そして、重なる星
終わりつつあるクリスマスの夜の様子を中継するニュースショーを、テレビが虚しく垂れ流す。
電子レンジが、冷凍ペペロンチーノが温たまったことを電子音で報らせる。
官営のアパートの効きの悪いエアコンを恨めしく思いながら、僕はドテラを羽織ってのそのそと遅い夕食の支度をする。
結局あの後、現場には警察と消防が大量に押し寄せて、僕は名刺の裏に自分の電話番号とメールアドレスを書いて、彼女に渡し、どさくさに紛れて逃すのが精一杯だった。
ガヤンスーツを焼失させたことを怒られるかと出頭した本部では、褒められこそしなかったものの緊急避難措置として認められ、簡単な書類の提出だけで大したペナルティーを課せられはしなかった。
コシガヤンのSDイラストが入ったコップに近所のスーパーのPBの麦茶を注ぎ、湯気を上げる熱々のパスタのパックをちょんちょんとつつくように開け、中身をパスタ皿に移す僕の脳みそが、手元の作業とは別の所で、勝手にぼんやりと今日あった出来事を再生する。
彼女は、無事に逃げられただろうか。
彼女とはもう、二度と会えないのだろうか。
終わり行くクリスマスの淋しさ、祭りの後の虚しさが、僕の胸を木枯らしのように吹き抜ける。
その時、パスタ皿の隣に置いていたスマホがメールの着信を告げた。
未登録のアドレスだった。
メールを開け、文面に目を走らせる。
瞬間、一生で一番にやけた顔をなんとか二枚目半に引き締めた僕は、華麗な動作でドテラを脱ぎ捨て、洋服掛けからジャケットをひったくると、ばたばたと部屋を飛び出した。
電気もエアコンもついたままの部屋に、ほかほかと湯気を立てる、出来立てのペペロンチーノを残して。
戦隊レッドと悪の女幹部 〜三つの星の物語〜 木船田ヒロマル @hiromaru712
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