The magic nightmare

ひざのうらはやお/新津意次

~reunion~

Prelude

 堕ちていく。


 君が、闇へと堕ちていくのを、ただ黙って見ていることしか出来なかった。


 追いかけようとすると、脚が痺れて動けないことに気付く。


 手を伸ばしても届かず、君は遠くへ、深淵へと堕ちていく。


「それ以上は、止めなさい」


 声が聞こえる。悪しき魔女の声だ。


 声を出そうにも、口すら開かなかった。


 君が遠くなる。

 それとともに意識も急に、どこかへ飛んでいった。


 僕は目を覚ました。


 心臓の動悸が激しい。

 呼吸を整えながら顔を洗って、煙草を吸った。


 何もかも忘れてしまいたかった。

 現実が信じられない。


 喪ったものは、あまりにも、そして予想した以上に大きかった。


 深淵。

 あの空間へ、僕も行きたい。


 そう思ったときには、財布を抱えて家を飛び出していた。

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