第3話 『結婚狂想曲』

 私の名前は、松武こうめ。この新興住宅地に住む、専業主婦です。


 私が住んでいるこの区には、月平均80世帯前後、年間1000世帯近くが転入し、人口も出生・死亡合わせ、毎月約100人ずつ増加し続けています。


 増加の理由は、区内に存在し、現在も開発を継続している5つの土地区画整理組合の、大規模な新興住宅地開発によるもの。


 特徴的なのが、世代別人口。生まれて間もない赤ちゃんから、100歳台の御長老さままで、幅広い年代の人々が共存する中、わずかですが、年齢が低くなるほど人口比率が高くなっています。





 新興住宅地では、若い子育て世帯や、新婚世帯も多く、それ故、出生率も高くなります。子供が増えれば、必然的に子供関連のサービスやビジネスが充実し、それにより子育ての環境が整い、更にそうした世帯が転入して来るのです。


 そうして、ここへ来た子供たちが成長し、やがて結婚適齢期を迎え、新たな世帯を作ります。親世帯の近くで、環境に恵まれたこの街を、新婚生活の地に選ぶ子世帯の方も多く、私の周囲でも、そんなおめでたいお話を耳にする機会も多々あります。


 最近では、ガーデニング仲間で、猫友でもある、ご近所の椎名さんの長女、亜美ちゃんがゴールインしたばかり。お式の形態は『人前式』というスタイルのもの。



「それって、『神前』の間違いとかじゃなくて?」


「『人前』なんですって。もう、今どきの子の考えることって、分からないわ~」



 そう言いながらも、愛娘の結婚に嬉しそうな椎名さん。


 ニュースなどで、お話には聞いたことがありました。新しい結婚式のスタイルで、教会や神社のように『神様の前』ではなく、『人間の前』で愛を誓うお式なのだそう。


 亜美ちゃんとお婿さんとは幼馴染みの同級生。椎名さん一家がこの街に引っ越してから、よく二人がデートをしていたという、車で10分くらいの場所にある、街のシンボルでもある高台の公園でお式を挙げたい、との希望でした。



「でね、もしよかったらなんだけど、お式に来て頂けると嬉しいの」


「勿論、喜んで行くわ~!」



 当日は日曜日で、お天気にも恵まれ、新郎新婦を祝福するような快晴。


 我が家は夫と二人で参加。同じように椎名さんにお声を掛けられたご近所の皆さんも、家族でご参加されていました。





 広い公園ですから、すぐに分かるか不安でしたが、各所にブライダル会社の関係者が誘導に当たり、指示された一番見晴らしの良い場所に行くと、小さな祭壇のように設えたテーブルと、それに続く赤い絨毯(バージンロード?)が敷かれ、たくさんの可愛いお花で飾られています。


 私たち参列者は、それらを囲むように思い思いの場所に立ち、ウェディングドレスと白いタキシードに身を包み、祭壇の前に進む新郎新婦を拍手で迎えました。


 神父さんや神主さんのような方はおられず、司会進行兼立会人のお友達、男女二人が正面に立ち、新郎新婦で声を合わせ、誓いの言葉を読み上げます。


 そして、立会人から、



「二人の結婚に、異議はありませんか?」



という問いかけに、何人ものお友達から、『異議あり!』の声。


 ああだこうだ、どうのこうのと、普通の結婚式なら、絶対にタブーな『浮気』『元カレ・元カノ』『離婚』のようなきわどい質問が出るわ、出るわ。その遣り取りもコミカルで、参列者から笑いが上がります。


 挙句、花嫁を強奪しようとした男を、花婿さんがやっつけるという、寸劇仕立ての演出まであり。ただ、強奪男の全身タイツに唐草模様のほっかむり姿に、参列者からは吹き出す人続出。


 他にも、新婦のお友達がおそろいの衣装を着けて、花嫁のフォローをしている様子は、公園のシチュエーションと相まって、まるで外国のガーデンウェディングのようで、とても素敵でした。


 そんなこんなのドタバタで、再度立会人から異議がないかの質問に、今度は全員が『異議なし!』の回答。


 二人は婚姻届けにサインをし、立会人の二人も証人としてサイン、それを参列者全員に掲げ、私たちは大きな拍手とともにそれを見届けました。


 そして、いよいよクライマックス。亜美ちゃんのお友達のお子さんでしょうか、天使の衣装を纏ったまだ2歳くらいの女の子が、新郎新婦の前に歩み寄り、小さな手にしっかりと抱えたリングピローを手渡します。


 天使から受け取った指輪を交換し、誓いのキスをする二人。ふき出したおびただしい数のシャボン玉が、周囲の緑を映しながら、陽の光にキラキラと輝き、幸せな二人を包む光景に、ここはいったい外国か、天国か? と錯覚するほど。


 再び会場は大きな拍手と歓声に包まれ、無事二人は夫婦となりました。感動のあまり、参列者の多くが涙していました。


 参列は自由でしたから、お式が終わるころには、参列者の数は最初の3倍以上になっていました。まったく見ず知らずの、通りすがりの方たちまでも、亜美ちゃんたちの結婚を祝福してくれたのです。


 感涙していた人の中には、そんな方も多く含まれていたようで、ほのぼのと優しい気持ちに触れた気がして、名目通り、多くの『人』たちに見守られ、結婚式は恙なく執り行われました。





 その後、親族やお友達は、近くに予約したレストランで、ささやかな披露宴を行うそうで、私たちはその場で解散です。


 椎名さんご夫妻の姿を見つけ、ご挨拶をしようと歩み寄ったのですが、新婦の父の感涙が止まりません。いつもクールな印象が強いだけに、またまたこちらまでもらい泣きです。


 プチギフトに頂いた小さな花籠には、二人からの御礼のメッセージと、キャンディーが入っていて、本当に手作りの温かいお式だと感心しました。


 このお式自体がフリースタイルということなので、他にもいろんな形があるそうですが、広い公園で、おひさまの光の中、真っ白なウェディングドレスで笑う亜美ちゃんは、本当に綺麗で、幸せそうで、何より彼女らしくて素敵でした。





 今どきの結婚は、昔の日本と比べたら、随分簡素になって来ているといわれています。家制度というものがあった時代は、結婚相手を自分で選ぶことも許されなかったのですから、今は本当に自由です。


 でも、まだまだ家同士の繋がりやお付き合いという部分が重要視されますから、自分たちの勝手に、というわけにはいかない部分も、多々あるのも事実。





 亜美ちゃんの結婚式があってから、2か月が過ぎた頃でした。


 毎朝、公園の幼稚園バスの集合場所に、双子の海翔くんと美浪海ちゃんを送って行く来栖さん。庭の水遣りのタイミングと重なることが多く、会う度に、親子で元気よくご挨拶をしてくださいます。


 いつも休日には、ご主人が率先して子供たちを遊ばせる姿が見られ、とても仲の良いご家族。亜美ちゃんの結婚式も、ご夫婦と双子ちゃんの一家全員で参列されていました。





 それが今週になってからずっと、暗い顔で元気がなく、子供たちも心配そうにママの顔を伺うばかりで、どうも様子がおかしいのです。


 欠かさずにご挨拶はしていましたが、翌週の月曜日になっても、元気がない状態が続き、さすがにこれは何があったのか、それとも体調が良くないのかと、ちょっと心配になってきました。


 そこで、子供たちをバスに乗せてから自宅へ戻る彼女を捕まえ、声を掛けました。



「おはよう。どうしたの? 最近、元気ないみたいだけど、何かあった?」


「松武さん…」


「私で良かったら、お話聞くよ?」



 すると、来栖さんの瞳から、突然大粒の涙が零れ落ちたのです。


 これは、思った以上に深刻な状況なのか? 成り行き上ではありますが、泣かせてしまった責任は取らなければと思い、ひとまず、二人で庭のベンチに腰掛けました。


 ひとしきり泣いて、呼吸を整えると、突然泣いてしまったことを謝り、少しずつ話し始めたのです。





 それは先々週の金曜日のこと。


 突然、来栖さんのご主人が、土日でディズニーランドへ行くと言い出したのです。その日は、丁度奥さんのお誕生日でもあり、旅行はご主人からのサプライズのプレゼントでした。


 勿論、奥さんも双子たちも大喜び、一家は夢の国へ出かけました。たくさんのアトラクションを回り、園内のホテルの特別室に泊まり、おいしいディナーを頂き、目いっぱい楽しく過ごした夢のような一日。





 と、ここまでは、最高の思い出でした。


 事件が起こったのは、その翌日のこと。ご主人はもう一つ、特別なサプライズを用意していたのです。





 ホテルをチェックアウトして、ご主人に連れて行かれたのは、園内のチャペルでした。


 一体何が始まるのか知らされないまま、奥さんは着替え室に通され、着せられたのは、まさかのシンデレラ仕様のウェディングドレスだったのです。


 どうやら、亜美ちゃんの結婚式を見たご主人が触発され、奥さんのために、一人でこの企画を立てたのでした。



「うちね、出来婚だったから、親族でお食事会をした程度で、結婚式はしてなかったのね」


「そうなんだ」


「子供たちに手が掛からなくなったら、そのうちにしようって話はしていたんだけど…」



 やはり女性ですし、奥さんとしては、ウェディングドレスを着たい気持ちは強かったのですが、悪阻が酷く、その後も体調が優れないまま出産を迎え、双子の育児が始まって、結婚式どころではない日々が続いていたのです。


 そんな中でのご主人からのサプライズ。それも、大好きな夢の国で、おとぎ話のヒロインになっての花嫁さん。誰もが羨むはずのストーリーだった…はずなのですが。





 妊娠中、ほとんど安静にしていなければならず、産後の体重は10㎏増。その後も育児に忙殺されて、自分のことなど構っていられず、体重は更にプラス数㎏。髪もお肌も荒れ放題。


 出来上がった写真は、衣装こそお姫様でしたが、そこにいたのは中途半端に太った、どこか生活に疲れたようなオバサンにしか見えない自分の姿でした。


 もともと綺麗な顔立ちをしている来栖さん。マイナス十数㎏を加味すれば、かなりのナイスバディ、グッドルッキングだったことが想像できます。そして、そのギャップが一番分かるのも、彼女自身。





 来栖さん曰く、ご主人の気持ちも嬉しいし、旅行自体もとても楽しかったのだそうです。ただ、ウェディング写真のサプライズだけは、どうしても納得出来ませんでした。



「先に言ってくれてたら、少しでもダイエットしたかったし、エステとまでは言わないけど、お肌の手入れも頑張ったよ」


「うん、そうだよね」


「あの写真が一生残ると思ったら、自分が許せなくて…」


「そっか…」


「パパは悪くないって、頭では分かっても、気持ちが納得出来ないの。旅行から帰ってずっと、家の中最悪の空気で…」



 慰めるための、気の利いた言葉が見つかりません。良かれと思ってしたことが、最悪の結果を生み出してしまったパターンです。





 女性にとって花嫁姿は、一生のうちで最も美しく在りたい姿の一つ。ただ単に、好みのドレスを着ればそれで良い、というものではありません。


 ブライダル業界や美容業界が、花嫁の美容に関してどれだけ力を入れているか、そのサービスの内容によって、契約数に影響することからも、よく分かります。


 結論として、サプライズでの結婚式や結婚写真撮影は、先ず、花嫁の承諾なしにやってはいけないということ。





 我が家も結婚式をしておりませんので、決して他人事ではなく、もしかすると我が身に降り懸かった可能性が、無きにしも非ずの事件です。


 もっとも、うちの夫には、来栖さんのご主人のような、サプライズを計画する発想も、機動力もありませんけれど。


 我が家の場合、結婚式をしていないのには、ちょっと世間一般からは掛け離れた事情がありました。といいますか、お式云々以前に、未だ両方の親同士、会ったことがないのです。


 これがどれほど非常識であるかは、自分でも重々自覚しておりますが…





 それはまだ、私が10代後半~20代前半の頃のこと。まあ、世間に洩れず、こんな私にも、当時交際していた相手がおりました。


 付き合った期間は、学生時代を含め、概ね5年になりましたか、週末のデートには、彼が我が家に遊びに来ることも多く、我が家の両親とは顔見知りで、一応公認の間柄でした。


 ただ、母だけは、彼のことをあまり好んでいませんでした。


 というのも、彼の実家は、お父様が婿養子で、母方のおばあちゃまが同居、更にはそのお母様=ひいおばあちゃま、さらにさらに、彼の未婚の妹も同居の6人家族。


 すなわち、彼と結婚すると、跡取り娘の姑と婿養子の舅、大姑に、大大姑、小姑付きという、アンビリーバボーかつ、完全アウェイな環境が待ち受けているわけです。


 そして、彼の口ぶりから伝わる実家の暮らしは、比較的裕福な家庭で、お金の使い方もゴージャスな様子が窺えました。ただし、それはあくまで彼の口ぶりから、というだけのお話ですが。





 そんなある日、母に言われました。



「あんた、結婚するなら、全部自分で働いて貯めたお金でやってよね。ああいう派手な家とは、うちは付き合いきれないから、どうしても結婚するんだったら、うちからは一切、お金も何も出さないから。大体、あんたみたいな辛抱のない甘ったれた娘が、あんな家で、嫁としてやって行ける訳ないわ」



 何だか、いろんな意味で、ショックではありました。


 大体、彼とは結婚について、まだ具体的な話など何一つ出ていませんでしたし、それに、よくよく考えればとてもおかしな話ですが、5年も付き合っていて、私は一度も彼の自宅へ伺ったこともなければ、彼のご両親やご家族にもお会いしたこともありませんでした。


 勿論、プロポーズもされていないし、普通だったらありそうな『いつかは結婚しようね』的な話も一切なく…


 とまあ、これはまた、別のお話。





 他のことに関してもそうだったように、『結婚』という人生の大切な行事に関しても、母からは、迷惑でしかないような言われ方なのです。


 ただ、相手が誰であったとして、実際に結婚ということになれば、結納やら、お式の段取りやら、花嫁道具やら、新居やら、親を含めて、あるいは親のほうが主導となって、詰めるお話はたくさんあるわけです。


 そんな中、花嫁自ら、



「うちの親は、一切お金は出さないと言っています。こちらは、私が働いて貯めた○○円のお金しかありませんから、結婚費用は、この金額でおさまる範囲でお願いします」



とは、言えませんでしょう、普通。





 その時点の預金残高にもよりますが、少額にも関わらず、親からは費用を一切出すつもりはないとなれば、こちらの両親が結婚に反対しているのか、という疑念を抱かれる可能性大です。


 他には、たとえば莫大な借金を抱えているのではないか、とか、私自身が親から距離を置かれるほど、人間的に問題があるのか、とか。


 親がお金を出さないことが問題なのではなく、お金を出してもらえないから不幸だ、ということでもありません。


 仮に、何らかの事情で、出せない(出さない)旨の説明なり誠意なりを示し、相手も納得しているのなら、きちんと手順を踏んだ上で、お互いの立場を尊重しあう関係が出来ているから、問題ないのです。


 ですが、私の母の場合、顔合わせの席に着いて開口一番、



「最初に言わせてもらいますけど、うちはお金はありませんから、こっちの分は、娘が働いて貯めた分だけでやってくださいね」



 なんてことを、しゃあしゃあと言いかねない人です。


 状況は違え、過去に何度もそんな経験をし、子供ながらに、とても恥ずかしい、苦い思いをさせられましたから、そうした状況がありありと目に浮かぶのです。





 そうなれば、まず、このお話は破談になるでしょう。


 仮に、相手方がそれを受け入れ、結婚に至ったとしても、実家と義実家の関係が円滑に行くとは思えませんし、嫁の立場として、肩身の狭い思いを余儀なくされることでしょう。


 ただでさえ、嫁姑というのは、いつの時代も、どこの国でも、色々あるものだと言われています。嫁ぎ先で、愛する娘に不憫な思いをさせないために、婚礼では娘実家が精一杯のことをするのが、この地方の結婚が派手になった所以と聞いていますが、



~ああ、私はごく普通の結婚をしてもいけないんだ~



 心の中で、そう呟きました。そしてこれも、いつものことだと、きつく自分自身に言い聞かせました。





 それから間もなくし、私は彼と別れました。母に言われたから、という訳ではなく、理由は別にあったのですが、それを知った母の発言です。



「良かったね、あんな人と別れて。お母さん、ほっとしたわ。もしあの家に嫁に行ってたら、派手なお付き合いに巻き込まれて、子供の祝いだ、なんだかんだって、どんだけお金払わされたか。あんたが言うこと聞いてくれて、ほんとに安心したわ。次は、もっと良い人見つけなさいよ」



 母の言う『もっと良い人』というのが、一体どんな人を指すのか?


 ただ、別れて間もない傷心の娘に対して、たとえ元気づけるつもりだったとしても、あまり適切な言葉だとは思えません。少なくとも、嫌な気分になったのは事実です。





 それからしばらくして、私は実家を出て、一人暮らしを始めました。母は、時々電話を掛けて来ては、話の流れの中で、



「あんた、オトモダチは出来たの? まだ、良い話はないの?」



と聞いてきました。


 ちなみに、この『オトモダチ』というのは、母の中では、交際相手を指していて、言わずもなが『良い話』とは、縁談話に他なりません。


 私にしてみれば、どの口が言う!? ですし、やんわりと否定すると、決まってこういうのです。



「そういう話が決まったら、早く言ってよ。式には、張り切って出席してあげるし、新婦の感謝の手紙に感激して泣いてあげるから」



 婚礼に関する親としての責務一切を放棄しながら、立場だけは主張すると? しかも『あげるから』なんて、たとえ冗談でも、そんなこと言われたくありません。


 何なら、その感謝の手紙とやらで、過去の様々なエピソードと思いのたけ全てを、参列者全員の前で、赤裸々に暴露してやろうかとさえ思います。


 ただし、結婚式が台無しになる、というオプション付きですが。





 そして、私が28歳のとき、私より先に、妹が26歳で結婚しました。


 式場は、地元では有名な由緒正しき神社です。出席者の数もなかなかの規模、式の内容もそこそこゴージャスで、お道具もそれなりに立派。


 元々、この地方は、冠婚葬祭の中でも、特に結婚が派手で有名なお土地柄。妹のことは、生まれた時から熟知しているだけに、自分でそれだけの内容を執り行える貯金をしていたとは、到底思えません。


 後になって、妹に『あくまで、私自身の今後の参考に』と、式全体でどれくらいの費用が掛かり、自分はどれくらい負担したのか聞いたところ、お金のことは、親任せにしていたので分からない、とのことでした。


 そう、言い換えれば、妹自身、自分の貯金はほとんど払っていないということです。これもいつものこと。私と妹では、そもそも待遇が違うんです。でもそのおかげで、妹の婚家での立場は安泰だったでしょう。





 月日は流れ、34歳のとき、遅ればせながら、私も結婚することになりました。


 実家を出た後も母とは色々あり、ほとんど音信不通になっていましたが、さすがに、結婚の報告をしないわけにもゆかず、一応、その旨だけは報告に行きました。


 ただ、結婚式はしないこと、そして、結納などは勿論、相手方のご両親と顔合わせ等もないことを伝えました。


 父や祖母は、ちょっとがっかりしながらも、相手のお宅に失礼はないのかと心配していましたが、母は『好きにすれば良い』といった感じで、特に何か言われることもありませんでした。





 常識から言えば、あり得ないような話だと、自分でも思います。夫は、結婚式を挙げたいと思っていたようで、夫の両親にも、せめて挙式だけして写真を撮っては、と勧められました。


 女性ですし、初婚ですから、ドレスやお式に惹かれないわけではありません。


 ですが、母が結婚式に出席すれば、何かしでかしはしないかと気が気ではなく、とても式に集中出来ませんし、式に出ないで欲しいと言おうものなら、逆切れして当り散らし、私だけならまだしも、そのとばっちりがどこへ向かうかも未知数。


 後々の親戚付き合いをして行く中で、常時監視していることも出来ず、いつ母が夫の両親や親戚に失礼な言動をし、不快な思いをさせまいかと、不安を抱え続けることになります。


 どのみちトラブルを引き起こすのなら、最初から一切の関わりを持たないことが最善策、納得してもらえずに破談になるなら、それも致し方ない、というのが、私が出した結論です。ドライといわれるかも知れませんが、長年の経験から学んだことでした。


 私と母との確執を知った上で、結婚を了承してくれた夫とその両親、それだけでも私にとっては過分で、そんな我儘を通させてもらった次第です。





 ところが、やはり一筋縄では行かないのが、母でした。


 入籍し、夫側の親戚には、義母の指示で可能な限りご挨拶回りをし、遠方の方には、お手紙でのご報告で失礼させて頂きました。


 当然、私の側の親戚にも、結婚の報告をしなければと思い、どのようにすればよいかと母に尋ねると、



「ああ、いいよ、それだったら、ついでの時でも言っておくから」



と答えたのです。


 挙式披露宴もせず、敢えて報告だけするというのも、何だか決まりが悪い感じですし、下手すると、お祝いを請求していると思われてもいけないので、母の言葉に従うことにしたのです。が…





 更に月日は流れ、6年後、私40歳のとき、祖母が他界し、葬儀で、本当に久しぶりに、大勢の親戚に会うことになりました。


 そこで知った、驚愕の事実!


 ほとんどの親戚、仲の良かった従兄弟たちまでもが、私が結婚していたことを知らなかったのです。彼らにしてみれば、私が結婚していたことのほうが、まさに驚愕の事実だったでしょう。





 式を挙げていないのですから、顔合わせが初めてなのは仕方ありません。


 が、6年も前に結婚していたことを、会う人会う人にいちいち報告。それも、祖母のお葬式という状況下で。


 そんな私たちの様子を見て、母は言いました。



「こうして、皆に結婚の報告が出来るのも、おばあちゃんが引き合わせてくれたからだわねえ~」



 開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと。こうして、こんな状況で報告しているのも、自分が6年間も放置し続けたからだというのに。


 とはいえ、母の人間性を分かっていたのに、あの言葉を鵜呑みにした私にも、責任はあります。


 小さい頃からとても可愛がってくれた叔(伯)父、叔(伯)母たちからは、



「何で知らせてくれなかったの~? せめてお祝いでもしてあげたかったのに~」



と言われました。


 6年も放置されれば、思うところは色々でしょう。気を使わせたくなかったのかな、と良心的に取る人もいれば、自分には報告したくなかったのか、と思う人もいるでしょう。報告もないなんて、無礼な奴だ! と怒り心頭の人もいたのかも知れません。





 結婚した当初、お友達や夫側の親戚から、たくさんお祝いを頂きました。その熨斗袋や、お品の包装紙などは、大切に保管してあり、お名前、金額、品名、お返ししたお品のリストも、取ってあります。でも、その中には、私側の親戚からのものは、一つもありません。


 勿論、知らされていなかったのですから、それは仕方がないことですし、結果的には、私のほうが失礼なことをしてしまったのです。


 過去、あれだけ何度も繰り返したにも関わらず、母を信じてしまった自分の過失、でも、それを見るたびに、今でも、本当に切ない気持になります。





 我が家も結婚式をしていないという共通点から、来栖さん自身、多少は溜まっていた気持ちを吐き出せたのか、10時過ぎまで話し込んで、当初より少し表情が和らいだ様子で帰宅して行きました。





 突然、インターホンが鳴ったのは、その週末の土曜日の夕方のこと。丁度、夕食はどうしようかと考えていた時でした。



「ごめんなさい、こんな時間に。今、少しだけいいかな?」



 来訪者は、来栖さんご夫婦でした。二人とも深刻な顔で、突然の訪問を丁寧にお詫びしながら、どうしても相談に乗ってほしいとおっしゃるのです。


 とりあえず、二人をリビングにお通しし、席を外そうとした夫に、来栖さんのご主人から『出来れば一緒に話を聞いて頂けませんか?』と懇願され、同席することになりました。


 双子ちゃんの姿がないことを尋ねると、市内の奥さんのご実家へお泊りに行かせた、とのこと。どうやら、徹底的に話し合いをする覚悟のようです。





 ご主人は、なぜ奥さんがそこまでご機嫌を損ねるのか、どうしても理解出来ないとおっしゃいます。


 本人としては、奥さんを喜ばせようと計画したサプライズ。配慮が足りなかったことは認めるし、謝罪もしたけれど、いつまでも落ち込んでいる奥さんに、もうどうして良いのか、途方に暮れていると言うのです。


 すると、黙って聞いていた夫が、ぽつりと口を開きました。



「その写真が気に入らないなら、もう一度撮り直したら駄目なんですか?」


「そう! 僕もそう言ったんですよ! 納得するまでダイエットしてからでもいいし、エステも美容院も好きなだけ通って、これって思うまで何枚でも写真を撮ってもらえばって言ってるのに…どうしてそれじゃ駄目なの? お金のことは気にしなくてもいいんだよ?」


「そういうことじゃないの、私が言ってるのは…」


「じゃあ、どういうことなのか、ちゃんと分かるように説明してよ! ねえ、松武さんも、そう思うでしょう?」



 もう、お互いに感情的になってしまい、冷静に会話が出来る状態ではなくなっていたようでした。


 とりあえず、二人にお茶を飲むように勧め、一呼吸置いたところで、今度は私から尋ねました。



「ご主人は、奥さんを喜ばせようとして、サプライズをしたんですよね?」


「ええ、そうです」


「奥さんも、ご主人からのプレゼント、嬉しかったのよね?」



 声にならず、涙を拭いながら頷く奥さんに、ご主人が言いました。



「嘘だ! 喜んでるなら、こんな…!」


「来栖さん、少しリラックスしましょ」


「あ、すみません…」


「奥さんはね、本当に嬉しかったんですよ。だからその分、悲しくて悔しくて、自分が許せなくなってしまったんじゃないですか? そうよね?」



 私の問いかけに、声を押し殺して泣きながら、何度も何度も頷く奥さん。


 もし間違っていたら、訂正して下さるよう奥さんに言い、女性の立場として思うところを、ご主人に話しました。





 まず、ディズニー大好きな奥さんにとって、ご主人のサプライズは、まさに完璧で最高のプレゼントだったのですが、それ故、その最高のシチュエーションで、自分が全力ではなかったことが許せなかったのです。


 何歳になっても、ママになっても、女性ですから、写真には最高のコンディションで写りたいと思うもの。ましてそれが結婚写真、それも夢の国のお姫様姿となれば、尚のことです。


 前もって言ってくれれば、最大限の努力も出来たし、その上での状態であれば、納得もするというもの。


 ただ、先に言ってしまえばサプライズになりませんし、気付かれないように、そうした方向に誘導するのも容易ではないのも事実、もとよりそれが出来たなら、こんな事態になっていません。





 男性陣が提案するように、最高のコンディションで、もう一度写真だけ撮り直すというのも、確かに案としては悪くはありません。でも、それをしてしまうと、彼女の中では、ご主人の気持ちや、子供たちの存在まで否定してしまうことになるのです。


 なぜなら、子供たちを授かったことが、結婚に踏み切る最大のきっかけで、式が延期になったのは、妊娠中の体調不良が原因。体型が変わったのも、決して怠惰な生活ではなく、母乳育児のため、食事をしっかりとる等、子供たち最優先のライフスタイルからです。


 元々太りやすい体質だったのかも知れませんし、産後のホルモンの影響もあったでしょう。何より子供を育てるためには、過度なダイエットなんてしていられません。


 今の体型は、愛する子供たちがあってのこと。子供たちを大切にしてきたからこその結果です。





 そして、このプレゼントを企画してくれたご主人『の』思いと、ご主人『へ』の思い。


 奥さんの願いを叶えたい、奥さんを喜ばせたい、その一心で、色々考え、あれこれ調べ、時間の調整もし、お金も掛け、忙しい中すごく頑張ってくれたそのプロセスまで含めたすべてが、彼女が受け取ったプレゼントなのです。


 写真を撮り直すことは簡単ですが、それをすると、ご主人の思いまでリセットしてしまう気がして、自分が体型を維持出来なかったことが原因だからこそ、苦しんだのです。


 原因が自分でなければ、悩むことなどなかったかも知れません。



「頂いたプレゼントを、平気で転売したり、捨てたり出来る人もいれば、梱包ごと、大切に保管する人もいるんですよ。物に込められた気持ちまで、きちんと受け取れる、本当に良い奥さんですよね」


「そう…だったの?」



 ご主人の問いかけに、こっくりと頷く奥さん。



「奥さんが責めていたのは、ご主人じゃないんです。奥さん自身なんですよ」


「僕は、そんなことちっとも分からなくて…きみがへそを曲げて、八つ当たりしてるんだとばかり思ってた。ごめん」


「私こそ、ごめんなさい。私のせいで、こんなことになって」



 とりあえず、まずは第一関門クリア。ですが、まだ問題は解決していないのです。そこで、こんな提案をしてみました。



「で、お話を元に戻して、写真をどうするか、方法は大きく分けて四つあると思うんです」


「四つ、ですか?」


「一つは、写真自体を破棄してしまう。二つめは、そのまま手を付けずに置く。三つめは、撮り直す。四つめは、写真を加工するんです」


「えっと、一から三は大体理解出来るんですけど、四つ目の『加工』って、具体的にどういう?」


「要するに、プリクラでいうところの『盛る』と言えば分かりますか? 今ある写真を元に、ちょびっと修正しちゃうんです」



 よく若い女の子たちが撮っている、お目目パッチリ、身体ほっそり、足長~の、お肌ツルスベ、etc. のあれです。はっきり言って、あれをどこまで『事実』として許容するかは人それぞれですが。


 来栖さんファミリーが、夢の国で結婚写真を撮ったのは間違いない事実で、被写体も正真正銘本人たち。


 何よりその写真は、ご主人が奥さんに贈った愛の証ですから、処分したり、撮り直したりはしたくない、というのが奥さんの希望。


 ただ、どうしても許せないのは、そこに写る彼女自身の姿。一生残る大切な写真ですから、最高の美しい姿で臨みたかったという女性心。


 ならば、奥さんのシルエットだけを、理想とする以前のスタイルに調整してしまえば、見るのも辛くて堪らないということはなくなるはずです。



「なるほど! その手があったか!」


「ご自身でするか、お友達で画像処理が得意な方がいらっしゃったら、お願いするか、有料でもプロの方にお願いするかだと思うんですけど…」


「僕、グラフィック関係の仕事をしていんです! 何だよ、灯台下暗しって、このことじゃないか!」



 すっかり乗り気で、すぐにでも手を付けたいとばかりに食いつく、やる気満々のご主人。


 一方で、少し複雑な表情で困惑顔をしている奥さん。元々の性格が生真面目な上に、後ろめたさも手伝って、すぐに諸手を挙げて賛成! とは参りません。



「でも、それってちょっと詐欺っぽくない? 少なくとも、今の私のスタイルとは、明らかに違うし…」


「だったら、これから近づくように、努力すれば良いじゃない? 前は確実にそのサイズだったんだし、結果が後付けでも、全然問題ないですよね、ご主人?」


「ええ、勿論!」


「でももし、結果に結びつかなかったら?」


「だとしても、何か問題ある? 証明写真に使ったら問題だけど、あくまで私的な写真だよ?」


「そうだけど…」


「それに、今後、もっともっと歳を取って行けば、そんなの誤差の範囲でしかなくなるよね?」


「うん…」


「誰だって、ふつうは一番写真写りの良いのを選んで飾るじゃない? そう考えればよくない?」


「そう…かも知れないけど」


「大体、昔から記念写真って、結構、修整してたものよ。お見合い写真なんて、修整した上に、二十歳の成人式で撮った写真を、40代になっても使ってる人だっているし」


「いるね」


「バイトの履歴書に、プリクラ写真貼って出して、採用されちゃうような時代だよ? それに比べたら、『何か問題でも?』って感じじゃない?」


「まあ、確かに」


「もっと言えば、シンデレラの格好してる時点で、それもう事実じゃないよね~? 詐欺っていうなら、すでにそこから始まってるでしょ」



 思わず夫が失笑し、つられるように来栖さんのご主人が笑うと、奥さんも表情を緩め、小さく息を吐いて頷きました。



「ということで、知ってるのは、ここにいる4人だけ、全員このことは忘れること。忘れられない人は、お墓まで持って行くこと」


「OK!」


「はい」


「了解です!」


「あとは、ご主人に掛かっていますから」


「頑張ってくださいね、来栖さん!」


「ありがとうございます! 松武さんに相談に伺って、本当に良かった!」



 来栖さんご夫妻は、ソファーから立ち上がり、私たちに向かって深々とお辞儀をされました。多分、これでもう大丈夫です。


 二人から、お礼に夕食でもご一緒にと誘われましたが、善は急げ、早急に手を付けたほうが良いとアドバイスしました。真面目な奥さんが、やっぱり詐欺的だ! …なんて言いだして、気持ちが変わらないうちに。





 数日後、ポストに一通の封筒が投函されていました。


 開けてみると、入っていたのは、絵にかいたような完璧なスタイルの、見覚えのあるシンデレラ姫と王子様の写真。息をのむほど美しいその姿に、思わず私も小さくガッツポーズ。


 封筒の中には、もう一枚小さな写真が。おそらく元の写真でしょうか、同じシチュエーションで、一~二回りふっくらしたシルエットのシンデレラ姫。


 写真には、ミッキーの付箋に『機密資料につき、閲覧後廃棄処分(笑)』と書かれていました。帰宅した夫には、afterの写真だけを見せ、beforeは私の一存で見せずに廃棄することに。


 あえて、両方の写真を添付して来るところが、来栖さんの誠実さなのでしょう。ならば、共謀者であっても、彼女にとっては異性の他人である私の夫に見せずにおくのは、同じ女性として私からのささやかな配慮。


 これで、ミッション完了です。



「うちも結婚写真撮ってないけど、どうする?」



 そう夫に訊かれて、即答しました。



「うちは、要らないんじゃないかな」



 もともと写真を撮られるのは好きではありませんし、ドレスとか夢の国とか、あまり興味がないのも事実。


 それに、結婚式こそしていませんが、友人たちやお仕事の関係者、夫の幼なじみたちが、お祝いのパーティーを開いてくれたのです。それも、計三回、しかも、それぞれがかなり大規模ゴージャス。





 友人たち(夫婦共通の友人、個別の友人、私の幼なじみ、私のかつての仕事関係等の合同)は、昔から常連のお店を貸切にして、総勢100人を軽く超える参加者たちが、二次会のようなノリで盛り上げてくれました。


 夫のお仕事の関係では、素晴らしいお料理と、予約が難しいことで有名な料亭を手配して下さり、50人を超える方に出席して頂きました。


 夫の幼なじみには、夫の地元で。同級生や、子供の頃からのお祭り仲間たちということで、いつもお祭りの宴会場になっているお店を借り切って、こちらも50人超のお友達や先輩後輩の皆さんが集まってくれました。





 なぜそうなったかというと、友人関係、仕事関係、夫幼なじみ関係、それぞれが自主的にお祝いを企画して下さっていて、距離や時間等の制約もあり、すべてを合同で開催することが難しく、結果的にそういう運びになった次第です。


 皆さんには、お手間を取らせてしまい、申し訳なく思いましたが、それ以上に、心のこもったお祝いをしてくださったお気持ちが、本当に嬉しくて。


 私は母との関係は最悪でしたが、夫を含め、周囲の人々にとても恵まれたと、強く感じています。


 久しぶりに引っ張り出してきた当時の写真を見ながら、良いことも悪いことも、悲喜こもごもありますが、夫と結婚して良かったと思えることに、感謝しました。





 そういえば、ひとつ思い出したことが。


 子供の頃から、何かといえば『あんたがお嫁に行くときのために、貯金しておいてあげるから』と言っては、色んな方から頂いたお年玉、各種お祝い、お小遣い、ご褒美に至るまで、現金という現金は全て回収していた母。


 夫のご両親からは、結婚祝いに『少額だけど』と、御祝い金を頂いていましたが、うちからは、何も貰っていないばかりか、あの貯金も返還されておりません。


 もっとも、そんな積立(?)口座が実在したのかさえ疑問ですから、幻の嫁入り貯金が、私のもとに来ることは未来永劫ないでしょう。今更請求するつもりもありませんが、ざっと計算しただけでも、結構な金額になっていたと思います。





 よく結婚を『ゴールイン』と表現しますが、本当はゴールではなく、そこからが、また新たなスタートだということ。


 大抵の人は、生まれてから結婚するまでのプロセスより、結婚してからの人生のほうが、ずっと長いのですから。


 私も人生半ば。残りの人生をもっと充実したものにするために、また今日から、新たな気持ちで参りましょう。




 Happy ever after !

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