第3話 蒼と雲の彼方で
幾つもの戦闘機が織りなす轟音は、変わらずに遠くから聞こえてくる。どうやら今日の敵さんは少々しつこいようである。
写真には、桃色地で装飾があるブラウスに、クリーム色のロングスカートを穿いた女性が立ち姿で佇んでいる。
「どうしてるのかな……」
写真の中にいる
――ソータさん、あなたはとても素敵な男の子だと思うわ。
「
「燃料と弾薬の補給、終わりました」
「ご苦労」
2,000馬力のエンジンが唸りを上げ、4
「何があった!? 尋常の止まり方じゃないぞ!」
風防を一気にスライドさせて開き、
少年整備兵は言葉を詰まらせたまま答えない。すると、少年整備兵に表情はみるみる崩れてゆく。
「軍曹殿がもし死んでしまったらどうしようと思い、軍曹殿の機体には、燃料ではなく水を入れました……軍曹殿に私は死んでほしくありません」
少年整備兵はそのまま泣き崩れてしまった。周囲の数人の少年整備兵もやはり泣いている。そこまで泣かれてしまうと、
「……臣民の衷情も、朕よくこれを知るしかれども、朕は時運のおもむく所、堪ヘ難きを堪へ、忍び難きを忍び、以て萬世のために太平を開かんと欲す……」
翌日の正午。
真空管ラジオから流れるノイズ混じりのニュースと詔書を、直立不動のまま聞いていた
――どうしようかな、これから。
緊張の糸が切れて呆然とした思考の中、
深い……深い安堵感に全身の隅々まで包まれた
――鞘の内を悟れぬ蛮勇が故に、娘さんを命の危機に遭わせたことを忘れるな。
「鞘の内の勝ちこそ、剣士にとって最上の勝ちである……帝国の鞘の内を悟れぬ蛮勇が故に、国敗れ民と戦友の命は空に消えたか……剣の道理そのものだな」
ふと、
「そうか、もう戦争は終わったんだから、自由に行けるかもな……
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