大図書館3

 これは、かなりまずいですよ。道具は使えない、迷宮を破壊することも不可能、更に迷宮は徐々に広がっていると来ました。リベルを見つけ出せる要素が皆無です。

 今回は諦めて、再度準備をしてから出直した方がいいでしょうかね?いや、しかし準備をするとなると一度現世に戻る必要がありますし、死神の道具を借りるにも、今私はファボスに攫われているということになっています。これは、帰っても道具が借りれない可能性がありますし、何より強制的に冥界へ送還されてしまう可能性もあります。

 こうなると、一度現世に戻って準備をし直すってのは現実的じゃないですね。何にせよ、今の私達はこのまま進むしかないんでしょう。


 図書館大迷宮に来て、数日が経ちました。

 実際は空も見えず、朝も夜もないので体感の時間なのですが、だいたい八日ぐらいでしょう。

 私たち死神は一応、実体はありますが実際の肉体というわけではないので、肉体的な疲労は少なく、何日迷い歩いても平気なのですが、狭い通路、同じ景色、相変わらず不明な目的地に私の精神力はごっそり削られていきます。

「休憩しましょう」

 何度目かわからない休憩を申し出て、通路に座り込む。そして、本棚から本を一冊抜き出し、パラパラとめくってみる。

 この本に記されている歴史はおおよそ七万三千年前の現世、私達がいた大陸の東側にある海の辺りの歴史のようです。書かれている内容としては、潮の流れの向きや、魚の数、個体毎の移動先、といった物の動きなどがものすごい細かく書かれていました。歴史というよりも単にデータの記録といった感じですね。

リベルの仕事ってこれ……?正直、これを世界中の分作っているとか、逃げ出したくなる気持ちもわかりますね。あと、リベルティの喋り方も何となく納得しました。この歴史書、意味を持った発言をする生物が喋ると、「誰が誰に言った」ということが詳しく記録されているので、これに慣れすぎたリベルティは自分の発言を誰に向けて言ったものなのかをはっきり宣言してしまう癖がついてしまったんですね。かわいそうに、リベルが一気に仕事を押し付けたばっかりに。

 何冊か読んで、適当に本棚に戻して休憩終わりです。さて、また出発しますか。

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