大図書館5

 とりあえず、やみくもに歩き回るよりも、何とかしてゴーレムを呼び出せる方法を考えなければならないのですよ。たぶんそれが今できる最善ってやつです。

 ファボスは暫く、本の順番を入れ替えたりしていたのですが、いつまで経ってもゴーレムが現れないからなのか、いつの間にやら普通に本を読んでいました。

「何してるんですか」

「何って、本を読んでいるんだ。なかなか興味深い」

 ファボスが読んでいる本のタイトルは「破壊の美学」。うん、破壊神ですからね。破壊のことを書いてある本が気になってしまうのは仕方ないことでしょう。でも

「今することですか」

「ここの本は今ここでしか読めないだろう」

 確かに、今は行き詰っているし、時間が無いわけでもない。私も息抜きに何か面白そうな本を探してみるのもアリだろうか。

 本を読んでいて動かないファボスを見失わない程度に歩き回って、面白そうな本を探していく。置いてあるジャンルはバラバラだが、シリーズになっている本はまとめて置いてあるようだ。シリーズをまとめて棚から抜き出し、床に積む、そして積んだ山の隣に座り、一番上に置いてある最初の巻を手に取り開く。この物語は科学という技術が発展した世界のお話なんですね。そういった異世界があるって話は聞いたことがあります。主人公の少年が銃という道具で魔法とは違う仕組みで動いている機械人形というものを狩っているシーンから始まりました。


 物語を読んでいたのですが、周りが何やらガタゴトと物音がしてきて集中できませんね。丁度いま、不死身だったらしい主人公が兄弟子の人にボッコボコにされてていい感じなんですから邪魔しないでくださいよ。

 気にせず読み続け一巻を読み終え、次の巻をと本の山に手を伸ばしたところ、いつの間にやら隣にあった本の山が消えている。どこへ行ったんでしょう。周りを見回すと、ゴーレムが、せっせと本を本棚に仕舞っていた。なるほど、本の並びは直さずとも、本が床に置かれていると戻しに来るんですか。一巻が結構いいところで終わって、続きが気になるところですが、仕方ありませんね。読み終わった一巻を本棚に戻し、一応タイトルを覚えておき、ファボスを呼んで、帰っていくゴーレムを追いかけることにする。

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