アイスケーキと恋は情報
戦では情報が全て。それは恋においても同じである。
えりかちゃんは手始めに作戦会議を、と提案し楽しいお茶会は作戦会議室へと変わった。
途中異様な空気を察知した男の子らは散り散りに逃げ、空気を読まず邪魔したピエロは排除された。
女の子怖い。
同性の私すら恐怖を覚えたが、顔には出さなかった。
後が怖いから。
「さて、クリスマス迄はもう時間がないわ」
背筋を伸ばし、声高に宣言するとテーブルにつくわたし達を見渡した。
「衣装を変えられない以上、後はとうこちゃんの行動しだいよ」
えりかちゃんはかおりちゃんと目配せし合い、答えるようにかおるちゃんが席を立った。
「でも、サポートは必要だよね!」
得意げにポッケからノートを取り出したかおるちゃんは、ページを繰りだした。
「かすみちゃんはクリスマス会をかなり楽しみにしてたみたいだよ。衣装も春の内に決めてたみたい」
何でそんな事知っているのかって、彼女のお家は代々この園に通っている。
おまけに率先して親が役員を引き受ける為、自然ままさんネットの中心に居る形になっているのだ。
そして彼女はそのママさん会を日夜観察するのを趣味にしていた。
彼女曰くスパイごっこなのだとか。
「お洋服の生地にもこだわって、テーマも考え抜いたみたい」
「それで?どんな衣装なの」
勿体つける彼女にえりかちゃんが早くと先を促した。
神妙に頷き、かおるちゃんは口を開く。
「お嫁さんだよ」
「え?」
よく分からなかったと言うようにあおいちゃんが聞き返した。
うんと頷き、もう一度はっきりと言う。
「お嫁さん」
ウエディングドレスってこと?
何て事なのと旋律するえりかちゃん。
お嫁さんと慌てるあおいちゃん。
わざわざ花嫁さんにするって事は、そのまま告白でもする気だったのかな。
しかし両親もよく許したなあ。
うちのぱぱなら泣いちゃうよ。
考えるわたしにえりかちゃんが抱きついてきた。
な、何!?
驚くわたしに彼女は真剣な表情をして手を取る。
「気をしっかり持ってね。魔女でもまだ負けてないわ」
ああそう言う事。
確かに花嫁と魔女だと印象百八十度違うな。
あちらは幸福の。
こちらは不幸の象徴。
ある意味面白いんじゃないかな?
わたしと恋敵さんの姿を想像してみる。
並んだら、相当に面白い絵づらになりそう。
かすみちゃん、並んで写真撮ってくれないかな。
どうやったら一緒に写真を撮れるか、考える私に対し作戦会議室はお通夜状態だ。
えりかちゃんは椅子に戻って爪を噛んでいるし、かおるちゃんは難しい顔をしてノートに顔を落としている。
あおいちゃんはと言うとわたしの顔を見てにこっと笑った。
「大丈夫だよ。とうこちゃんの魔法使いは可愛いもん」
声に顔を上げた二人は頷き合い、そうね、そうだよっと励ましあっている。
私は一人事の行く末を静かに見守る事にした。
再び始まった作戦会議は衣装から仕草の会話に変わり、魔女という負のイメージを一新すべく、熱い論議が交わされている。
「可愛い魔女っ子ものはどうかしら?」
「いっその事大人な魅力を目指すっていうのはどうかな?」
「とうこちゃんはそのままが一番良いと思う……」
論議の内容を聞く限り、彼女たちは真剣なのだ。
私も腹を括るかと深呼吸で、部屋の空気を吸い込んだ。
室内の空気は暖かく、柔らかい。
オレンジ色の空気を吸い込み、窓に目を向ける。
日の光は青く変わり、近く灰色になるだろう。
耳を澄ますわたしにびゅうっと木枯らしが聞こえた。
冬はもうすぐそこのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます