破壊神さりて

 ファボスが帰って間もない時、私は気になることがあって決意の書を開いていた。

 気になることとはもちろん、三万年前にリベルが決意の書を持っていたということである。この手の魔導書は様々な人の手を渡り歩くのが常なので、別に一時期リベルの手元にあったことは何ら不思議ではないのかもしれないが、持っていたということは、何かを書き込んだ可能性があるということだ。もし、何かを書き込んだのならば見てみたい、とこうして決意の書をパラパラとめくっているというわけだ。

 さすが決意の書、いろいろな人のいろいろな決意が載っている、「大金持ちになる」「異性にもてもてになる」といった、欲に塗れた内容から、「あの子の病気を治すことができる医者になる」といった、純粋な願いからくる決意もありました。

 だいぶ前の方のページまで来たところでやっと、リベルの字らしき決意の文を見つけました。


「僕は死ぬわけにはいかない」


 ……どうやら、決意の書も彼の不死に一役買っていたようです。私はペンを持ち、リベルの決意の文を線で消してやりました。そして、ちょっと思いついたことを書きます。


消された「僕は死ぬわけにはいかない」の横に、「私が殺すので無効」と書いてやりました。これで私の決意も完了、何が何でも私がリベルを殺すことになります。

 そっと決意の書を閉じ、冥界の倉庫へと返しました。

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