第9話

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黒羽さんと付き合い始めて数日が経った。

彼から毎日のように連絡があり、放課後に数時間ほど会うような軽いデートを僕らは繰り返した。

思いのほか彼は誠実であり、体を求めるようなことはなく、そのおかげで女装だということはまだばれていない。

彼の誠実さは意外だった。

綺麗な容姿に加え、全くの偏見だが、あんなバーに何の躊躇いもなく入り、スキンヘッドの男には畏敬の念を抱かれているような男だから、女性に手を出すのは早いのではと勝手に警戒していた自分が恥ずかしいほどだ。


金曜日の放課後、僕はホームルームが終わると同時に猛ダッシュで教室を飛び出て、何とか西條たちに捕まることなく学校を去った。

そして駅に着くと、知り合いがいないのを確認してトイレでワンピースに着替えた。

当然ながら女の子の服など持っていないので、黒羽さんと会う時は、あの日西條達に押し付けられたワンピースを着るようにしている。

毎回同じ服を着てくるのは不自然であり、不潔極まりないが、かといって彼に会うためだけに女の子の服を買うのはお金がもったいない。

黒羽さんとは時機を見ていずれ別れる予定だ。

見目など気にする必要はない。

できれば彼から別れを切り出してほしいくらいだから、むしろ不潔な印象を与えるくらいがちょうどいいのかもしれない。


着替えが終わると、トイレ内に誰もいないことを確認して急いでトイレを出た。

学生服を入れた袋をロッカーに入れてから、黒羽さんと待ち合わせをしているカフェへ慣れないヒールの靴で向かった。

歩く度にワンピースの裾がふわりと、膝の上をくすぐる。

その柔らかな感触は、僕を苛むように羞恥心を煽った。

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