星の砂

霜花 桔梗

第1話

私の心は片方見えない、空の青さも、きらめく星も。

そっと感じるだけ、

でも、歌うコトだけは出来る。

悲しい歌声と皆は言う。

私は町の神社にお願いをした。

『こころが半分でも生きていけます様に』

そして、

綺麗な巫女のお姉さんが声をかけてくる。

背が高くて人とは違う特別なモノを私は感じていた。

「願い……一緒に、神様に……」

それは、出会い、心が半分の私が本当に願いをかなえる、出会い。

私はそのお姉さんと願った。

そして、

「ねえ?おみくじ引く?」

巫女さんのお姉さんが優しく言う、これは風の流れの様に心が鳴る、半分でも感じる思い。

「はい」

「ありがとう。そうね、おみくじが『吉』だったら、ここの神社で働くのはどう?」

巫女さんか、楽しそう、私は吉が出るのを願った。

「…………」

私の名前は『つばさ』背が低くて髪型はショートカットしていて、よく少年に間違われて、

県立高校に通う普通のはずの高二。

私には秘密ある。こころが片方しかないのだ。

それから、もう一つ……。

巫女さんとしてアルバイトをしている。

きっかけなんて、どうでも良い、何をするかだ。

流れ流れる季節の中で私は……それでも、私は片方のこころで歌う。


境内で竹ほうき掃除の仕事、地味だけどつらくはない。

辺りを見回すが、この神社は少しお客さんが少ない。

ふう、私のこころがざわめく。

意味なんて、無いけれど、

私は歌う……。

「良い歌です」

どこからか声をかけられる。

「誰?」

「私はお雪、この神社で幽霊をやっています」

巫女の恰好をした少女が地面から浮いて立っていた。

ホント……浮いている、驚きよりも片方のこころが踊る。

「私は『つばさ』幽霊さんよろしく」

「はい。あら、もう、行かなければ」

私が挨拶をすると消えてしまった。

忙しい幽霊さん。でも、お友達になれそう。

私の片方のこころは嬉しい。


この神社には何人かが働いている。

神主さんの孫でとても、綺麗なお姉さんの瑠美さん、同じくアルバイトのもみじさん。

そして、幽霊のお雪さん。

もみじさんとは同じ高校に通って、もみじさんは大人しく何時も難しい本を読んでいる。

お雪さんは昔からこの神社に住み着いているが、あまり過去を語りたがらない。それは、幽霊としての呪縛を背負っているかのごとくである。

私の片方のこころは奏でる、一人の寂しさを……。

私は空を眺める事にした。

片方のこころは語る、孤独な世界を……。

今は生きているのが精一杯なの……。

私の半分のこころはガラスの様に繊細、落ちれば割れる儚い存在。

そして、

曖昧な人間関係しか作れなかった。

それでも……それは願いであった。

ここでのアルバイトは刺激が多すぎる。

そんな事を思いながら空を眺めていると瑠美さんが来て。

「新人、楽しそうだな」

「はい?」

「気にするな、私は口が悪い」

そうか、皮肉か……。

「はい、楽しいです、瑠美さんも空を見ます」

「お、怒ったところも可愛いな」

しまった、騙されたか。

「言ったろ、私は口が悪いって」

それは、瑠美さんの笑顔だった、私は初めて純粋に人と接しているのかもいるのかもしれない。

「うん、良い笑顔になった」

それは、片方のこころに響く言葉であった。

もみじさんに呼び出され、私は校内の部室棟に来ていた。

ここだ、そこは神社部なるところだった。

中に入るともみじさんがいた。

「こんにちは、ようこそ神社部に」

「神社部?」

「この部活は校内神社なの。部長は私、活動は簡単な神社のような事をする」

「それで、まさか……」

「そう、手伝ってもらう為に呼んだの」

私は……。

「ま、返事は直ぐでなくて良いわ」

帰り道、私の片方のこころは迷っていた。

家に帰り自室にこもり、片方だけのこころの音色に耳を傾ける。

夜もふけても眠れない。

ふと気がつくと朝だった。

登る太陽は歌のごとく、

迷いは消えていた。

そして、神社部に行くと……。

「遅いな、新人さん」

もみじさんは私の片方だけのこころの底まで見えるような。

「はい、もみじさん」



休憩時間に境内を散策していると。

大きな杉の木がある。どうやら、御神木の様だ。

―――ザワツク、私の片方のこころが……

う、こころ、から光が出て御神木の魂にあたる気がした。

それは鍵のような簡単な儀式のような……。

「我は八海、この神社魂であるが。しかし、ただの大杉でしかない存在。我に語りかけるはそなたか?」

私は返事に困ったが片方のこころに素直になってみた。

「大杉の八海さん、始めまして、私はつばさ、ただの人です」

「ただの人?『何か欠けた』が足りなく無いか?」

私は、

私は、

「私は……」

「『清き心』の者よ。すまんな、意地悪をして」

私の全身がとけていく感じがする。ホントにここの住人は意地悪だ。

でも、本当の事を言わなければ……。

「私は片方のこころしかないのです、空の青さも半分だけ」

「なら、問う、何故?我のこころを引きつける?」

私を『清き心』と呼び、難しい問いかけ……。

「分からないです」

「なら、我と共にその答え探してみないか?」

これはきっと小さな奇跡―――私はこの奇跡を受け入れてみる。

「はい、御神木様、私と共に」

また、新たな出会い、私の世界が増える。

片方のこころは今日も音色を奏でていた。


学校の神社部

もみじさんは難しい本を読んでいた。

すると参拝客?が訪れる。

大人しめの女子生徒である。

この部室には鳥居の飾りがあるだけで

本当に同好会である。

「あぁの……」

女子生徒が困っていると

「大丈夫、私に願掛けして、私にかなえられる事なら……」

もみじさんがこの同好会のシステムを説明し始める。しかし、

そうゆう部なの?なにか始めて知ったが同好会なら仕方ないか。

「願い事を言えば良いのですね」

「はい」

「私の願いは料理が上手くなりたのです」

「うーん、とにかく作ってみましょう。では調理室に行きましょう」

そして、何故か肉じゃがを作る事に。

それから女子生徒が作ったのは溶岩の様な見た目だった。

味は美味しいけれど、この見た目はね……。

すると、もみじさんが。

「あ、美味しいから大丈夫、肉じゃが、でなくてジャガイモの溶岩煮で行きましょう」

この部活は本当に大丈夫なのだろうか?




今日は境内の落ち葉掃き。

でも、気のせいか上から降ってくるのは何でしょう。

うぅ、落ち葉が……絶え間なく降るよ……。

そうだ、私は絵馬を取り出して

『落ち葉が落ちません様に』

いや、書いたら不味いか。

さて、こちらもやらねば……。

何時なの間にかに瑠理さんが手伝ってくれいた。

私は片方のこころが弾んだ。

絵馬には願い事を書くのだが、

今はこの出会いに感謝を書こうと思う。

そう半分のこころは晴天を奏でた。

そして、神社から帰ろうとしていると。

「よう、一緒にそこまで、良いか?」

うん、瑠璃さんだ。

「石段を下りるまでですよ」

「つれないな、朝まで一緒に居たいのか?」

「何!言っている、ですか?」

そう、瑠璃さんは悪ふざけが好きだ。

「ふ~ん、気にするな」

「気にしません」

「つばささんが可愛いだけだよ」

「もう」

「なあ、この石段はつばささんには何色に見える?」

「小鳥のついばみの音色です」

「良い色だ、そうゆうところ、大好きっ子だよ」

「何ですか?大好きっ子って」

私の片方のこころは、こころは、こんなやりとりを拒んでいなかった。

そう、私達は笑い合っていた。

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