第9話 弁護士との法律相談

 上毛新聞の無反応に近い対応に、母は抗議だけでは意味のないことを悟り、弁護士への相談を計画した。火事の被害もあり、経済面を考えると頼れるのは富岡市が実施している無料法律相談である。

 母は三月上旬に予約を取り、法律の専門家へ初めてこの報道被害を相談した。

「裁判しましょう」

 1月10日火事直後の記事と、2月13日の誤報の記事を読んだ弁護士は、即座にこの結論を導いた。勝訴する絶対の自信があったのか、母からの伝聞で詳細はわからないが、上毛新聞の二つの記事の矛盾を考えればそう考えるのが自然だろう。


 しかし、母は法律のプロのこのきっぱりとした反応に逆に委縮してしまったらしい。普通なら次にどれくらい費用がかかるのか聞き、高価ならば「家に帰って主人と相談します」とでも言って一度退散することを考えるだろうが、どうにもテンパってしまい、ここで「やめておきます」と引き下がったと言う。


 その場にいなかったものとしては、聞いていて何とももどかしい話である。

 

 弁護士は「一度上毛新聞に抗議して反応がないようでしたらまた来てください」と最後に言ってくれたらしいが、母は最大限こちらを気遣ったこの弁護士の発言を受け入れることはなかった。


 上記のように法律相談を有効利用出来なかった母であるが、上毛新聞に対しての抗議を諦めたわけではなかった。この後、正式な抗議文をしたため、内容証明を用いて上毛新聞社へと送付したのである。結果は当然のように無視された。

 

 こう見ると要領が良いとは言えない母の抗議活動であるが、この後、意外な所から救いの手が差し伸べられた。


 

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