霜の月病める青年青女の現状肯定の唄

 マッチ売りの少女は家を燃やして紙巻煙草に火を点す


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 紫煙くゆらせてひとり闇夜のおばけ

 「人」はふたりから出来ているはず


 拾った煙草一本はおよそ二十二円の幸せですか?


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 シューティングスター星の七色

 赤は血の色

 橙はマッチの火

 黄は気違いのキ

 緑はカビの生えた服

 青は海か空

 藍は愛

 紫は死


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 マロージュナヤを食べたきやウラルの少女


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 じま。んの。むすこですむすめですふすす。

 太宰治と寺山修司と萩原朔太郎と海老フライをふほふくで食べるのが好きだそうです。


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 ♪なっちゃんはね、さちこっていうんだ、ホントはね

 だけどちっちゃいから自分のこと(死産した妹の那津子の怨念が自分の中に生きているものだと強く自覚しているために)なっちゃんて言うんだよ


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■友達の定義

 ・一過性の家族

 ・昔バンドを組んでいた交流の無い仲間

 ・狙撃されて死んだ仲の良かった兵卒

 ・地面に垂れた小指の赤い糸の先

 ・いずれは枯れる群生した花々

 ・発条の切れた壊れた玩具

 ・吸い切った煙草の残り香

 ・ハムになる運命の養豚場の豚

 ・書物の中の触れられない恋人


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■煙草の定義

 ・溜息の視覚化

 ・経口堕胎薬

 ・彼岸と此岸の境界を曖昧にする線香の微粒子

 ・死神(The death)

 ・仙人の喰らう霞

 ・前世からの腐れ縁

 ・未練がましく粘ついてくる別れた女  

 ・文脈を失くした芋虫の儀礼用祭具

 ・よく干して乾かした少女の小指を紙で巻いたもの

 ・護身用拳銃の小口径の弾丸20発

 ・丁寧に小分けされた用法・用量の無い自殺用内服薬一生分

 ・インスタント自傷(内部)

 ・ウィスキーやコーヒーの隣人

 ・限界を示す導火線の一種

 ・乾いた水

 ・芽が出ない植物の種

 ・火酒と共に四元素の「火」から出来ている


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■ムーヴメントの分類

 懐中時計:恋心を外套のポケットに鎖で繋いでいつでも身近に仕舞って置きたいロマンチストの心

 置時計:昔の恋人が映った古びた写真立て

 腕時計:悦楽主義、肉体のリビドー、脈動

 日時計:貴婦人の午後の昼下がり/淫猥な新月の晩の営み

 砂時計:くびれた母性の枯渇までの残り時間(今こそが出産のときだ!)


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螺子を一捻り回すと発条が発情して行きずりの女を片っぱしから犯していく機械人形


「翌朝変死体で発見されたそうです。さて次のニュースです」


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 仕合わせを嫉妬する思想犯罪の流刑地極東日本島

 通訳者など要りませぬ「かァごめかごめ籠の鳥、後ろの正面あたしです」一人と云ふ鳥、鏡地獄

 傷痍勲章ベトナムの袋に入って帰還する中身は空で左様なら年三万の自殺者が口を揃えた

 「死んでから棺を重くしないで下さい」


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辛いのは生きてるからで蝉時雨 誰からいっぽん線を引きます?


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■少女とレシピ

 砂糖とスパイスと、小指を琴のように糸で吊るしよく乾かしたもの或いはあなたの愛飲の煙草を二十本、白ウサギを六匹、そばかすのある少女の赤毛一房、猫の経血、百合の花と彼岸花を二輪ずつ、詩集を四冊、初めて買った紅すぎる口紅、三枚の写真、割れた鏡、それと溜息を一吹き。


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 メンヘルメルヒェン始まるよ

  アリスは妄想の中の手淫常習魔

   赤毛のアンは妄想の中の手淫常習魔

    赤ずきんは狼憑きのお婆さんに喰い殺される

     シュレーディンガーのチェシャ猫を追いかけてアリスは量子力学の世界へ

      赤毛のアンは緑色の人参を求めて見世物小屋に売り飛ばされる

 パンと葡萄酒は如何?


   メンヘルメルヒェン続けるよ

  花売りの少女はおじさんに花を売って一財産築いて

 マッチ売りの少女は憎いあの子の家に火を放つ

 「暖かい家庭がもっとあったかくなったかしら?」

  ガラスの靴を片っぽ失くした灰被り娘はハイヒールに躓いて転落死

   「魔法使いのお婆さん、王子様よりそのピストルを下さいな」


 メンヘルメルヒェンそろそろ終わるよ

     人魚姫は気付かれない片想いに男を巻き込んで心中

    白雪姫は毒りんごを齧ってそのまま火葬場で灰になる

   (成程なぁ、灰被り娘とは、この事か!)

   かぐや姫は大気圏突破の摩擦熱で流れ星になる

  寂れた売春宿では古今東西の御姫様が、

 煙草吹かしながら貴方の帰りを待っている


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■アリス東西南北トウヘンボク


 東の国のアリスちゃん

  血染め振り袖 剃刀一つ

 西の国のアリスちゃん

  暖炉のそばで鏡に埋まる

 南の国のアリスちゃん

  パイナップル投げて大使館爆破

 北の国のアリスちゃん

  雪寄せ疲れでぐうぐう眠る


 4人そろった4人のアリス

 さて始めましょと終わらないお茶会を始めて


 誰も喋らない

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