第2話 白い鳩

 コックピットに礼を言った古川が、大きく開かれた機体後部に向かうと、既に最後のコンテナが、ゆるい下り坂のように延びたスロープを下り終えるところだった。

 設計が古いのにもかかわらず、低い地上高と、尾部が左右に開くランプ扉に、貨物室床から地上へ伸びるスロープを設けたC-130輸送機の特徴は、そのまま現代の輸送機のスタンダードとなっている。

「Good Luck!」

 古川の肩を軽く叩きながら、駆け出したアメリカ兵が、そのコンテナの隣をすりぬけるようにして次々と外へ出ていく。

 機外の陽光を受けた彼らの茶色とベージュを基調にしたはずの砂漠迷彩が眩しく見え、砂漠の陽の強さを実感させる。

「カンザバルへようこそ。」

 コンテナに続いてランプから降り立った古川に日焼けした顎髭(あごひげ)の男が声を掛けた。大きく明朗な日本語は、不釣り合いな景色の中でも懐かしさを感じる。

「カンザバル派遣隊司令、佐々木です。遠いところ御苦労様です。」

 差し出された手を握る古川は、その力強さと日に焼けて黒い外見に比べて意外に柔らかい感触にその人の包容力を感じた。

「お世話になります。古川です。」

「先生の本は、何冊か読ませて頂きました。ここで見たこと、聞いたこと、何でも書いてください。さ、こちらへ。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 軽く頭を下げた古川を、案内して歩き出した佐々木は、思い出したように立ち止まった。

「あ、もし本にした時には、私にも1冊送ってください。サイン付きでね。」

 屈託のない笑顔に久々の戦場という緊張がほぐれる。

 集団的自衛権の容認以降、初の海外派遣となったこの地に対する取材要請は殺到していたが、政府は戦場での取材経験を始め、様々な制限を設けて渡航を拒否していた。マスコミの批判に言葉を濁してしているが、要するにこれまで以上に危険、ということだ。派遣先についても「戦場」という言葉こそ使わないが、一方で「安全」という言葉も聞かない。そんな中で、古川は審査をクリアして派遣記者第1号となったのであった。

 そりゃあ緊張もするだろう。しかしこの司令は、さすがだ。緊張しているのを見抜き、しかも瞬時に緊張を解いてくれる。

「はい。もちろんです。」

 古川は、満面の笑みで応えると、テレビで見ていた自衛隊提供のニュース映像の印象とは違い、これといって特徴の無い中肉中背の佐々木の迷彩服の背中に続いた。

 防暑服4型改と呼ばれているその迷彩服は、猛暑の中でも行動しやすいように通気性のよい素材を使用し、生地も薄くしている。また、日の丸のパッチも取り付け可能となっている点までは従来の防暑服4型と同じだが、基本的に国内の部隊で使用されている緑を基調とした「砂漠なのに緑っぽい」従来型に対して、防暑服4型改は、米軍のような「本気」の砂漠仕様の迷彩になっていた。

 これは、2003年にイラクに復興支援で派遣した際は、治安維持をメインとする他国軍に対して日本は「復興支援に来た」という意思表示を明確にできること、他国軍と間違えられて攻撃されることを防ぐことを目的に、あえてイラクの砂漠では迷彩の用をなさない「緑っぽい」迷彩を使用していたのとは対照的な事だった。つまり集団的自衛権行使容認により、今後は自衛隊も治安維持活動を含めて他国軍と共に武力を伴う活動を行うこと明確に示唆しているといえる。確かに武力行使を伴う活動中に自衛隊だけ目立ってしまっては他国軍にとっては迷惑だ。このような戦場での迷惑行為は、即人命の損失に繋がる。今後、戦闘状態を覚悟した自衛隊としてもプライドがある。

「目立つ迷彩服で来やがって、日本人は戦場を知らない。パーティーじゃないんだぞ。」

 といった言葉を浴びせられ他国から冷たい目で見られることはもうない。

 それでも、この土地の風習に合わせて顎髭(あごひげ)を生やす佐々木司令に、「現地の理解を得ながら活動したい。」という思いが、平和維持活動や復興支援など海外派遣で脈々と受け継がれ、今や自衛隊の文化として定着しているであろうことを古川は感慨深げに思いながら、その人懐こくもみえる背中を追う。

 汗ひとつない佐々木の背中と違って、自分の背中にじっとりと汗が滲んでいるのを感じていた。彼の身体のように慣れて行くんだな、この身体も、そして、この迷彩の色もいつしか国民の目には普通に映り、駆け付け警護や治安維持などで相手に向かって武器を構える自衛官をニュースで見ても何も感じなくなる。そう慣れて行くんだ。きっと、それはもはや遠い未来のことではない。

 それが今迫る現実だ。

 佐々木に続いて司令部の入り口に足を踏み入れる前に、古川は駐機場を振り向く。

 それにしても、、、よくここまで揃えたもんだな。

 古川は眩しそうに眉間に皺を寄せながら自分をここに運んでくれたC−130Hを見つめた。その垂直尾翼には、新設されたばかりの航空自衛隊初の即応部隊である第10航空団所属機共通の白い鳩の部隊マークが描かれていた。


 集団的自衛権の行使容認により、任務の幅が広がることを見越した政府は防衛省・自衛隊との調整を重ね、海外派遣や、周辺有事に即応できる機動性と、補給から整備、戦闘まで単独で行動可能な自己完結型の専任部隊を陸・海・空でそれぞれ設けることとした。これにより急遽防衛計画が見直され「主体的防衛大綱」として新たに定められることとなった。

 これに伴い航空自衛隊では、即応専門の航空団を第10航空団として新設した。この航空団には、対航空機から対地・対艦攻撃まで各種戦闘を担当する戦闘機部隊2個、脱出したパイロットの救難や軽輸送を任務とするヘリコプターと観測機からなる救難部隊1個、そして物資・兵員輸送を主任務とするC-130H輸送機で構成された輸送飛行隊1個そして整備、事務、糧食、対空警戒部隊などの地上支援部門からなる。これまでは国内を地域で分担して防空を担当する航空団と用途別の航空団が設けられていたが、この第10航空団は、各種飛行隊と地上支援部隊を指揮下に置き、すべての任務に対応できる初のミニ空軍とでもいうべき組織となった。

 武元達が所属する第471飛行隊は、この第10航空団に所属しており、第10航空団に最初に配備が完了した部隊である。その他の部隊はまだ国内で編成中である。最初に輸送機部隊が配備されたのは、その任務が最も海外で必要とされていたことや、従来の海外派遣活動で経験があったから、といった運用面での事情もあるが、何よりも、C-2輸送機の配備により余剰となったC-130H輸送機を第10航空団に回すことが出来たことが大きい、この背景には廃棄するはずだったC-1輸送機に臨時予算を使って寿命延長改修を行い、C-130Hに置き換え予定だったC-1飛行隊の機種改変延期がある。

 最も困難を極めたのは戦闘機部隊と第10航空団の基地問題である。

 戦闘機については「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」で従来よりも1個飛行隊多い戦闘機部隊13個と定められていた枠がさらに拡大され、戦闘機部隊14個を配備することとなった。一挙に2個飛行隊の増加となったが制服組としては、手放しで喜び勇んでいる訳にもいかなかった。即応性を求められているという任務の性質と、早急に世界での新しい立ち位置を確立したい内閣の思惑があり、至急2個飛行隊を編成することを要求された。第10航空団の任務の性質上、対空・対地・対艦戦闘が可能な航空機が求められる。これにはF-2とF-4EJ改が適しているが、F-4戦闘機は、ファントム2と呼ばれシリーズ全体で5,000機以上が生産され、かつて西側のベストセラー戦闘機と呼ばれ各地で活躍していたが、初飛行から50年以上が経過し、今は退役が進み、使用しているのは日本、韓国など数カ国に過ぎない。それでも使われ続けているのは、現代でも速度、航続距離、武器の搭載量で新鋭機に引けをとらないからであり、日本やイスラエル、トルコなどでは時代遅れとなった電子機器や装備を新たにした改良を施し、俗に言う「スーパーファントム」として運用してきた経緯がある。ちなみに日本ではF-4EJにF-16用のレーダーの改造型APG-66Jを搭載、F-15Jの誘導指令装置やF-2と同じ国産対艦ミサイルをの搭載能力を付与した他、様々な近代化を施しF-4EJ改に進化させたが、寄せる月日には勝てず機体自体の老朽化もあり、F-35と置き換え予定であることは、ニュースや新聞で世間に広く知れ渡っている。

 まだまだ使えると考えている人々も多い中で、一般に知られているFー4EJ 改は、退役間近の旧式戦闘機なのである。これを海外派遣に出すのはどうか、という意見が政府でも多数を占めたのは言うまでもなかった。しかもF-4は復座型、つまり前席、後席のある2人乗りの戦闘機であり、前席が操縦を担当し、後席は各種兵装や航法、レーダーを担当する。単に飛行するだけならば、前席の1人だけで可能だが、戦闘機としての能力を発揮するためには後席も欠くことはできない。前席、後席ともパイロットの資格を持つ隊員で構成されているF-4EJ改は、1人乗りの単座型戦闘機F-2Aの2倍の要員を必要とする。

 こうした理由で、第10航空団にはF-2を配備することになったが、そもそも対地・対艦攻撃を任務の特徴としていたF-2戦闘機、どこからどう見ても戦闘爆撃機や戦闘攻撃機だが、何に配慮してか数年前までは遠慮がちに「支援戦闘機」と呼ばれていたこのジャンルの飛行隊は3つしかない。このため2飛行隊分を追加で生産することとなったが、F-2の生産は、2011年9月に最終号機を納入して終了しているので、生産ラインを再度整備しなおすためには少なくとも半年を要する。さらにFー2製造に使用する多種多様な部品の納期まで含めると、さらに時間を要する。また2個飛行隊40機という調達機数の多さがこの問題に拍車を掛けた。そもそも戦闘機のように1機100億円前後の高額な支出を伴う装備は、数年を掛けて計画的に配備していくのが常である。しかも年度あたり数機、多くても10機程度である。

このような状況では少なくとも5年は掛かるという防衛省や自衛隊の見積もりに業を煮やすした内閣は、Fー2開発のベースとなった機体で、多くの国で多数が使用されているアメリカ製のFー16戦闘機を中古で掻き集めようというした。

パイロットや整備員などの要員や設備はFー2を使っているのだからFー16も飛ばせるだろう。という政府の提案を慌てて拒否した。

そもそも部隊の増設は機体があればいい、という金で解決できる問題ではないのだ。部隊を増やすということは、要員を増やすということだというのを政府は理解していない。パイロットや整備員は養成するものであって、すぐに増やせるものではない。

そんな連中が大事な集団的自衛権について変革を起こしたことへの危うさに嘆く幕僚が多いことを危惧した防衛省閣僚は、このような政府案があったことを口外しないように箝口令(かんこうれい)を敷いた。こんなことがマスコミに知れたら軍国主義化として叩かれるだけでなく、その用兵に対する無知さを評論家はもとより、野党から批判されることは火を見るより明らかだからだ。

このような経緯を経て自衛隊は代案として現有のFー2飛行隊3個のうち2個を第10航空団に配備することを提案した。その提案は実行部隊の編成を急ぐ政府にとっては朗報だったが、前回の提案の反省もあって防衛官僚に釘を刺されていた内閣は、この朗報に、はしゃぐことは控えた。防衛官僚は、2個飛行隊を第10航空団に転属させることで空く防空の穴をどう塞ぐかを、慎重に検討すべきだ。と、航空幕僚長から聞いた言葉をそのまま伝えた。

この言葉に危機感を認識した政府は、5ヶ年計画でFー2飛行隊を2個新設することを条件として受け入れる代わりに、新たな飛行隊が配備されるまでの間は航空自衛隊が提案した「自らが粉骨砕身しなければならない苦肉の策」を実行してもらうことで合意した。

その航空自衛隊の苦肉の策とは、防空の他に対地・対艦任務もこなすFー2飛行隊を2個、第10飛行隊に「差し出す」代わりに旧式だが防空・対地・対艦攻撃能力を持つFー4EJ 改飛行隊2個をFー2の穴埋めにあてるというものだった。第10飛行隊に「差し出す」Fー2飛行隊は青森県 三沢基地の第3航空団所属の第3飛行隊及び第8飛行隊とした。福岡県 築城基地の第8航空団に配備している第6飛行隊のFー2は中国、北朝鮮などの動向に配慮して、対象とはしなかった。

現在航空自衛隊のFー4EJ 改飛行隊は第301飛行隊と第302飛行隊の2個飛行隊のみである、よって、その全てをFー2の代打として青森県三沢基地のFー2飛行隊と交代させることになる。これは、北方を軽視している訳ではなく北海道の千歳基地にはFー15Jを2個飛行隊配備していることを防空の担保としていることもある、また、Fー1戦闘機からFー2戦闘機に移行する際の穴埋めとして一時的にFー4EJ 改を配備していた時期があり前代未聞という状況ではなかった。しかし戦力の減少は避けることができず、それを敢えてやるということは苦渋の決断ではある。ただし、苦渋の決断と彼らが呼んでいたのはこの程度のことではなかった。それは2個飛行隊が抜けたことによる防空の穴の埋めかた、である。

この穴埋めは、単純には行かなかった。

「無いものは出せない。」

という至極真っ当な意見が多数を占める議論の中で、単に装備する機体の性能とパイロットの技能に目をつけたのは、パイロット畑出身の航空幕僚長、加藤健二空将だった。

 彼が目を付けたのは、新田原(にゅうたばる)基地に配備されている飛行教導群のFー15戦闘機と、百里基地に配備され偵察を任務としている第501飛行隊のRF-4EJだった。RF-4EJは、第501飛行隊がRF-86F偵察機の後継機として1974年12月から配備を開始したF-4戦闘機の偵察型RF-4E合計14機の事故や老朽化による減少を補うためにF-4EJ改への近代化改修の対象外だったF-4EJ計15機に偵察ポットを搭載するなどの改修を施した派生型である。RF-4Eは純粋な偵察型で、バルカン砲はもとよりミサイルも搭載できない完全非武装の航空機だった。これに対してもともと戦闘機であるF-4EJに偵察用の装備を追加したRF-4EJは、戦闘機としての装備をそのまま残しているため、バルカン砲を装備し、各種空対空ミサイルの運用が可能である。実際の訓練で赤外線誘導の空対空ミサイル「サイドワインダー」を搭載して飛行することも多い。元来、偵察機として撮影した情報を基地に持ち帰らなければ任務が達成できないこの部隊は、戦闘機に補足された場合は、それを振り切って逃げなければならない偵察機部隊は戦闘機顔負けの高機動飛行の技術を持つ。実際、戦闘機としては旧式となったF−4で最新鋭機からも逃れなければならない。彼らに手足のように操られたRF−4は、もはやF−4ファントム2の動きではない。古川は、百里基地で開催される航空祭や航空観閲式で、その迫力溢れるデモフライトを目にしている。その激しいフライトは、同じく百里を基地とする305飛行隊のF-15Jイーグルのデモフライトと比べても何ら遜色はない。

 そしてF-2の穴埋めをするもう1つの飛行隊である飛行教導群は、仮想敵機つまり、訓練での敵役を務める部隊で、全国各地の戦闘機部隊を相手に空中戦などの指導を行う。使用するのはF-15戦闘機であり、複座型であるF-15DJを多く保有する戦力としては技量・装備ともに超一流の部隊である。コブラの部隊マークを垂直尾翼に描き、茶色や紺、緑など、機体ごとに異なる濃い単色の幾何学模様の大柄の迷彩をまとったF-15は異様な迫力を放つ。

 持ってもあと3年か。。。

 半年前、輸送機部隊を除き、未だに編成を完了できない第10航空団の今後について加藤航空幕僚長に取材した時のことを思い起こした。

 これはオフレコで、、、

 と切り出した加藤航空幕僚長が、苦笑しながら語ったのは、その編成計画の裏事情だった。戦争にさえならなければ、多くの戦闘機は必要とならない。日常の領空侵犯措置、つまりスクランブル発進を行う機材とローテーションの機材、そしてパイロットがいれば事足りるが、日常的な技量維持・向上のための訓練も不可欠であり、偵察や仮想的役・指導といった本来の任務を軽んじることもできない。現状はどちらの部隊も精鋭揃いで訓練を減らしても本来の任務を安全に全うできる。しかし、当然ながらいつまでも同じパイロットを置いておくわけにはいかない、人はだれもが老いる。歳をとれば何らかの衰えが始まり、いずれ老いたパイロットは部隊を去る。その前に新たなパイロットに技術を伝承する。その技術継承の停滞に許容しうる限界が3年である。さらに輪を掛けるように老朽化したF-4部隊の限界も近い。

 集団的自衛権の行使容認こそは、閣議に付される法律案・政令案・条約案を審査する内閣法制局長を容認派に置き換え、連立与党を形成し、平和を党是のひとつとしている公民党の平和への不安を言葉巧みに払拭させて解釈変更に成功したが、それを実行するために新たな戦闘機を購入する予算は国会で審議される。内閣の解釈変更で、なかば強引に始まった集団的自衛権行使のために、高価なF-2戦闘機を40機も国会が承認するのだろうか。内閣が行った「抜け駆け」に対する反撃が始まるのはないか、、、

「政治の事なので興味はありませんが」

と前置きして締め括ったその話は、少なくとも3年以内に少しずつでもF-2が配備され始めなければ、日本の防空を全うできない。という国防を担うプロとしての責任感からくる純粋な悩みだった。


 日本という母国・自国民を守ることと、アメリカを中心とした同盟国に対する義理とも思える追従。両立が無理なら一体どちらが大切なのだろうか?

 古川が日本を離れる数日前に、第10航空団の基地が茨城県百里基地に決定し、F-2飛行隊の移動が始まった。

 三沢基地から移動してきた第3、第8飛行隊のF-2の垂直尾翼には目の前のC-130H輸送機と同じ白い鳩が描かれ、首都圏防空を担って百里基地に配備されていた部隊は、基地の広さの制約で偵察に加えて対領空侵犯措置を担うことになった第501飛行隊が入間基地に、F-15を装備する第305飛行隊は松島基地に移動した。そしてF-2部隊の穴埋めをするF-4EJ改を装備する第302飛行隊は青森県の三沢基地に移動を完了していた。


 あの時率直に感じた疑問、しかし、加藤空幕長には聞けなかった疑問が再び湧きだしてくる。時を急ぐあまり憲法改正という正攻法で国民へ真を問わずに、内閣による解釈変更のみで船出したこの政策。果たしてどこまで受け入れられるのだろうか。。。

 既に部隊は派遣されている。日本とは関係のないこんな地の果てで命を危険にさらして活動している。政策の遅れは現場の自衛官の命に直接関わる。政府は最悪の事態を想定して事を進めているのだろうか。。。

 それをこの目で見てやる。。。そして真実を伝える。何が良くて何が悪いのかを。。。何が起きても俺は無駄にはしない。たとえ目の前で誰かが銃弾に倒れても。。。

 表面が風化して崩れそうな乾いたコンクリート造りの司令部。お世辞にも綺麗とはいえないその入り口に向き直った古川は、佐々木に続いて建物に入った。

 空調で一気に汗が冷やされたからか、これからの取材への意気込みの高さからか、古川の背筋に寒気が走った。

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