マシュマロストレンジャー

 千絃ちづるに言わせれば、私は「『病的な』甘いもの好き」らしい。病的なというのは、千絃が理解できない甘い食物しょくもつを好んでいるからだ。たとえば、みたらし団子だとか、ソルティチョコファッジ(少し塩をきかせた、甘しょっぱいチョコファッジ)だとか、それからマシュマロだとか。

 要するに、私に言わせれば、千絃は「幅広いにも程がある偏食家」なのだ。私がマシュマロを頬張っていたりすると、この世のものとも思えないものをみてしまったとでも言うような顔をする。そして、マシュマロのどこがそんなにおいしいの、とも。

「そんなの、ふにふに甘いだけじゃない」

「ふにふに甘いから好きなんじゃない」

「食べるなら、あっち行って食べて」

「千絃があっちに行けばいいじゃない」

 こういう時、私たちはお互いにひどく幼い。

「そうだ、冷蔵庫にねーマナからもらったロイズのチョコレート詰め合わせが入ってるよ」

「ホントにっ!? いつ来たの真和まさかずくん!」

「今日の昼、千絃が出かけてた時に」

「もー、連絡してくれればよかったのに!」

「だってマナがすぐ帰るって言ったから」

「そっかー、見てもいい?」

「いいよ、真ん中の段に入ってるから」

「うんっ」

 数秒後、冷蔵庫の方で、「わ――♡♡」という歓声が聞こえてきた。

「ねー嘉和かな、クルマロはあげるから、ナッティバーちょうだいよ」

 クルマロというのは、クルミとマシュマロが入ったミルクチョコのことで、ナッティバーというのは、数種類のナッツとパフが入ったチョコバーのことだ。

「えぇっ、やだ! あたしだってあれ好きだもん! ていうか千絃、ナッツ嫌いでしょ!?」

「ナッツは嫌いだけどナッティバーだけは好きなの!」

「なにそれ!?」

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かなとちづるの甘い生活 秋野 @sakiyuki

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