遭遇3

 この指令書、上司の方は相当に私を軽く見ているようです。私は自分を落ちこぼれと表現するのに足る死神であると理解しているつもりですが、この物言いでは研修という建前の元、殺せるようになるまでの時間稼ぎを他の仕事を任せるに至らない新人に任せ、運良く殺すことができれば万々歳ってところでしょう。これは、何が何でも不死者リベルをぶっ殺してやりたくなってきましたね。早く憤りをぶつけたいですね、まだ帰ってこないのかな。

「なにやら楽しそうな顔をしておりますが、その手紙に何やら良いことでも書いてありましたか?」

 資料を読んでの怒り顔を抑えるために不自然な笑顔になってしまっていたようで、村長さんが訝し気に声をかけてくる。

「いえ、不死者リベルを殺すことの難しさを再確認したらちょっと、楽しくなっちゃいまして」馬鹿にされたくないので余裕たっぷりなことを言いますが、実際はそのようなことはないです。当たり前です、数多くの不死者を相手取った歴戦の猛者ならばともかく、私はこれが初仕事の新人だ、相手が強くて楽しみだなどということがあるはずがない。

「そうですか。しかしリベルさん遅いですねぇ。そろそろ日が暮れてしまいますし、先にテロリカさんのお部屋の方へ案内しましょうか」

 やっぱり、私はここに住むことになっているようです。確かにすぐにリベルを殺せないのであれば、こちらの世界で生活するところが必要になるのは道理、聞いたことがなくても実際にそうなっているのだし、用意してもらえるのであれば自分で探す手間が省けるというものだ。

 ついてきてくださいと村長の案内先導で村長の屋敷を出て、村のはずれの森へ向かう、そこには立派な一軒家があった。あったけど、この家……どう見ても冥界にある私の自宅、そのものなんだけど、どういうこと?

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