9枚目 【Illusion】VS【PowerShift】
「オラオラオラオラァ!」
「【PowerShift】『守』ッ!」
彼らのフィールドの中心で理典の隼の急降下よりも早く、重機よりも重いラッシュを能力で防ぐヘルプタン。彼の能力は自分の身体の質を「
「『攻』なんだなッ!」
ヘルプタンはどこからともなく出した斧を持ち、豪快に回転する。
「おっと!」
理典は反応し回避。そして体育倉庫に逃げる。
「待つんだな!『速』だなッ!」
ヘルプタンはすぐさま攻撃をやめ理典を追いかけるが、誰もいない。
「…………どこなんだな!探すんだな!…………と思ったけどめんどくさい、『攻』、大回転なんだなッ!」
ヘルプタンの斧が彼を中心に回転する。その攻撃は周囲の物質をそのめんどくさがりな性格とは裏腹に細かく切り裂いていく。
「メンタルワールド!」
「…………ウッ!」
それは一瞬の出来事だった。ヘルプタンの顔にあるスクリーンに光の速さで現れ、そしてすぐに消えていった理典。かと思うと次の瞬間には直接理典を頭痛として感じる事になる。
……ここはヘルプタンの精神世界。紅崎がレリシュと対面したのもこの精神世界と呼ばれる場所だ。が、その風景は紅崎のそれとは確実に違っていた。それこそ、三途の川のようなものが出ていた紅崎に対し、ヘルプタンの精神世界は草原、そしてそこにぽつりと置かれた本棚。
「ここが精神世界…………初めて来るな。」
彼自身も初めて入ってきた世界。しかし何故か紅崎が所持していた能力リストによってその能力の詳細を知っている。
「何をしてるんだ!?」
「俺は何かに入ることができる能力者、サシの勝負に向いてないんだが今回はお前が馬鹿だったから簡単にここまで入れたぜ!」
「…………馬鹿とはなんなんだな!」
慌てふためくヘルプタンにさらに挑発をかける理典。そして彼が向かったのは本棚。
「えっと、フラワーの能力…………なるほど、攻撃も補助もこなせそうだな。フィアは…………この能力はえげつないな。」
そう、本棚とはつまりヘルプタンの記憶を表していた。
「なんだな!?強いんだな!」
「…………ヘルプタンの弱みは…………」
場所は戻って体育倉庫、一人でしゃがみ込むヘルプタン。
UOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO
ヘルプタンによる象のごとき咆哮。
「いいとこだったのに…………」
理典は何か重要な情報をみようとした瞬間に
「だが…………その能力、そう長くはつかえないようだな!」
「あぁ…………よくわかったな。」
「そらっ!」
理典はヘルプタンの能力で気絶させられた。
理典は敗北こそしたものの、相手の能力などの情報を手に入れる事が出来た。逆にいうと、欲張ったが故に自滅した、とも言えるだろう。その代償として、敵の情報を今戦っている仲間たちには伝える事が出来ない。が、今後戦うことがあれば敵が未だ使っていない能力の真髄を伝える事くらいは出来るであろう。
「じゃあ次いくんだな!」
一方、情報を奪われたものの派手な攻め込みで勝利した巨獣は足早に牙狼の元へと向かう。
一方、学校屋上に逃げ込んだハリモトを追いかけていたのはあの無口な男。
「…………」
追い詰めた、とばかりにハリモトに近づくフラワー。それに対し、おびき寄せたかのように余裕を見せるハリモト。その姿は薄汚れたものではなく、しっかりと着込まれた正装であった。
「逃げるのもここまででごさる!」
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