王国暦五七六年九月十八日
(異様に四角い文字で)
九月十八日
快晴。基地制圧完了。少尉と名乗る奴がうざい。殴ったらやっと落ち着いた。疲れた。眠る。
二十三時就寝。
(文字の下にびらびらと長い模様がついている字で)
神聖暦八月十八日すなわち九月十八日
やっと我が剣が!我が盾が!この身に戻ってまいりました。
とはいえその剣は脆く、すぐに折れ去りそうな勢いです。
あああ黒き血糊を我が剣に浸し、一刻も早く偉大なる我らが英雄王の偉業を言祝ことほがねばならぬというのに!
正統なる第二十四代ナンス国王ナファールト陛下と我ら随行員の、この数日の怒涛のごとき急転直下、不遇なる陛下のご境遇のめくるめく変遷を、たった数十滴の黒き血糊で賄わねばならぬとは。
ファンランド王国屈指の大要塞の中だというのに、ここには何もありません。
敵が我々の襲来を察知して、物資をすべて海へ投げ捨てたのだとしか思えません。
ああ、もう剣の先が鈍ってまいりました。
黒き血糊をなんとしても探さねば。
しかし我が鋼の体力も、もはや本日はこれまで。
我が陛下が神剣レギスバルドを奮われ、私のシャリル様が神のごとき輝く御手で何百何千もの敵をなぎ倒すそのかたわらで、私ジョルジォ・ネイスは今こそわが北神流剣技を陛下にお見せする時と奮いたったのでございます。我が剣技に倒れ伏す敵や星の数のごとく、私は血しぶき散り咲く敵の中をただ無心に舞っておりましたが、しかしさすがに少々眩暈がしてまいりました。
今宵は血糊を求めて猛る我が身を抑え、心地よく疲労せし我が肉体を休めるといたしましょう。
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~深読みボクみん~
侍従長の剣:とても細く黒い液体に浸して使用する。どこかの国の宰相が普通の剣より強いと言ったらしい。北神流剣技またの名を「踊るペン先」を繰り出すのに必須なアイテム。
侍従長の盾:かなり分厚い。普通の盾の三倍の厚さがある。普段は肌身離さず上着の隠しに持っているのだが、剣と同様ここ数日没収されていた模様。
黒い血糊がびっしり付着している。
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