第23話 生徒会長


「クリエイターの戦闘はこうやって割り振って考えられる」


 歩はそう言いつつ、再びデバイスを操作する。


「あの時の華澄の割合はこうかな」


 CVA(60) VA(35) 戦闘知能(5)=100


「ちょっと、私がこんなに考えてないって言うの!?」


 現実を見せつけられ思わず反論する華澄。歩もすぐにそれに反論する。


「まぁ俺の主観だから、そう言われると困るんだけど。でも実際に相手を倒す事しか考えてなかったでしょ?」

「う……まぁ……そりゃ、ね? 私もいっぱいいっぱいだったのよ。実戦なんて久しぶりだし……」


 後半になるにつれて声が小さくなっていく。しかし、歩は遠慮せずに答えていく。


「そうそれ! 実戦になると、ほとんどのクリエイターが現状把握だけで手一杯になる。戦闘知能を高くするのは理想論だ、とか言われたりするけど... 正直コレが無いと上位層とは戦えない。特に会長と戦うならね」


「じゃあ具体的にはどうしたらいいの?」


 華澄は落ち込んでいるようだったので、しばらく沈黙していた彩花が歩に尋ねた。


「戦闘知能はCVAとVAと違って後天的なスキル。だから基本的には誰でも身につけられる。ただその後天的なのがやっかいなんだ」


「何が厄介なんだ?」


 雪時も会話に参加する。


「クリエイターはCVAとVAを使えるのは先天的なもの。あとはそれを鍛えるだけ。でも、戦闘知能はゼロから磨かないといけない。しかも、実際の戦闘をしながら。あまり考えすぎると動きが鈍るし、逆に考えなさすぎると裏をかかれる。だからそのバランスが大事なんだよ」


「はぁ〜、確かに歩はものすごく考えて戦ってる感じするよな」

「だよね、あたしも戦ったときそう思った!」


 同意する二人。今まで聞いた事も無い、そして戦闘をするにもとても重要な概念の話しを聞いて二人はすこし興奮していた。


「俺の場合はワイヤーだからそうせざるを得なかったのと、師匠の教えのおかげで戦闘知能を磨く事が出来たんだ」

「師匠ってだれだ?」


 いきなり歩が師匠の名前をだしたので、雪時は気になってすぐに尋ねた。


「アメリカで、俺にクリエイターの戦い方を教えてくれた女性だよ。日本人だったけどアメリカですごく世話になったんだ」


 と、少し過去を懐かしむように話していると復活した華澄が質問してきた。


「あ、歩! 確かに私が能無しの脳筋ゴリラだったのは認めるわ! だからその戦闘知能? の磨き方教えて!」


 頭を下げて教えをこう華澄。今まで誰かに頭を下げた事がなく、とても屈辱的だったが、華澄はそんなプライドより今よりももっと強くなる事が重要だった。


「もちろんいいよ。それと雪時と彩花も聞くだろ?」

「もちろんだぜ!」

「ええ、あたしも聞きたいわ」


 歩はしばらく間を置き、再び話し始めた。



「それじゃあ、まずは現状あるデータのCVAとVAすべての特性を覚える事かな」

「「「えッ!!!???!?」」」

「それとCVAとVAの組み合わせによる攻撃パターンと対処法も覚えないとね」

「「「はぁッ!!!???!」」」

「ここまでしてやっとスタートラインかな。これを覚えた後に実戦で応用すれ  ば、戦闘知能はある程度鍛えられるよ」


「ははは、まじかよ...」

「あたしそんなに覚えられるかな...」

「ふんッ! そ、それくらい余裕よ!」


 3人ともかなり怖じ気づいていたが、歩はそんなことは全く気に留めずに話しを続ける。


「で、本題なんだけど。今の考え方を会長に当てはめるとこんな感じかな」


 CVA(50) VA(30) 戦闘知能(20)=100


「へぇ、こんな感じか。これは歩が実際に見たデータなのか」

「いや残念ながら、映像から考えて大雑把にこんな感じかなと思っただけ」

「あたしにはよく分かんないんだけど、全体的な評価はどうなの?」


 彩花が質問すると、歩は腕を組んで考え始めた。


「う〜ん、戦闘知能は学生レベルなら10超えればかなり凄い方だね。加えて、彼女の場合はCVAとVAの相性がよすぎるね」

「去年の三校祭ティルナノーグ見たけど、会長はCVAは日本刀と小太刀、VAは感知系みたいね」

「そう、華澄の言う通り。CVAは日本刀と小太刀こだちの二本だけど、小太刀こだちを使ってるとこはほとんど見た事無いね。それで、VAはおそらく完全領域フォルティステリトリー


 ――――感知系VA 完全領域フォルティステリトリー 半径10メートル以内のものを360度、感覚的に認知できる。自分の領域に入ったものは0.01秒で把握し、そこからの反応速度は1秒に満たない。死角が全くないレアな上に実用性も抜群なVA。 レア度 S


「なるほど、それなら相性は確かにいいね」

「なら得意技は居合いか?」


 雪時はそう思ったようだが、歩は首を横に振る。


「いや、会長は特に決め手の技を持って無いみたいだ。徹底的に後手に回って、相手の攻撃をすべて捌いた後にカウンターをするタイプ。この手のカウンターを主とするクリエイターは総じて戦闘知能が高いね。何十手先まで考えて戦ってると思うよ」


「まじかよ!」

「ホントに!?」

「私そんな人に勝つとか言ってたのね... 今日の話しを聞いといて良かったわ...」


 いつもと違って、かなり華澄は落ち込んでいるようだった。


「で、会長対策だけど。現状俺は何もいい策が思いついてない。だからこれからどうするか皆で考えようぜ!」


 そして、肝心なところは他力本願な歩だった。

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