10枚目 不明瞭



「…………意外と悪くない。」

無口なフラワーが自らの感想を言い放つ。

「さて、勝負といくでござる!」

「…………先手必勝!」

「うわっ!」

フラワーの突撃にハリモトがバランスを崩す。

「起爆札!」

ハリモトは即座に起爆する札を投げた。ハリモトら陰陽師は札をいかに操るかという技量が問われるが、それを扱いこなせる彼らはサポートの面では最強とも言えるだろう。ハリモトは一度に4種類の札を操る。今回持ってきたのは敵に貼り付いて爆発する起爆札、張り付いた場所めがけて大きな岩を落とし攻撃する岩石札、単体での防御能力こそ低いが多重に貼ることでかなり固い防御結界を張る結界札、札を貼った相手を治癒札の4つだ。しかし、彼の能力はこの札から外れたところにある。

が、相手は格闘のスペシャリスト。この程度、回避は簡単だ。つまり簡単に回避できるが、その事に疑問を抱くフラワー。

「ほいっ!」

「何!?」

その声と同時に札が投げられた。投げられた札はその固いガードの手前で曲がり、フラワーの周囲を回ってフラワーの背中に張り付き、爆発した!



「さて、拙者の能力が何か、まだ分からないでござるか?」

恐らく目の前の陰陽師の能力はその姿からも想像できる、札の場所を自在に操る能力。これは厄介な事になりそうだ、そう顔に書いてあるフラワーを見たハリモトはにやついた。

「風神拳ッ!」

フラワーは間合いを一気に詰め風を帯びた拳でハリモトに殴りにかかる。

「!?」

「やはり、風の能力でござるか。拙者の能力との相性は…………よくも悪くもございませぬ。」

ハリモトの言うとおり、フラワーの能力は自らの格闘技に風を乗せる能力だ。そして今度は何故か後ろからその声が聞こえる。


「岩石札!」

ハリモトは起爆する札ではなくあえて風属性に不利な地属性の札を使う。

フラワー「風神波動拳!」

それを風の波動でふき飛ばしたフラワー。紙を操る能力と風を操る能力なら紙を飛ばせる風のほうが有利。つまりは自らのほうが有利、と考えていた。しかしハリモトにはその波動どころか岩石札すらも当たらない。



「岩石札!」

「風神旋風脚!はあああああああああああああっ」

ハリモトが懐から投げた5枚の岩石札を回転蹴りに乗せた風で飛ばすフラワー。しかし…………

「ぎゃあああああああああああ」

フラワーに岩の塊が多数ぶつかる。フラワーはその場に倒れこんだ。

「これで拙者の能力はわかるまい。完全勝利でござる!」

フラワーにとって、この勝負は屈辱的な敗北といえるだろう。自らの攻撃を防げるであろう能力を持っているわけでもなく、ただ全ての攻撃を避けられ、終いにはわけも分からず自らの技で属性相性が悪い地属性攻撃を引き寄せ自滅したのだ。しかも相手はまだ余力を残しているという。陰陽師は岩石札を屋上から落とし、その足場を元に降りていった。

時は少し前、グラウンドではバンダナ男とマスク男が火花を散らしていた。


「イグル召喚ッ!」

「ミスリルッ!」

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