第24話 予選前夜
「考えようぜって言われてもなぁ……」
「歩に分からない事が、私たちに分かるわけないよね……」
雪時と彩花は完全に考える事を止め、逆に落ち込んでいた。今まで歩から聞いた情報量が多すぎるため、会長の対策を考える事まで思考が追いついていなかったのだ。
「えー、じゃあ華澄は何か無い? あ! そうえば、華澄は去年の
「えぇ、現地で見てきたわ。有栖川家のおかげでいい席で見れたけど... 正直に言って何の参考にもならなかったわ」
「あー確か、去年の決勝は珍しく
「あそこまで異次元の戦闘だともうお手上げね」
二人がそう話していると、彩花が唐突に尋ねてきた。
「
「えーっと、なんて言えばいいかな……
「去年、私が見た会長の
炎を花のカタチにして操作する事が出来る。具現化する花によって、周囲に与える効果は様々である。クリエイターの創造次第でどんな花でも生成できるが、実戦で使えるモノを創造できるクリエイターはかなり少ない。
「
「実はそのときに会長の声が
華澄は記憶が少し曖昧だっため、最後まではっきりと発言しなかった。しかしその発言からはある一つの答えが導きだされる。
「なるほど、
「えぇ、でも去年はおそらく全て出し切る前に決着が着いたから、私もいまだによくわからないのよね……」
それぞれが思索に
「あーーーーーー!!!!! まじで上位陣はどうなってんだよ!! そんな奴に勝てる奴いるのか!??」
思わず不満を言う。しかしそれは全員が内心思っていた事で、雪時が代弁した様な形になった。
「でも
歩は自分に言い聞かせるように、そう言った。CVAという一番重要な部分で他のクリエイターに劣っている歩。そんな歩だからこそ、その発言は重みが増す。
「そうね、そんなに悲観する事無いわ。まだ時間はあるし、それぞれ明日からの予選に備えましょう」
「そうだね、じゃあ今日はここまでにしよう」
時計を確認すると、昼休みの終わりから一時間以上が経過していた。
そのまま4人は解散し、歩は残りの授業も全てサボり明日からの予選の為にすぐに自宅に向かった。
2120年には、パソコンと言うものが存在しない。現代ではほとんどの人が所持している棒状のデバイスがパソコンの代わりをしている。基本的には、デバイスはモニターを投影するだけでその他の操作はそのモニターを直接触る事で操作できる。
歩は明日からの予選のためにさまざまなデータを整理していた。
歩の目の前には50以上のモニターが投影されており、一つ一つのモニターにある操作をしていた。
「よし、とりあえず主要メンバーのデータは抑えられた。あとはどう攻略していくかだな」
実は、以前から校内戦に出場する選手のデータを集めており今日は最終調整として、各データをブラッシュアップしていたのだ。
空中に展開されているモニターを一つずつ確認し、自分なりの考察を書き込む。弱点と対策については特に詳しく。歩は自分がCVAで特に劣っている事を良く理解している。そのため勝つ為には最善を尽くす。
そんな彼にとって情報収集とその情報の整理は、実際の戦闘と同等かまたはそれ以上に重要なものであった。
「うーーーーん、会長はやっぱなぁ... 本戦でたら必ず戦う事になるよなぁ...」
そう言いながら会長のデータをまとめる。
2119年
CVA 日本刀、小太刀 VA
「うん……これだけ見ても化け物だな……」
そしてあるデータも加える。
「あの時は華澄がいたから言わなかったけど、会長はおそらく
華澄にはあまり多くの情報を提供したくなかったので、歩はあの時の会話で意図的に
(それに華澄もまだ何か隠しているようだったし、おあいこでしょ)
――
CVAによる固有の技をある一定のレベルまで高めると、
その発動はCVAにより
世界上位のクリエイターは主に2つに分類される。
一つは
もう一つは
両方を使用するものもいるが、大体はどちらかに偏るものである。そして、歩は完全に
残念ながら、歩には
「
それから2時間ほど歩はデータを整理し続けた。
「ふぅ、もうこれでいいか」
そう言うと、投影されているモニターをすべて消してデバイスをシャットダウンした。
「明日からとうとう予選か……」
歩の心は少しざわついていた。実戦は初めてではないが、大勢の観客がいる中での戦闘は初めてであった。そして
またそれと重なり、
「まぁ、いろいろ思うことはあるけど一つ一つの試合に全力で挑むだけだ。うし頑張るぞい!」
歩はそのままベッドに向かい、眠りについた。
2120年
そしてその始まりは人類の分岐点でもあった……。
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