいます。
違うんです!近くでお声が聞きたかっただけなのです……。
だけど奴隷としてあるまじき行動には変わりありません。お叱りを受けても当然です。
ご主人様はそんな私を……ぎゅっと抱いてくださいました。
燃えるように体が熱くなりました。
火照った私をひんやりした腕が包みます。ご主人様はとても冷たいのです。初めて私の手をとってくださったあの時からそれは変わりません。
「ん~なんでだろ?吸血鬼だからかな?」
そう仰った笑顔を思い出しました。
私の熱が、ご主人様へ伝わります。少しだけ、お体が暖かくなった気がしました。
震えはいつの間にか止まっていました。
それから、それから。
私はご主人様のひんやりしたお体が心地よくて。
そのまま……そのままベッドに潜り込んでしまいました!
あぁ……書いていたら、また熱くなってきました。
ご主人様はすぐにお休みされましたが、私は眠ることができません。
トクン、トクンと「核」の鼓動を感じます。私と、ご主人様、両方の。
結局、私は朝寝坊してしまいました。珍しくご主人様もお目覚めが遅かったので良かったのですが……。
そろそろご主人様が戻られます。今日は魔法の練習を見てくださるそうです。
ご主人様が昨夜のことをご不快に思っていないか不安で、緊張しています。やはりはしたない奴隷と思われたでしょうか。
でも、もし……もしそうでないなら。
私はもう一度、あの音を聞いてみたいのです。
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