第124話 Qualia Network:To the limits of the world
「ああああ……ああああアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああ……ああああアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ
ああああ……ああああアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ
ああああ……ああああアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ
ああああ……ああああアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
歩を中心に、膨大な粒子の渦が発生しそれは時間が経つごとに勢いを増していく。
「来ましたか、これが意識の根幹……」
ぼそりと呟くD-7の目は何かを覚悟しているような、そんな雰囲気が感じられていた。
迫り来る本流の中、彼の脳内にはある声が響いていた。
「……歩くん」
そして、そこで彼の意識は一旦途絶えた。
§ § §
今、全て知った。
彼女が何故自分に近づいてきたのか。何故わざわざ手解きをしてくれたのか。何故、こんなにも面倒を見てくれたのか。
七条総士から生まれた3つの可能性。その一つである彼の計画を知っていた。そして、彼女がそれに加担していることも。
七条歩という個体の意識は表層でしかない。俺には、いや私たちには無数の意識が奔流している。それこそが、彼が生み出した産物クオリアネットワーク。クリエイターのみが有するクオリアにネットワークというものを与え、意識の接続を可能としたシステム。これがあれば、人は一つになれる。本当の意味での平和が訪れる。人を超えた人による世界の統治。人工知能とも一線を画す最新鋭の機能。人間の限界を超えた知能に戦闘力。争いが続くのなら、それを終わらせる存在が、抑止力が必要だ。それが、七条総士の望んだ世界だった。そうして、クリエイターは人工的に生み出された。
そしてそこにあるのは、人の意識の根幹……それにたどり着いた者のみが知る世界。俺はその中心的存在だった。クオリアネットワークの根幹であり、
渦巻く怨嗟の声の中に、彼女の声が微かに聞こえてくる。
「歩くん、私たちはずっと一緒だよ。けど、ずっと離別するべき存在。さぁ、君の心を開いて。今こそ辿り着く時だよ……」
スーッと脳に染み渡る感覚。
そうか、俺は詩織さんは……この為に生まれたのか。でも生まれた理由は他者に委ねても、生きる理由は自分で決めよう。彼女が望んだ、共存の世界。俺もそれを望んでいる。異分子だからと言って、排除すればいずれ破綻する時が来る。もちろん、全てが理解できないわけではない。クリエイターという存在は普通の人々には恐ろしいものだろう。しかし、ここに、この世界に生まれたこと自体に罪があるわけではない。ならば、俺は彼らを守る礎になろう。それが、俺と彼女、そして私たちの総意だ。
それに相対するのは、D-7。彼が望む世界は過去にあった。人工的に生み出され、この世界を先導していく存在となるはずだったのに、彼は自分自身を含めてクリエイターがいなくなることを望んだ。進歩ではなく、退化。いや、しかしそもそもが異質な存在であるクリエイターの誕生は進化と定義していいのだろうか。
一体、彼にはどんな想いがあるのだろうか。
クリエイターのいない元の世界。それこそが本来の姿。クリエイターのいる世界と、クリエイターのいない世界。どちらが正しいのか、なんていうものはやはり主観的なものでしかないのだ。
俺と詩織さんは偶然思考が一致しただけで、D-7と同じ考えに至る可能性がゼロだった訳ではない。
そもそも、善悪などは他者が決めるレッテルの一つで相対的なものである。悪を働く人は悪を働きたいから、そうするのだろか。例えば、殺人を犯す人は、悪と分かっていてもそれをしてしまう……ということはその人なりの理由があるんどあろう。憎しみ、怨恨、その感情を晴らすのは本人にとっては最良のことなのだ。結局のところ、何が良くて、何が悪いかなんて今後の歴史にしか左右されない。
俺は自分が絶対の正義だなんて思わないし、相手が絶対の悪なんて思わない。
ぶつかり合うのは、思想と思想。正しいものが、正義が勝つのではない。勝ったほうが正しくなり、正義になりうるのだ。
詩織さん……俺は、俺のエゴだけ進んでいいのかな?
「歩くん……結局人は、自分で決めたことにしか従えないんだよ。七条総士が望んだ世界、そしてこのクオリアネットワークが善とする世界があっても、それでも決めるのは君だよ。君自身が、この世界なんだよ。そう、世界なんてものは結局は自分なんだ。自分の知り得る限界しか、世界の限界になり得ない。ただ私たちはその限界が広がっただけに過ぎない。本質的な部分は何も変わってはいないの。さぁ……行ってらっしゃい」
そして、眩い光が俺を包み込んだ。
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