天界5
「貴様はリベルを殺せる大義名分が欲しい、俺はリベルを殺すために天界へ行きたい。この二つを同時になんとかする妙案があるのだ」
「それはそれは?」
「それはだな、こうだ!」
ファボスは突然、私の胴を片手で掴みとる。ファボスの手はでかすぎて、私の胴を片手で掴めるのすごい怖い。これ、このまま少し力を加えられたら私、死んじゃうんじゃないですかね?
「ちょ、なんですか!何なんですか!」
「このまま、お前は住処に連れて帰る。そうすれば、お前は俺に隷属せざるを得まい。俺は世界を破壊するために神を殺す。お前は脅されて従わされていただけ。どうだ、完璧な計画だろう」
杜撰、の一言ですね。しかし、それしかないのも事実。仕方ありません、乗りますか。
「いいでしょう、その作戦で行きます。ただ、偵察に行ってもらってる人もいるので、書置きだけ残してもいいですか」
「俺の住処は魔界にあるんだが、そいつは来れるのか?」
「悪魔の人ですので」
「そうか、ならば俺の住処も知っているだろう。さっさと用意しろ」
ささっと、魔神ファボスの元にいるとだけ書き残しまた、その間もずっと、ファボスに胴をつかまれたままです。
「準備ができたか、ならば行くぞ」
「ちょっと、この体勢のままなんですか?」と言いたいのですけど、ファボスが既に跳んでいるので、風圧で、喋るのもままならない。これ、もしかして死んじゃうのでは。滅茶苦茶怖いんですけど、ファボスの行動一個一個が私の命を脅かしているんですけど。
ていうか、なんで魔界へ行くのにこんな大ジャンプしたんでしょう。前にアクシーさんが連れて行ってくれた時は、魔法陣を使って魔界に転送されたのになんでわざわざ、こんな飛んでいくんでしょう。それも風圧で聞けない。
雲より高いところまで跳んだあたりで、空に魔法陣があることに気づいた。なるほど?それでいつも空から降ってくるように現れていたわけですね。理由はわからないですけど。
そのまま、魔法陣に突っ込むと景色が消え、闇の中、闇を抜けると、空気が変わり、魔界の空の上、ちょっと待ってください?これもしかして、ここから落下するんですか?空から見た魔界はなんだか、下で歩き回ってる時と比べて、幻想的です。が、この景色の中高速で落下していくので景色を楽しんでいる余裕はありません。死ぬことも覚悟する必要すらあります。そのまま、思考が渦を巻いてパニックになっていると、だんだんと地面が近づいてきました。私は恐怖から目を思いっきりつむり、いつ衝撃が来てもいいように体を縮めていましたが、いつまでたっても衝撃は来ません。なのになぜか地面に足がついた感覚が来たので、恐る恐る目を開けると、既にクレーターのど真ん中、着地しているじゃないですか。
「へ?なんで私無事なの?」
「そりゃあ、お前みたいな小娘が怪我しないよう、細心の注意を払って着地したからだろ」
「そういう気づかいできるタイプだったんですね。見直しましたよ」
「そいつはどうも」
ファボスの住処は、一言で表現するならば、砦ですね。しかし、ところどころ粉砕されているような?
「俺の住処が気になるか?こいつはな、昔はある悪魔の砦だったんだが、この世界に来たばかりだった俺の住処にさせてもらったのさ」
「壊して奪った、ってことですかね」
「そういうな、最初はおとなしく暫く泊まらせてくれと頼んだんだぞ?それを断って攻撃してきたのは悪魔の方だ」
それで壊して奪ったと、なるほど正当防衛というやつですね。
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