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「咲、じゃあね」


「うん」




どうせ私と別れたあと、


いつものように「やっぱ咲おかしいよね」と、嘲笑っているのだろう。


人の顔色を伺うことが得意になった。



今まで私は友達とうまく付き合って、生活することに一生懸命だった。

だけど今は違う。


どうやって“工藤咲”を無くそうか必死に模索しているところだ。


そのためには、私は、以前までの私を捨てる必要がある。


私は、彼女らに、工藤咲の存在を忘れてほしいと願っている。




帰路につく。


右を見ても、左を見ても、

かつて私が友達と寄り道したところばかりだ。


胸をさする。


こんなものがなければ。

そう思わなくなったのは、いつからだろうか。





汗ばむ季節となった。


学校にいれば居心地も悪い。

一言も発さずに学校生活を終える日もあった。


暑い。暑苦しい。


どうしてあんなにも輝いた日々を、何の悩みもなく送ることができるのだろう。


かつての工藤咲に聞いてみたいものだ。



電車を乗り継いで1時間。


明るいうちからじゃないと不気味でこの森に入ろうとは思えないから、


“大抵の人”は、午後3時から4時くらいの間に、ここに戻る。





中を少し歩くと、塀に囲まれた居住施設へと辿り着く。


外観も、中も、殺風景そのものだ。





カバンからカードを取り出し、

エントランスのカードセンサーにカードをかざす。


402号室。

エレベーターで、4階へと上がる。


いつも部屋の前にいるこの部屋の管理人、佐藤さんに会釈する。


ドアを開けると、イヤホンを耳に突っ込んで勉強する男と、

ポテトチップスを片手でつまみながら、胡座かいてテレビを見る女がいた。



トイレに行こうとすれば、また違う男とすれ違い、

トイレにたどり着けば、床に座り込んでいる女がいた。









私はこの4人と共に過ごしている。

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