実際につけた例その1と2


前回から大分間が空いてしまいましたが第三回です。


それではいよいよ今回は私が自分の作品に今までつけてみたキャッチコピーを例に挙げ、それを実際に人に訊いてみた時の反応や感想を元に良いもの良くないものまたはどちらでもないものを分析していこうかと思います。


ですがその前に……キャッチコピーをつけるための小説の説明がないと話になりません。


そこでまず最初に例として私の書いた現在第三話まで掲載している『羊 夜 世界』を実際に一読をお願いしたい(ダイレクトマーケティング)

小説はカクヨム内の作者情報のリンクからも辿れます。



お読みいただけましたでしょうか?

全四十話、四部構成を予定している中の第三話までと物語の中ではまだまだ序盤ですが、登場人物や舞台設定などの大体の作品の雰囲気はつかんでいただけたかと思います。


概要はあらすじにも書いてありますがものすごくざっくりと説明しますと、どこにでもいる普通の男子高校生である主人公が他の人の夢の中に入り込める能力を得たことをきっかけに、いろんなことやいろんな人。更には人工知能にまで巻き込まれるといった感じの物語です。


もう少し説明を加えると、この小説は伝奇的なお話ではありますが作中にはバトルや激しいアクション要素はあまりなく、どちらかというと普通の日常と不思議な幻想世界を間を行き来しつつその世界の謎を解き明かしたり色んな体験することを主体とした物語です(こうやって概要を簡潔に書くと、本来よりずっと面白そうに見えるのが不思議ですね)



それでは前置きが少し長くなりましたが例としての小説の概要の説明が済んだところで、さっそく実際の例と反応を挙げていきます。

なぜそのコピーをつけたのかの理由(思惑)もあまり参考にはならないと思いますが、経緯の説明として一緒に載せておきます。


やや大喜利めいていますが、そこはどうかご容赦ください。

協力:エヌ氏



<第1案>



「羊毛、それは柔らかい」



当時の筆者の思惑:


見た人が「なんだこれは?」と思うインパクトがありそう。とりあえずどんなものか見たくなるのでは?

というか正直自分の作品にコピーなんかつけたことないし何つければいいか分からないし……時間もないからとりあえずまあこれでいいか。



エヌ氏評:(言ったことを大まかにまとめています)


確かになんだろうとは思う人もいるかもしれないけれど、作品の魅力を伝えるという目的からすると論外だと思う。

これであらすじまでは読んでも第一話まで読んでもらうまでに持っていくのは難しいのでは。


羊というキャラはほのぼのとした感じを受けるし、コピーとはあっているのかもしれないけれどそれは物語の主題から外れると思う。

読者は無意識にコピーはその作品の主題もしくは全体の雰囲気を表すものだと思うから、タイトルあらすじとコピーとの違いが大きいと違和感を覚えるもの。

タイトル、コピー、あらすじごとに統一感に気を付けてそれぞれに目的を絞ろう。



筆者によるまとめ:


エヌ氏評が割と辛辣なのが気になるところですが、インパクトだけかつあまり本筋とは関係のないものではあまりうけは良くないようです。しかもあらすじとの親和性まで気にするのが良いようです。

流石にここまで気にしたことはありませんでした。


いやはやエヌ氏の感想はなかなか参考になりますね!(なぜかこちらが上から目線)

それはそうと羊毛を水中にすると何処かで聞いたようなバンド名に似てくるのは、多分当時そのバンド名をどこかで目にしていたのかもしれません。




<第2案>



「電気羊が見た夢の世界」



筆者の思惑:


電気羊といえばフィリップ・K・ディックのかの有名な『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』にちなんでいるし、夢を見るのがアンドロイドじゃなくて電気羊自身っていうのがちょっと捻ってる。これならコピーとしては中々良いんじゃないのだろうか。


おまけに早くもコピーの段階で夢の世界の話と夢の世界にいる羊の話も伏線的に出せるしいいことづくめだ。よし、これでいこう。



エヌ氏評:


第一案より大分よくなったと思った。これでもいいのでは。

でもそのタイトルは有名過ぎてあちこち色んな作品でもオマージュされているから、かなり捻らないとありがちというかやや陳腐な印象を受ける。


しかも他のどんなに有名な作品であってもその作品を知らない人には効力はない面も考えると、どういう層に読んでもらいたいかを決めていない限りは避けた方が。


それとコピーやあらすじの段階での伏線はよっぽど上手くやらない限り難しい。

よく物語の中の特に後半の盛り上がっているシーンの印象的な一文を抜き出すっていうのはコピーの方法としてよくあるけどやめた方がいいかも。


なぜなら作者はその小説の世界を完全に理解しているし結末まで全部知っているけれど、読者はまだまったく何の情報もなくどんな魅力をもっているかも分からない訳だから。

よっぽど想像力のある読者だったら少ない情報からあれこれ物語を想像してもらえるけど、それは大体にして外れてしまうだろうしその想像をいい意味で裏切らなければならないから余計ハードルが上がるのではないか。


だからまず興味を持ってもらえるようにコピーは目的を絞って、あらすじは物語の概要に説明を尽くしていいと思う。



筆者によるまとめ:


これにはぐうの音も出ません、反論が思い浮かびませんでした。

しかしうちのめされた筆者が思わずこそっと……

エヌ氏には是非、否定的な批評の方が容易でかつどんなものにだって欠点をみつけることが出来る。しかも批判している方が正しく見えやすい、という有名な文句を送りたくなってしま……いえ自分から訊きにいっているので不満など出る訳がありません。

大変ありがとうございます、参考になるご意見誠に感謝しています(本当ですよ)


有名作品のオマージュが手法としてありがちっていうのは同意するにしても、その作品が同じく好きな人に向けてって意味ではそう悪い判断ではないようです。

エヌ氏いわくどういう層に読んでもらいたいかを決めておいた上なら問題ないとのことですから。

それはそうとエヌ氏って書くと星新一先生の短編に出てくる登場人物みたいな名前ですね。



***



講評の途中ですが少し長くなってしまいましたので第三回はここまでで終わりです。


しかし筆者が不甲斐ないせいかこのままでは「キャッチコピーをつけるのって難しい!」という印象だけでこのエッセイが終わってしまいそうです。

これは非常にまずい。果たしてこの情け容赦ないエヌ氏が満足のゆくコピーは出来るのでしょうか?


次回へと続きます。


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