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今年の初頭から、新たに発足した光回線接続サービスに関する専用端末への登録業務に携わっている。
不明点は同じチームに属するSVに質すこともあるが、基本、作業中は無言である。広大なフロアにはキーボードを叩く打鍵音と、遠方より聞こえる社員らの声が
各デスクに電話はあるが、それに出るのを義務づけられた人は限られている。接客業や重労働が苦手で、単純作業の好きな私には居心地のいい、
黙々と登録業務に取り組んでいたある日、うちのチームのSVである女性に声をかけられた。
「銀行……の方から電話が来てるんで、出てください。内線の五番です」
このフロアに、私用で電話が入ってくることはまずない。SVは幾分当惑気味だったが、私はそれ以上に困惑していたはずだ。何よりその銀行というのが問題だった。銀行名は聞き覚えがある。
以前、カードローン契約の依頼をしていた銀行だ。単なる在籍確認であれば、わざわざ私に電話を回す必要はない。何故直接私に?
周囲の同僚が、それとなく耳を
「……はい、お電話代わりました」
それからの数分は、私にとって実に辛い時間だった。
相手の女性オペレーターは、こちらがカードローンの申請をした際の不明確な点を、在籍確認の序でに質問したかっただけらしい。がしかし、私は同僚たちが聞き耳を立てている中で、具体的な金額なり何なりを返答するのが本当に厳しいのだ。しどろもどろになりながらどうにか答えたつもりだったが、相手にも周りにも不審に思われたのは疑いえない。
休憩時間になり、半ば駆け足でロッカー室へ。今度は自身のスマホで銀行の問い合わせ番号に電話し、再度返答をした。
「さっきの電話、なんだったんですか?」
職場フロアに戻ると、早速隣と後ろの席の同僚が声を揃えて尋ねてきた。隣の背の低い男性は同じチームなのだが、私よりも後ろのメガネの男性と仲がいい。私は敢えてその仲間に入るのを避けていた。とにかく面倒臭い。独りでいたほうが気楽だし身軽だ。昼食も独りで定食屋で済ませているくらいだし。
さて、どうはぐらかせばいいものか。一瞬考え込んだが、私の
「在籍確認です。カードローンの審査で」
正直に答えた。二人の顔にやっぱりといった感じの表情が浮かんだ。
「それってここにもかけて来るんですか?」
メガネの左、私の斜め後ろの席に座る劇団員崩れの同僚が話に割り込んできた。
「派遣元だけじゃなくて?」
「みたいですね」
「でも、電話に出させるのはちょっとありえなくないすか?」
「はあ……そうですね」
返事こそしたものの、もうこんな
簡単な話だ。ありえないことが起きてしまった以上、それはありえるのだ。
ただそれだけの話だ。
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