5枚目 μ-tant戦その後

「マジか、お前らそんな能力持ってたのかよ!」

保健室でサボっていたベンジャミンがまず大声を上げている。

「…………ってか!どうして俺を置いて行ったんだよ!」

能力持ちなのに置いていかれ、さらには雑用をさせられた理典がさらに怒鳴り声を散らす。

「今回戦ったのは廊下だよね?廊下みたいな場所での戦闘だと学校側に被害が大きく出ると思ったんだ。」

と、勉強を教えるかのように理由を言うダイヤ。

「それにバカな怪我人を運ぶのにお前の能力と怪力は便利だからな。」

「ちょっと!そこまで計算したの僕なんだけど…………先生が止めにくる事は想像できたからね。その先生を気絶させるかもしれない僕達が運ぶのはおかしいし。」

「あーなるほどなるほど。確かに俺の能力は狭い上に何もない場所には向いてないな。」

と、理典は納得する。逆に言うと彼は広い場所、もしくは物が多い場所での戦いのほうが得意なのだ。

「ちょっとトイレいってくるわ!」

変なタイミングでトイレに行こうとするベンジャミン。彼の行動は紅崎たちにもイマイチ読めない。

「理典の能力ってなにかなー?」

「あー、それはまたあとでな!」

リーフは理典の能力に興味津々のようだ。が、他のメンバーからするとそれよりも気になるのは……

「それよりも…………まさかリーフも能力を持っていたとはね!」

「あー、ついにバレちゃったか。うん。そうだよ。」

リーフは能力者である事を誰にも言わないできた。家族にも友人にもだ。

「それより、怪物がミュータントの力と言っていたんだけど…………」

と、ダイヤが言ったその時、

「クレサキ、ダイヤ、リーフ。ちょっとこっちに来なさい」

「…………仕方ないか。その話はまた後だ。」

ここから延々と教師の愚痴を聞くことになるがそれは別のお話。





「あれ?ここはどこだ?」

「俺たちは一体…………?」

先ほどダイヤとリーフによって倒された2人が目を覚ました。彼らは暫くふらついてから気力の感じられない顔つきで何処かへ去っていった。

 

「…………とりあえず今回も記憶は抹消されたようだな。実験は成功か。」

そう言ったのは身長2mはあるであろう竜の怪物。

「そのようだな。ファフニアス。」

それに対して相づちを打つのは異様に大きな甲羅を背負う亀の怪物。

「まぁな。」

「…………」

さっき紅崎に不意打ちをかけた男がローブを纏っている。

「だっはっは、よくやった新参者!」

というのはかなりごつい虎の怪物のものだ。

「しかし…………クレサキか。俺の不意打ちに反応する上で気絶寸前に周囲のミュータント化を解除するとはな…………」

「ガルラはしばらく変身できないか。やむを得ん。暫くは俺たちだけで対処するとしよう。」

「悪いな。」




放課後、学校


「あーたっぷりと搾られたな。」

「流石にヴォケはまずかったね。」

「私達まで連帯責任で怒られるとは思わなかったよ。」

紅崎がこぼした愚痴にダイヤとリーフが不機嫌そうに言い返す。

「あーあー、今日は早く帰ってねるぜ!」

もっとも、雑用の仕事をした上で待たされた理典は彼ら以上に不機嫌だったのだが。

「じゃあ今は解散するか。」

紅崎は理典を気遣ってかそう言い、一同は解散することになった。

「じゃーな!」

ベンジャミンが動こうとした時…………

「っと、リーフとベンジャミンはちょっと家に来な。」

と、紅崎が不敵の笑顔を浮かべてそう言う。

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