大図書館4

 少し進むと、何やら前方に動く影が見えます。それは少なくともリベルではなく、リベルティでもありません。遠すぎてはっきりとした大きさはわからないのですけど、通路の幅から察するに、背丈は60㎝ぐらい、だいたい私の半分より少し小さいぐらいです。手と足のようなものがあるのはわかりますが、どちらも短く、首はありません。見たことない生き物です。

 それは徐々にこちらに近づいてきて、私たちの足元を抜けて、私たちが来た方へ歩いていきました。首が無いと思ってたら胸の位置に顔があるんですね。結構かわいい顔をしています。動きも可愛い。

「なんでしょうねあれ」

「ゴーレムみたいなもんじゃないか?ついて行ってみよう」

 ゴーレム、これがゴーレムですか。迷宮の警備とかしているんでしょうかね。

 一応、この迷宮の中で初めて見つけた動くものなので、ついて行ってみることにしましょう。

「あれ、何をしてるんでしょう」

 歩いていたゴーレムが止まったのは、先ほど私たちが休憩していたあたり。丁度私が本を戻した棚の辺りを見ているようです。あ、腕が伸びて、本棚の本を出したり入れたりしてますね。もしかして、私が戻す順番を間違えてたから、それで修正しにきたのかな。

 なるほど、あのゴーレムは本の整理を担当しているゴーレムなんですね。どこかに戻っていくようなので、更について行ってみましょうか。


 見失った。ゴーレムを追いかけていたら、なんだか、本棚の雰囲気が変わり、収められている本も統一感を失い始めたなと思ってたら、突然数冊の本が襲い掛かってきたんです。この辺はたぶん、現世にある本の複製を収めた棚なのでしょうが、現世の方の希少本図書館の防犯用に設置された、侵入者撃退用の魔導書まで複製して収めてあるんですね。死ぬかと思った。なんとか魔導書は撒いたのですが、せっかく見つけたゴーレムは見失ってしまいました。

「どうします?」

「どうするもなにも、もう一度呼び出せばいいんじゃないのか?適当にこの辺の本を並び替えたりしてな」

 ファボスが適当に本を並び替えてどれだけ待っても、ゴーレムは再び現れることはなかった。

「なんででしょうね?ここの棚は順番とかないんでしょうか」

「歴史書ではないからだろうな」

「歴史書の棚以外は順番がどれだけ入れ替わってもゴーレムは現れない。でもわざわざ歴史書の棚まで戻るの面倒ですね。ていうか道も覚えてませんよ」

 魔導書に追いかけられたせいで、どうやって走り回ったかも全然覚えてません。

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