天界4

 さて、しばらくは情報が揃うまで使えそうな道具を見繕いますか。

 

 資料を眺めていると、家の前にあるポストに手紙が投函された音が聞こえてきました。

死神組織から何かの連絡ですね?なんでしょうか、こちらからは今、何も問い合わせていなかったと思うんですけど。

 連絡の内容は……。

「死神テロリカの殺害対象である、不死者リベルの殺害理由が消失したため、リベル殺害の任務を終了する。帰還準備ができしだい帰還するように」

 これは、もしかして私がリベルを殺す大義名分がなくなってしまったのではないですかね?

 いやいや、ちょっと待ってください?死神組織がリベルを殺す理由って確か、不死者だからではなく、リベルがそう望んだからだったはず。これはもしかして、天界に戻るにあたって、リベルが殺してくれという依頼を取り消したということでしょうか。もしかしなくてもそうでしょうけど、このままだと、本当にリベルを殺すことはできなくなってしまう。

 決意の書にもわざわざ書いたというのに、ここまで流れがリベルを殺せない方向へ向かうとなると…………。

もしやと思い、決意の書の書き込んだページを開く。

やっぱり、私の書いた、「私が殺すので無効」の一文には線が被せられていました。

やられましたね。今は冥界で管理しているとはいえ、決意の書を作ったのは書物の神と言われています。その書物の神がリベルな以上、好きなときに内容をいじることが出来るのでしょう。こうなってしまえば、決意の書は使えませんね。しかし、決意の書などに頼らずとも、私の決意は揺るぎませんからね。多少、運命の流れが殺せる方向からそれたとしても、関係ありませんよ。

 しかし、死神組織からの命令もなく、リベルを、原初神族を死神の私が殺したりしたらやっぱり問題になっちゃうんでしょうか。間違いなく問題になるだろうなぁ。

 うまい言い訳、もしくは大義名分でもできないだろうか。

 悩んでいると、家の前の広場からズドーンという聞き覚えのある何かがものすごい勢いで落下してきたような轟音が響いた。

 音を発生させた主を思い浮かべるよりも先に「リィイイイイイベェエルゥウウウウウウウウウ」というとんでもない大声、これは間違いありません、破壊神ファボスの再来です。実際は結構な頻度で来てはいるのですけど、普段はリベルを殺すために来ているのではなく、単にリベルとお酒を飲みに来たりしていたので平和でしたね。でも、この感じだと、そんな雰囲気ではなさそうな感じですね。

「出てこいリベル!!!!今日はお前を殺しに来たんだ!!!!」

「あいにく、リベルは今はここにはいませんよ」

 ファボスは殺気満々なのでアイギス・レプリカを構えながら私は表に出る。最近は慣れたのか、アイギス・レプリカを構えていれば殺気満々なファボスにも普通に話せるようになりました。

「なんだ、いないのか。いつ帰ってくるんだ?」

 リベルがいないことがわかるとファボスは殺気を消し、普通に話しかけてくる。こうなれば、私もアイギス・レプリカ構えずとも話しやすい。

「今は訳あって、天界にいるんですよ」

 かいつまんで事情を説明する。

「天界か……ちょいと遠いな」

 ファボスは何かを考えているようだが、人間離れしすぎた顔なので表情からは何を考えているのかは読み取れない。

「ふっふーん。いいことを思いついたぞ。これならば、お前にとっても都合がいいはずだ。協力しないか」

 何を考えているのかわからないと思っていたら、考えが纏まったファボスの口からとんでもない提案が飛び出してきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る