第10話 母の友人の助け
母の友人知人の多さは、息子の私から見ても驚くものがある。幼少の頃、学校から帰ると誰かしら母の客が居間にいたものだ。
今回の火事で歓談の場として多用されたその居間も燃え尽き、歓談の相手達は集会の場を失った。おそらく彼女達にとっても我が家の焼失は痛ましいものであっただろう。消火活動の最中に母の身を案じて駆けつけた人も多かったが、そこには通い慣れた場を悼む気持ちもあったと思われた。
母の友人たちの訪問は両親が借家に住み慣れつつある今日まで続いている。また、上毛新聞の誤報も母の友人によって母に知らされた。そして、その後母の友人達は自発的に上毛新聞へと抗議を行ってくれたというのは前述の通りである。
しかしながら、相手は地方といえども新聞社である。クレーム処理の人間は手慣れた様子で中々強かな対応をし、母の友人たちを煙に巻いていった。
母の友人の中でも最も交流のある一人も、この上毛新聞の対応に業を煮やし、次なる手段を母に提示した。仮にS氏としておくが、S氏の御姉妹が会社を経営しており、そのつてで司法書士に相談できることになったのである。
結果から言うと相談は上手くいった。知人ということも当然あるだろうが、やはり上毛新聞の二つの記事の矛盾があまりに酷かったのが一番の理由だろう。訴訟を任せることになり、司法書士への報酬は成功報酬からの支払いで大丈夫という運びになった。
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